Q級駆逐艦 Q級駆逐艦の概要

Q級駆逐艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/09 14:28 UTC 版)

Q級駆逐艦
基本情報
種別 駆逐艦
命名基準 "Q"で始まる英単語
運用者  イギリス海軍
 オーストラリア海軍
 オランダ海軍
就役期間 1942年 - 1972年
建造数 8隻
前級 P級
次級 R級
要目
基準排水量 1,650 トン
全長 109.12 m
全幅 10.97 m
吃水 2.9 m
ボイラー 水管ボイラー×2缶
主機関 蒸気タービン
推進器 スクリュープロペラ×2軸
出力 40,000馬力
電源 タービン主発電機 (155 kW)×2基
停泊発電機 (50 kW)×2基
待機発電機 (10 kW)×1基
速力 36.75ノット
燃料 重油615トン
航続距離 4,070海里 (20kt巡航時)
乗員 175~225名
兵装 45口径12cm単装砲×4基
39口径40mm4連装機銃×1基
70口径20mm機銃×6門
・53.3cm4連装魚雷発射管×2基
爆雷投射機×4基
爆雷×70発→130発
FCS ・Mk.II(W)方位盤 (対空用)
・DCT方位盤 (対水上用)
FKC射撃盤 (対空用)
AFCC射撃盤 (対水上用)
レーダー ・290型 早期警戒用
293型 目標捕捉用 (後日装備)
・285型 射撃指揮用
ソナー ・128型→144型 捜索用
・147型 攻撃用 (後日装備)
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来歴

第二次世界大戦の勃発を受けてイギリス海軍戦時緊急計画を発動し、駆逐艦の急造に着手した。まず1939年9月3日に第1陣としてO級が、10月2日には第2陣としてP級が発注された。しかしこれらは、戦時緊急計画に基づいてはいるものの、基本的には1940-1年度計画で建造予定だった、J級を元にした中間的駆逐艦の建造を前倒ししたものであり、新しい戦時要求の反映や急造に適した設計への変更はなされていなかった[3]

これらを盛り込んだ新しい設計案は1939年末に作成された。この設計を採用した最初の艦級として1940年1月3日に発注されたのが本級であり、当初はカブス(Cubs)のコードネームが付されていた。カブス計画艦は急速建造が求められたことから、設計面では中間的駆逐艦とK級の中間的なものとなり、また装備面でも新機軸の導入は避けて、極力既存のものを用いることとされた。なお本級を含む戦時緊急計画型駆逐艦の建造のために、ライオン級戦艦の建造が棚上げされる事態となった[3]

設計

上記の経緯から、基本設計はK級のものがおおむね踏襲されており、単煙突・船首楼型という船型も同様である。ただし全長にして2メートル程度延長したほか、巡航性能向上のため、ハント級に範を取ったトランサム・スターンが採用されている。また艦内の居住区画の配置も変更された。これらの改正の結果、燃料搭載量の増加にもかかわらず、本級では横メタセンタ高さ(GM値)は3.25フィート (0.99 m)となり、J級の2.48フィート (0.76 m)よりも大きく、復原性に優れることとなった[3]

機関もK級とおおむね同様で、アドミラルティ式3胴型水管ボイラーパーソンズ式オール・ギヤード・タービンによる2軸推進、出力40,000馬力である。ただし本級では、蒸気圧力は従来と同様に300 psi (21 kgf/cm²)だが、温度を華氏にして10度高めた332.2℃として、出力マージンを確保した[4]。また本級では、2番弾薬庫を燃料庫に転用するなどして燃料搭載量の増加を図り、航続距離を延伸した[2]

電源は中間的駆逐艦(O級・P級)よりはK級に近く、主発電機としてタービン発電機(出力155 kW)2基、停泊発電機としてディーゼル発電機(出力50 kW)2基を搭載した。また本級より、減速機室に、待機運転用のディーゼル発電機(10 kW)1基が追加された[3]

装備

装備面では中間的駆逐艦(O級・P級)の構成が踏襲された。艦砲としては、O級の原型艦と同様、45口径12cm砲(QF 4.7インチ砲Mk.IX)を4基搭載した。ただし射撃指揮装置についてはトライバル級に準じた構成となり、対空用のMk.II(W)方位盤(285型レーダー装備)に加えて、対水上用として、基線長3.66メートルの測距儀を備えたDCT方位盤も搭載された。なお射撃盤としては、トライバル級では対水上用にはAFCC、対空用にはFKCが用いられていた[3]

当初計画では、O級と同様に45口径10.2cm単装高角砲(QF 4インチ砲Mk.V)の追加搭載も予定されていたが、急降下爆撃機への有効性が疑問視されるようになったことから装備されず、対空兵器として39口径40mm4連装機銃(QF 2ポンド・ポンポン砲)と70口径20mm機銃6門(連装・単装各2基)、対艦兵器として21インチ4連装魚雷発射管2基を搭載して竣工した[3]。また後にポンポン砲や後部魚雷発射管を撤去して、56口径40mm単装機銃(4基程度)や70口径20mm機銃の増備が行われた[1]




  1. ^ a b c d 高速対潜フリゲートに改修後の新ペナント・ナンバー
  2. ^ 練習艦に分類変更後のペナント・ナンバー
  1. ^ a b Roger Chesneau, Robert Gardiner (1980). Conway's All the World's Fighting Ships 1922-1946. Naval Institute Press. p. 42. ISBN 978-0870219139. 
  2. ^ a b 中川務「イギリス駆逐艦史」、『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、 97頁、 ISBN 978-4905551478
  3. ^ a b c d e f g Norman Friedman (2012). “The War Emergency Destroyers”. British Destroyers & Frigates: The Second World War & After. Naval Institute Press. ISBN 978-1473812796. 
  4. ^ 阿部安雄「機関 (技術面から見たイギリス駆逐艦の発達)」、『世界の艦船』第477号、海人社、1994年2月、 164-171頁、 ISBN 978-4905551478
  5. ^ Royal Australian Navy - HMAS Queenborough
  6. ^ Royal Australian Navy - HMAS Quadrant
  7. ^ Royal Australian Navy - HMAS Quality
  8. ^ Royal Australian Navy - HMAS Quiberon
  9. ^ Royal Australian Navy - HMAS Quickmatch


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