『ズッコケ三人組』の誕生
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「那須正幹」の記事における「『ズッコケ三人組』の誕生」の解説
那須はそれまでの人生経験から強力な反戦意識を持ち、陽の当たらない人々にも共感し、児童文学作家としての創作活動では常に前向きで、ほかとは違う新しい作品を生み出す姿勢を持つことになったが、こうしたスタンスは那須の代表作「ズッコケ三人組」シリーズとして開花する。 第一作は1978年2月に発表した『それいけズッコケ三人組』。この作品は那須が作家デビューするきっかけとなった学習研究社、その学習雑誌『6年の学習』に1976年4月から1年間連載された『ずっこけ三銃士』がもとになっており、読者たちからはすこぶる好評だった。しかし当時の児童文学としてはあまりに型破りなその内容に、那須自身も単行本にできるかどうか不安だったという。 そんな時、たまたま那須の前に現れたのが、東京にある児童図書出版ポプラ社に入社して間もない編集者坂井宏先で、業界にもあまり慣れていない坂井を見て那須は「案外、こういう編集者なら、ひょっとしたら単行本にするかも知れない」と直感。『ずっこけ三銃士』を見せたところ、坂井は「すぐに本にしましょう」と簡単に約束して帰京した。しかし待てど暮らせど本は発行されず、そのうち坂井が「別の作品を書かないか」と那須に提案してくることもあり、那須自身も「それよりあの件は?」と催促するなどして、ようやく発行にこぎつけたのが、原稿を渡してから1年余りが過ぎた1978年2月のことであった。 ようやく送られてきたその本のタイトルを見て那須は驚いた。『ずっこけ三銃士』が『それいけズッコケ三人組』に変わっている。那須が坂井にその理由を問いただすと、坂井いわく「三銃士は古臭い。それに『それいけ』という掛け声をつけたから、絶対に売れます!」と言い切ったという。 「原作者に無断でタイトルを変える編集者は後にも先にも、あの人しかいなかった」と後年、那須は述懐しているが、その坂井との縁がもとで『ズッコケ三人組シリーズ』はその後、戦後の日本児童文学最大のベストセラーになっていく。
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