いっぴきの金魚と暮らす銀座に雨
作 者 |
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季 語 |
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季 節 |
夏 |
出 典 |
風の斑 |
前 書 |
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評 言 |
いっぴきの金魚は、何処から来たのだろう。 いつから暮らしはじめたのだろうか。鑑賞魚として夏がいちばん綺麗だが暮らす事になれば、年がら年中いっしょ。その場から逃げない限り金魚に見られている。金魚の気持ちになれば、隠れ家のような場所がほしい。藻に身を寄せても水槽の硝子は透明。数匹のなかのいっぴきは喧嘩もできぬ。そんなあれこれを踏まえて、愛しいではないか。 〈いっぴきの金魚〉との視線の交錯を〈暮らす〉に面白く嵌めている。仮に未知の世界への不安感があっても、暮らす楽しみがある筈だ。 所で、小宅氏は、句集「風の斑」の帯に、『持味は、突出した感性で物を貪ろうとする好奇心の鋭さだ。加うるに、それを支配する天賦のバランス感覚』と書いている。 そうか、いっぴきの金魚は、作者の心からやってきたのだ。ひとつの不思議なめぐりあわせが絶妙である。下五〈銀座に雨〉は、さりげなく心を気遣うゆとりがみえる。 好井氏は、栃木県生まれ。平成5年、「玄火」入会。10年、同人誌「雷魚」入会。14年「玄火」退会。19年、現代俳句協会第8回年度作品賞受賞。25年「雷魚」退会。句集に『両手』(1998年 朝日新聞社)、『青丹』(2005年 ウエップ)、『風の斑』(2013年 ウエップ)。ほか、好井由江100句「象の皺」WEP俳句通信72号。 連翹にれんぎょう色の水たまり 空に青足したき日なり豆の花 手の中のでで虫泣かせたくなりぬ 傘を巻きながら大白鳥に寄る いなびかり人形はみな立っている さかさまに出たるバケツの氷かな 象の皺ほんに皺くちゃ春隣 写 真: 遊 |
評 者 |
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備 考 |
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