インフォーマル学習
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インフォーマル学習（インフォーマルがくしゅう、英：informal learning）は、「学習の文脈、学習支援、学習時間、学習目標の点で、計画と組織化の程度が低い」ことによって特徴づけられる学習。[1]これは、学習成果の観点であらかじめ定められた目標を持たず、むしろ学習者の立場からの行為意図（問題を解決するなど）をもつという点で、フォーマル学習（学校教育）、ノンフォーマル学習、自己調整学習と異なる。
概要
インフォーマル学習の典型的なメカニズムには、試行錯誤や実践学習（英語版）、モデリング、フィードバック、反省的実践（英語版）が含まれる。[2]学習者にとっては、発見的な言語能力構築、社会化、文化習得、遊びなどがこれに含まれる。インフォーマル学習は、知識獲得を中心に据える伝統的な教師中心の見方とは対照的に、参加を通じた学習や知識創造を通じた学習として、広範に継続的に生起する現象である。推計では、成人の学習の約70～90％が、教育機関の外部でインフォーマルに行われているとされる。[3]
この用語はしばしばノンフォーマル学習や自己主導型学習と混同される。しかし企業の訓練や教育の文脈では、投資利益率や学習の費用対効果に関連して広く用いられている。また科学教育においても、市民科学やインフォーマル科学教育との関係で広く用いられる。インフォーマル学習とノンフォーマル学習の混合は、伝統的な講師主導のカリキュラムの外で生じる学習のメカニズムを説明する。例えば、自ら選んだ書籍の読書、自己学習プログラムへの参加、労働支援資料やシステムの活用、偶発的なスキル練習、コーチングやカウンセリングの受容、同僚への助言の求め、実践共同体への参加などである。
インフォーマル学習は、参加者が社会的活動を観察したり参加したりできるコミュニティでは一般的に見られる。[4]インフォーマル学習の利点としては、学習ニーズへの柔軟性と適応性、学んだことの実践への直接的移転、（仕事関連の）問題の迅速な解決などが挙げられる。[5]従業員のパフォーマンス向上においては、タスクの遂行が最も重要な学習源とされる。[6]
特徴
インフォーマル学習は次のように特徴づけられる。
- 通常、教育機関の外で行われる。
- 定められたカリキュラムに従わず、専門的に組織化されることもあまりなく、むしろ偶発的・散発的に、また変化する現実の要請から生じる。
- 固定された教科や試験・資格に沿って教育学的に体系的に計画されるとは限らず、むしろ無自覚で偶発的であったり、意識的な直観に基づくものであり、全体的に問題志向で、実際の状況や生きるための適合性に結びついている。
- 日常生活における自然な機能として直接に経験される。
- しばしば自発的で創造的である。
- 多くのアメリカ先住民コミュニティで観察される学習方法に基づく代替的学習システム「観察して加勢する学習」の重要な構成要素である。[7]
歴史
インフォーマル学習の起源は、経験からの学習に関するジョン・デューイの理論に遡ることができる。[8]アメリカの哲学者メアリー・パーカー・フォレット（英語版）は、インフォーマル教育の文脈を学校から日常生活のあらゆる領域へと拡張し、教育を継続的な生涯の課題として描いた。デューイとフォレットの仕事に基づき、アメリカの教育学者エデュアード・C・リンデマン（英語版）が初めて「インフォーマル学習」という語を用いた。[9]その後、マルコム・ノウルズ（英語版）が1950年に著作『インフォーマル成人教育』でこの語を紹介した。[8]
当初、インフォーマル学習は、学校におけるフォーマルな学習および講座でのノンフォーマル学習からのみ区別されていた。[10]マーシックとワトキンスはこのアプローチを引き継ぎ、定義を一歩進めた。彼らもまた学習の組織形態から出発し、ノンフォーマルである、あるいは形式的に組織化されておらず、かつ機関によって資金提供されない学習過程をインフォーマルと呼んだ。[11]
より広いアプローチの例としては、リビングストンの定義があり、これは独学や自己主導型学習を志向し、学習者自身による学習過程の自己定義を特に重視する。[12]リビングストンは、明示的インフォーマル学習が、暗黙的インフォーマル学習や社会化と区別されるのは、個人が学習を求め、特定の状況に飛び込んだり他者とかかわったりして学習が可能となる条件を作り出す点にあると説明した。[13]
インフォーマル学習とノンフォーマル学習の違い
上述のとおり、インフォーマル学習はノンフォーマル学習としばしば混同される。ノンフォーマル学習は、フォーマルな教育制度の外で行われる、機関によって組織化された学習を指す用法が多く、短期であったり、任意参加であったり、事前要件がほとんど（あるいは全く）ないことが多い。[14]しかし通常はカリキュラムがあり、しばしばファシリテーターもいる。[14]ノンフォーマル学習は、水泳教室、地域のスポーツ・プログラム、会議型のセミナーなど、さまざまな構造化された学習状況に見られる。
その他
メリアムらは次のように述べている。[15]
シュグレンスキーは、インフォーマル学習には現象の研究において区別することが重要な固有の内部形態があると示唆している。彼は三つの形態を提案する。すなわち、自己主導型学習、偶発的学習、そして社会化または暗黙的学習である。これらは、学習経験時の意図性と気づきの点で互いに異なる。例えば、自己主導型学習は意図的かつ自覚的である。マーシックとワトキンス（1990）によって、ほかの何かをしている副産物として偶然に生じると記述される偶発的学習は、当初は意図的ではないが、経験ののちに何らかの学びが起こったことに気づく。そして最後に、社会化または暗黙的学習は、意図的でも自覚的でもない（ただし、後に「回顧的認識」を通じてこの学習に気づくことはできる）。（マーシック＆ワトキンス, 1990, p. 6）—p.36
2012年、ベネットは、2000年のシュグレンスキーの概念化を拡張し、インフォーマル学習の四つのモードを提案した。[16]
- 自己主導型：自覚的かつ意図的
- 偶発型：自覚的だが非意図的
- 暗黙型：社会化に代わるもので、無自覚かつ非意図的
- 統合型：無自覚だが意図的
暗黙的処理に関する文献に依拠して、彼女は統合的学習を「暗黙知の意図的な無自覚処理と、学習産物や心的イメージへの自覚的アクセスを結び合わせる学習過程」[16]とさらに定義し、知識シフティングと知識昇華という二つの可能なサブプロセスを理論化した。これらは、学習者が暗黙知に対してもつ限定的アクセスを説明する概念である。
フォーマル教育とインフォーマル教育
インフォーマル学習を十分に理解するには、「フォーマル」と「インフォーマル」教育という用語を定義することが有益である。フォーマル教育は、高度に制度化され、ときに官僚的で、カリキュラム主導であり、成績・学位・各種資格によって公式に認められる教育と定義できる。[14]インフォーマル教育は、家庭、職場、社会の成員間の日常的な相互作用や関係など、さまざまな場所で起こるインフォーマル学習と密接に結びついている。インフォーマル学習はしばしば教育機関の外で生じ、特定のカリキュラムに従わず、偶発的・散発的に起こりうるが（常にそうとは限らない）、フォーマル教育の内部でもインフォーマル教育が生じうる。
研究とデータ
メリアムらは次のように述べる。「インフォーマル学習、特に成人の自己主導型学習プロジェクトを尋ねる研究は、成人の90％超が何百時間ものインフォーマル学習に従事していることを示している。職場における学習の大多数（70％超）がインフォーマルであるとも推定されている（中略）にもかかわらず、企業は毎年何十億ドルもをフォーマルな研修プログラムに費やしている」。[15]フォーマル学習とインフォーマル学習はどちらも人的資源開発にとって不可欠と見なされ、インフォーマル学習のほうがより強力とされる。[17]
コフィールド[18]は氷山（iceberg）の比喩を用いて、インフォーマル学習が支配的地位を持つ一方で、教育セクターではフォーマル学習に比べ可視性が著しく低いことを示す。水面上に見えている三分の一がフォーマル学習、水面下の見えない三分の二がインフォーマル学習である。フォーマル学習が経路があらかじめ定められ、乗客全員に同一であるバスに例えられるとすれば、インフォーマル学習はむしろ自転車に似ており、走者が経路と速度を個別に決められる。[19]
経験と事例
インフォーマルな知識とは、外化・記録されておらず、誰かの頭の中にある知識である。[20]例えば言語習得の過程では、子どもがフォーマルな教育制度に入る前に、親が家庭で文法や言語の基本概念を教えることがある。[21]この場合、親は言語構造・統語論・形態論について暗黙の理解をもつが、それが何であるかを明示的に自覚しているとは限らない。親は言語を暗黙に理解しており、その知識を子に伝えるのである。
インフォーマルな知識移転の他の例としては、DMでのやりとり、インターネット上で見た知識、必要な情報を持つ相手への電話、新製品を紹介する一度限りの対面セールスミーティング、リアルタイムのチャットルーム、仕事場での偶然の会話、臨機応変な議題で行われるウェブ会議、技術者による修理案内、あるいは割り当てられたメンターやマネジャーとの面談などがある。
経験的には、仕事上の業績向上のための学習の多くがインフォーマルであることが示されている。[22]学習者に知識を移転する人は、通常リアルタイムにその場にいる。こうした学習は電話やインターネット上でも、対面でも起こりうる。
英国では、政府が2009年3月23日発行の白書「学習革命」において、インフォーマル学習の利点を公式に認めた。[23]同年10月には学習革命フェスティバルが開催され、読書会、著者イベント、家族史セッションなど、多くのインフォーマル学習の機会を提供する図書館が助成金を用いて、ノースイースト学習フェスティバルのような活動を実施した。[24]
フォーマル学習とインフォーマル学習の動向
調査において成人の40％はある時点で自分自身で独学した経験があり、従来型の学習よりも独立学習に参加する可能性が2倍高いと答えた。[25]平均的な成人は、インフォーマル学習の実践に週10時間（年間500時間）を費やしている。[25]全体として、この種の知識はより学習者中心で状況依存的であり、特定の労働力に必要な技能の関心や適用ニーズに応じている。フォーマルな研修プログラムは、25歳を超える個人の基礎技能の向上には限定的な成功しか収めておらず、個人は主としてオン・ザ・ジョブ・トレーニングに依存する。
フォーマル教育の就学率が上昇しているにもかかわらず、労働市場に参入する多くの成人は、非熟練労働力に求められる基礎的な数学・読解・対人スキルを欠いている。[26]大学進学率の上昇により、フォーマル学習とインフォーマル学習の境界は曖昧になっている。（米国の調査では）肉体労働または低技能労働の人口で最大の増加を示しているのは、大学に在籍したが学位を取得しなかった個人である。近年、全米の雇用主を対象に横断的調査が行われ、大学学位を要しない職務に必要な技能が測定された。調査は、70％が何らかのカスタマーサービス要素を、61％が段落の読解・文章作成、65％が数学、51％がコンピュータの使用を要すると結論づけた。研修や学歴に関しては、71％が高等学校卒業資格を、61％が特定の職業経験を要件としていた。[26]過去50年間に低技能労働力に参入する男性の比率はほぼ横ばいで（変化は1％未満）、一方で女性の参入は着実に増加しており、この傾向は今後も続くと見込まれる。
職場での学習
研修を提供する企業の大多数は、現在、学習連続体（フォーマル～ノンフォーマル）のフォーマル側にのみ関与している。今日の投資の大半もフォーマル側に向けられている。その結果、企業は学習全体のうち25％のフォーマル学習に最も多くの資金を投じている。残りの75％の学習は、学習者が絶えず変化する状況に創造的に適応することで起こるインフォーマル学習に依拠している。インフォーマル学習は単に割合が大きいだけでなく不可欠である。
管理者はしばしば、従業員のインフォーマル学習をどのように促進できるか考える。しかし、インフォーマル学習への直接的支援は難しいと考えられている。というのも、学習は仕事のプロセスの内部で生じ、企業が計画することができないからである。[27]ただし、ポジティブな学習環境を提供することによる間接的支援は可能である。特に、同僚や管理職による社会的支援が重要である。経験豊かな同僚は学習のエキスパートやメンターとして機能しうる。[28]管理職は自身の業務パフォーマンスに関するフィードバックの取得・提供においてロールモデルとなりうる。自らの失敗を認め、建設的に扱うことも、従業員が職場での学習機会を活用することを促す。[29]
関連項目
脚注
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