アスペクトによる分裂
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/02/27 10:03 UTC 版)
アスペクトまたは時制によって能格構文と対格構文が分かれることは多くの言語で見られる。この場合、一般に過去または完了で能格構文が、非過去または非完了で対格構文が出現する。 アスペクトによる分裂はインド・イラン語派のいくつかの言語に出現する。たとえばヒンディー語は基本的に対格言語だが、過去および完了では行為者に能格の後置詞(ne)が加えられ、動詞の人称は行為対象に一致する。 anitā abhī soniyā ko dekh rahī hai. アニターは今ソーニヤーを見ている。 anitā ne soniyā ko skūl mẽ dekhā thā. アニターはソーニヤーを学校で見た。 最初の文は非完了なのでアニターには後置詞がついていない。2番目の文は完了で、能格後置詞が加えられている。 グルジア語では、現在時称で対格構文、過去では能格構文を取る。 Švil-i ga-i-zard-a 息子は育った(自動詞) Deda švil-s zrdi-s 母親が息子を育てる(現在。švil「息子」に与格標示(グルジア語には対格標示がないため与格を使用する)) Deda-m švil-i ga-zard-a 母親が息子を育てた(過去。deda「母親」に能格標示) 古代マヤ語は能格言語だったが、古典期後期になると分裂能格の現象が現れ、非完了では能格の代名詞接頭辞(u-)が自動詞の主語に使われる。これは現代のチョル語やユカテコ語でも同様である。 ts'ib-n-ah-∅ それは書かれた(完了)。 u-ts'ib-n-ah-al それは書かれている(非完了)。 また、叙法によっても分裂が条件づけられる。ネワール語では、命令法では対格的、それ以外では能格的である。シュメール語は能格言語だが、人称代名詞の独立形、命令法や願望法、およびいくつかの分詞構文において対格性が現れる。
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