かかし、屋敷神、祖霊神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 01:27 UTC 版)
大国主の国づくりの説話に登場する「久延毘古」(クエビコ)は、かかしが神格化されたものであるが、これもまた田の神(農耕神)であり、地神である。かかしはその形状から神の依代とされ、地方によっては山の神信仰と結びつき、収獲祭や小正月行事のおりに「かかしあげ」の祭礼をともなうことがある。また、かかしそのものを「田の神」と呼称する地域もある。なお、かかしは「かがし」を原義とする言葉と考えられ、これは稲作に害をおよぼす鳥獣が嫌悪する臭いをかがせ、それによって鳥獣を追い払う目的でつくられたという。 さらに、春秋去来の伝承は屋敷神の成立に深いかかわりをもっているとみられる。屋敷神の成立自体は比較的新しいが、神格としては農耕神・祖霊神との関係が強いとされ、特に祖霊信仰との深い関連が指摘される。日本では、古来、死んだ祖先の魂は山に住むと考えられてきたため、その信仰を基底として、屋敷近くの山林に祖先をまつる祭場を設けたのが屋敷神の端緒ではないかと説明されることが多い。古代にあっては一般に、神霊は一箇所に留まらず、特定の時期に特定の場所に来臨し、祭りを受けたのちは再び還るものと信じられていた。また、現在ならば「姓」と称されるものも、かつては「同苗(どうみょう)」や「苗字(みょうじ)という用法があったように、東北地方の民俗例でみられる播種の際の戸別の「苗印(なえじるし)」は、田の神の依り代であると同時に家ごとに異なり、その点ではまさしく祖霊の神、家々の神であった。屋敷神の祭祀の時期も、一般に春と秋に集中し、後述するように農耕神(田の神)のそれと重なっている。その一方で農耕神もまた祖霊信仰のなかで重要な位置を占めるようになった。こうして屋敷神・農耕神・祖霊神の三神は、穀霊神(年神)を中心に、互いに密接なかかわりをもつこととなったのである。
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