連星 連星の概要

連星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/05 10:04 UTC 版)

20太陽質量の主星と15太陽質量の伴星から成る連星系の進化を表したシミュレーション。
  1. 大抵の恒星は連星として誕生する。
  2. 一方の恒星が、他方から物質を吸引する。
  3. 前者は高速で回転して偏平な形になる。
  4. 後者はどんどん小さくなり、かつ、高温になる。
  5. 後者は小さくなったすえに、一挙に爆発して、超新星となる。爆発のあとには中性子星を誕生させる。
  6. 残った方(前者)は、時間を経て、赤色巨星となる。やがて爆発して、超新星となる。爆発のあとには中性子星を残す。
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影した、シリウスの画像。シリウスも連星で、白色矮星の伴星(左下)を持っている。

また、二重星という言葉も連星を示す場合が多い。しかし、実際には、複数の恒星が地球から見て、同じ方向に位置しており、「見かけ上、連星のように見える」場合を表す[5]。それぞれの恒星の、地球からの距離は全く異なり、物理的にも何の関連性も無い。二重星は、距離が異なるので、光度の差から、年周視差視線速度を正確に求める事が出来る。しかし、中にはアルビレオのように、二重星か真の連星かが分かっていないものもある。

概要

連星は、軌道計算から間接的に恒星の質量を求められるので、天体物理学において、とても重要な存在である。また、質量から、半径や密度などの他のパラメーターも得る事が出来る。また、この観測は、単一の恒星の質量光度関係 (MLR) の分析にも役立つ。

連星は、多くの場合、望遠鏡などの光学的手法で両星に分離して観測され、両星が公転運動している事が確認されている。このような連星を実視連星(英: visual binary)という。しかし、実視連星の多くは、伴星が主星の周りを公転するのに、数百年から数千年という時間がかかる。そのため、軌道要素に関しては不明な点が多い。また、望遠鏡を使用しても分離出来ないほど接近した連星は、アストロメトリー法スペクトルドップラー効果などの間接的な手法で発見する。このような連星は分光連星(英: spectroscopic binary)と呼ばれる。分光連星は星の軌道面が天球面に対して大きく傾いていて、2つの星が太陽系から見て近づいたり遠ざかったりするために、そのスペクトル線を継続的に調べると規則正しい周期で青い方にずれたり赤い方にずれたりする。分光連星ではスペクトル線の時間変化を観測することで、星の質量を決めることができる。そして、連星の中には、伴星が主星の手前を日食のように横断して、連星系全体の光度を周期的に変化させるものもある。このような連星は食連星(英: eclipsing binary)と呼ばれる。

主星と伴星が、非常に接近している場合、互いの重力で、伴星の形が扁平状になっている事がある。このような連星を近接連星(英: close binary)と言い、双方の恒星の質量が変化する時がある。

質量の等しい連星が楕円軌道を周回するアニメーション。画像中央の十字は連星系全体の重心を表す。

連星 (binary star) という言葉1802年ウィリアム・ハーシェルによって最初に作られたとされている。1780年にハーシェルは700個以上の二重星について、星同士の離角と位置を測定した。その結果、そのうちの約50個が20年の観測期間の間に位置を変えており、互いに軌道運動をしている連星であることを発見した。

また、何もない空間の周りを周回しているように見える恒星もいくつか発見されている。位置天文的連星と呼ばれる連星はこのような天体の一例である。この天体は比較的2星の距離が近い連星で、ある点の周りをふらつくような運動を見せるものの、伴星が見えないというものである。分光連星の中にも、前後に動くスペクトル線が1組しか存在しないものがある(通常の分光連星では近づく星と遠ざかる星による2組のスペクトル線が見える)。このような場合でも、普通の連星に用いるのと同じ手法を使うことによって、見えない伴星の質量を推定することができる。このような連星で伴星が見えないのは、伴星が非常に暗く主星の明るさに埋もれて検出できなかったり、中性子星のようにほとんど可視光を放出しない天体だったりするためである。場合によっては、見えない伴星がブラックホールである場合もある。このような例としてはくちょう座X-1がある。この連星系の見えない伴星の質量は太陽の約9倍である。不可視伴星の候補天体としては通常、中性子星も考えられるが、この質量は中性子星の質量の上限よりもはるかに重いため、ブラックホールである可能性が非常に高いと考えられている。また太陽系外惑星の捜索も、連星の不可視伴星と同じ手法で行われることが多い。

連星は、天文学者が遠距離の恒星の質量を直接測定できる主な方法の一つであるため、特に重要である。連星では互いに引き合う重力によって2つの星が回り合っている。実視連星では軌道の形を観測することで、また分光連星ではスペクトル線の時間変化を観測することで、星の質量を決めることができる。

恒星の多くは連星系を作って存在しているため、連星は我々が星形成の過程を理解する上でも重要な存在である。特に、連星の周期や質量を知ることによって連星系の角運動量の大きさが分かる。角運動量は保存量なので、連星の角運動量はその星が生まれた時点の状況についての重要な手がかりを含んでいる。

連星の分類

現在では連星はその観測的な属性によって4つのタイプに分類されている。

この分類の中で複数にまたがる星もしばしば存在する。例えば分光連星のいくつかは食連星でもある。

また、星同士の距離が両星の半径の数倍程度のスケールにまで接近した連星を近接連星 (close binary) と呼ぶ。連星のような二体系を公転周期に同期した回転座標で見ると、両方の星を中心とする涙滴型の等ポテンシャル面が存在する。両方の涙滴の尖った点同士はこの二体系のラグランジュ点L1で接している。この面で囲まれた領域をロッシュ・ローブと呼ぶ。近接連星系の星が進化して巨星になると星本体が膨張してロッシュ・ローブを満たし、やがては星のガスがローブからあふれて相手の星に降着するといった現象が起こり、新星超新星のような様々な活動現象の元となる。近接連星は星の間の距離に基づいて、以下の3つに分類される。


  1. ^ 日本大百科全書(ニッポニカ). “連星”. コトバンク. 株式会社DIGITALIO. 2022年2月8日閲覧。
  2. ^ 太陽もかつては連星だった!? ナショナルジオグラフィック
  3. ^ Gale - Enter Product Login”. go.galegroup.com. 2016年12月2日閲覧。
  4. ^ Filippenko, Alex, Understanding the Universe (of The Great Courses on DVD), Lecture 46, time 1:17, The Teaching Company, Chantilly, VA, USA, 2007
  5. ^ 重星・連星”. 宇宙情報センター. JAXA. 2016年12月2日閲覧。


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