酸素カプセル 概要

酸素カプセル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 07:50 UTC 版)

概要

カナダ病院で使用されている高圧酸素カプセル

人間1人分のスペースのカプセルの内部に入り密閉を行い、加圧装置によって内部の気圧標準気圧以上の、1.1-1.5気圧程度に加圧される仕組みの健康機器。

機種によっては酸素濃縮機を備え、地球の大気に含まれる酸素の割合よりも酸素の比率の多い気体(空気)を内部に充填するタイプの機器もある。加圧された内部環境で横になって休息することで、上昇した酸素分圧を背景に肺胞から酸素を取り入れる効率を向上させるといわれ、疲労回復や血行促進に効果があるとされる[2]。通常より血液中に酸素が溶けやすくなる現象を溶解型酸素の増加と表現する媒体もある。

酸素摂取は肺からしかできないが、酸素の溶解度は非常に低いので、溶解型酸素による組織への運搬量は血液で運ばれてる全酸素量の3 %にすぎず、溶解型酸素だけでは体が必要とする酸素量を供給することは不可能なので、97 %が赤血球中のヘモグロビンへの酸素の吸着によって運搬されるように肺呼吸生物は進化してきた[3]

肺胞を通過した直後のヘモグロビンの酸素飽和度は100 %なので、酸素分圧を1.5倍に増加させても、これ以上、酸素飽和度を増やすことはできない。安静時には、そのヘモグロビンに結合した酸素の約30%が、末梢の臓器で消費され、その結果、酸素飽和度約70%の青い静脈血となり、肺へ再び酸素を受け取りにいき、酸素飽和度が100%弱の赤い動脈血となる。一方、溶解型酸素の貢献度は3 %なので、1.5気圧程度に加圧された場合、溶解型酸素は1.5%増加する。従って赤血球中のヘモグロビンへの酸素の吸着によって運搬される97 %の酸素に比べると溶解型酸素の影響は極めて小さい[3]

現在日本国内で販売される健康機器としての酸素カプセルにおいては、安全上、実際に内部に充満する空気の酸素含有量が30%を超える機種は無い。カプセルの素材や剛性によって、「ハード型酸素カプセル」(金属製または樹脂製)と「ソフト型酸素カプセル」(特殊布製)に分類される。ソフト型は折りたたんで持ち運べることから、アスリートが大会などに持参するケースがある。これに対し、ハード型は主に業務用に使用されるために剛性が要求されるうえ、耳抜き支援システムやエアコンテレビ音響機器といった付加機能を追加することで快適性を高め、一般に価格はソフト型の約2倍ほどである[2]

当初は大きなスポーツイベントの都度、活躍した選手の「秘密兵器」としてマスコミに取り上げられたり、水泳サッカー選手[4]陸上競技選手に愛好家が多いことから一般に認知されるようになった。こうしたためか、2012年度には岩盤浴、フットケア、ゲルマニウム温浴など19項目のメニューについて、20代から30代の女性に対する聞き取り調査では体験してみたいメニュー第1位に選ばれた。ただし、酸素カプセルは体感度は弱く短時間カプセルに入っただけでは、具体的な変化は分かりにくいという[2]

生活習慣病の改善

京都大学人間・環境学研究科神経科学研究室の石原昭彦教授により、酸素の濃度も上げるタイプの酸素カプセルでは、神経遺伝アレルギーに関係する疾患には効果が認められないものの、糖尿病など生活習慣病では、筋肉などの代謝が低下しているため、酸素を身体に取り込むことで代謝がよくなり、改善効果が確認されている。動物実験で糖尿病を抑制・改善できたほか、疲労血行障害肩こり、手足のしびれに効果が確認された。また、スポーツ選手や慢性的に酸素不足の人には定期的に使用することを推奨している。使用時間は1日60分程度が最良としている[1]

その他の効果

疲労回復、動脈硬化難聴メニエール症候群糖尿病性壊疽、心筋梗塞、頭部外傷、ベル麻痺偏頭痛骨折褥瘡、レオロジー効果によるアンチエイジングコラーゲンの合成や新陳代謝の高まりによる美肌効果、脂肪分解酵素のリパーゼの働きの高まりによるダイエット、ストレス解消、炎症を起こした組織の修復には多くの酸素が消費されることから、十分な酸素の供給によるけがの治療促進効果、記憶力・集中力向上、二日酔い時差ボケボケ防止などに効果があるとする病院もある[5][6][7]。近年ではビスホスホネート製剤副作用による壊死の新たな治療法の一つとして試みられている[8]







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