わがシッドの歌とは? わかりやすく解説

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わがシッドの歌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 13:55 UTC 版)

わがシッドの歌』(わがシッドのうた、Cantar de mio Cid)は、12世紀後半から1207年の間に成立したとされる中世スペイン叙事詩である。『エル・シッドの歌』(El Poema del Cid)ともいう。実在した中世スペインの騎士であるエル・シッド(ロドリーゴ・ディアス・デ・ビバール)の活躍をテーマとしている。


補注

  1. ^ 史実ではブルゴス県のパンコルボ英語版伯、またラ・リオハ州ナヘラの総督か伯爵とされる。(イアン・マイケル編訳本、1345行注)アルフォンソ王の軍旗棒持者(アルフェーレススペイン語版)でもあった。
  2. ^ 史実上は、順序をあべこべにしただけで同じような名前の双子の兄弟がいて、詩では名前が混同されている。写本では「ラモン・バランゲー」とあるが、該当する人物はラモン・バランゲー2世「兄殺しの」異名を取るバランゲー・ラモン2世の方である(長南 1998, 958行注)
  3. ^ 史実上では1090年、テーバルの松林で起こったテーバルの戦いスペイン語版で、バランゲー・ラモン2世伯爵とその保護国であるレリダ王国スペイン語版軍がエル・シッドと対峙した。バランゲー・ラモン2世がエル・シッドの捕虜になったのはこのときで2回目である。作品はは第二次の追放時代を舞台とするので沈黙されるが、史実上のエル・シッドは、第一次の追放時代の1081-1087年にサラゴーサ王国アル=ムタマーンスペイン語版に仕えており、そのおりサラゴーサ国王とレリダ国王が兄弟同士で戦争、バランゲー・ラモン2世はこのときも後者を支援して戦い、エル・シッドに敗北を喫した。
  4. ^ 写本ではセビーリャの王 (rey)とあるが、長南の邦訳では史実に照らして「総督」に訂正される。復元された「序章」にもある通り、エル・シッドはかつてセビーリャ王国の国王「アルミタミース」すなわちアル=ムータミド・イブン・アッバード英語版に恩を売っている、すなわち1079-1080年に、セビーリャに攻め入るグラナダ国軍やガルシーア・オルドーニェス伯らと一戦交えたことである。だが、1091年には「アルミタミース」の王国は、自ら呼び寄せたモロッコのユスフ王によって併呑されてしまった。よってエル・シッドがバレンシアを獲得した1094年の時点では、セビーリャには国王にとってかわり、ユスフが任命した総督が置かれていた。
  5. ^ 史実ではユスフは自らヴァレンシア親征はしていないが、作中ではエル・シッドに撃退される。
  6. ^ そもそも『二十王年代記』にある、エル・シッドの記述は、『エル・シッドの歌』をラテン語に散文訳したものであり、そのことを踏まえてピダル編本では冒頭を復元しており、ピダルに拠るマーウィン英訳本も冒頭のテキスト・英訳を掲載する(Merwin 1959, p. 33)
  7. ^ 長南による邦訳では、ピダルとは趣を異にして『第一総合年代記』を元に復元された「序章」を付録している。ただし、エル・シードに関する部分においては、いずれの史料に拠っても大差はないとする。
  8. ^ 解説によれば、1080年にガルシーア・オルドーニェス伯(ら)は、エル・シッドがセビーリャ王国からの貢物の一部(大半)を着服したと、王にも公にも流言した(長南 1998, 91行注、95行注、441頁、Merwin 1959, p. xiv)。ただしその讒言のことは『二十王年代記』を元にしたピダル版の冒頭にも、『第一総合年代記』による長南の「序章」にも明言されていない。長南の「序章」(『第一総合年代記』第850章の引用)によれば、王の変心が起きたのは翌1081年の事件に関する讒言によるものであった:アルフォンソ王が遠征中、病気と称して留守を預かったエル・シッドが防衛戦で奮闘し、さらにトレードまで進撃したので、アルフォンソを亡き者にする策略だと大貴族たちが讒言したことである。

出典

  1. ^ 長南 1998, 313頁、「序章」注(4)。
  2. ^ 長南 1998, 2075行注。
  3. ^ 長南 1998, 1464行注。長南訳ではモリーナと表記
  4. ^ 長南 1998, 443行注。
  5. ^ 長南 1998, 443b行注。
  6. ^ 長南 1998, 237行注。
  7. ^ 長南 1998, 2814行注。
  8. ^ 長南 1998, 741/2618行注。
  9. ^ 長南 1998, 2169行注・3308行注。
  10. ^ 長南 1998, 1289行注。
  11. ^ 長南 1998, 3070行注。
  12. ^ 長南 1998, 65行注。
  13. ^ 長南 1998, 738行注・3068行注。
  14. ^ 長南 1998, 3063行
  15. ^ 長南 1998, 14行注・735行注。
  16. ^ 長南 1998, 737行注。
  17. ^ 長南 1998, 3443行注。
  18. ^ 長南 1998, 1372行注。
  19. ^ 長南 1998, 2172行注
  20. ^ 長南 1998, 3674-5行
  21. ^ 長南 1998, 2267行注, 3009行注
  22. ^ 長南 1998, 1345行注。315–6頁、「序章」注(5)
  23. ^ 長南 1998, 3288行注・317頁、「序章」注(8)
  24. ^ 長南 1998, 3112行注
  25. ^ 長南 1998, 3457行注
  26. ^ 長南 1998, 958行注
  27. ^ 長南 1998, 636行注。
  28. ^ 長南 1998, 654行注。
  29. ^ 長南 1998, 1223行注。
  30. ^ 長南 1998, 1621行注、解説439頁。
  31. ^ 長南 1998, 2314行注。ただし、史実のシル・ベン・アブ=ベケル(Sir ben Abu-Beker)は、エル・シッドの死後も生存。
  32. ^ 長南 1998, 注釈(序章), pp.305–319
  33. ^ 長南 1998, p. 308; Merwin 1959, pp. 34/35
  34. ^ 長南 1998, 310, 318–319 (注16)、解説440頁


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わがシッドの歌

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エル・シッド」の記事における「わがシッドの歌」の解説

12世紀後半 - 1207年成立したとされる英雄叙事詩最古スペイン文学マドリード国立図書館古スペイン語書かれ物語写本不完全ながら所蔵されている。物語実話元にレコンキスタにおけるエル・シッド活躍描いている。 3,700越える詩からなるこの物語大きく三部分けられる。 Cantar del Destierro Cantar de las Bodas Cantar de la Afrenta de Corpes このうち第3部については、歴史的には全く虚構産物と言われている。 作者不詳。ただしサン・エステバン、メディナセリ二名構成関与したと言われている。 この叙事詩以外にも、さまざまな叙事詩作られイスラム勢力側の当時様々な文献にも、憎き仇敵としてシッド登場している。

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