詩を書く少年
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詩を書く少年 | |
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訳題 | The boy who wrote peotry |
作者 | 三島由紀夫 |
国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
ジャンル | 短編小説 |
発表形態 | 雑誌掲載 |
初出情報 | |
初出 | 『文學界』1954年8月号 |
刊本情報 | |
出版元 | 角川書店 |
出版年月日 | 1956年6月30日 |
装幀 | 高橋忠弥 |
装画 | パウル・クレー「シンドバッド」 |
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発表経過
1954年(昭和29年)、雑誌『文學界』8月号に掲載された[6][7]。単行本は2年後の1956年(昭和31年)6月30日に角川書店より刊行された[8][7]。同書には他に10編の短編が収録されている[9]。文庫版としては、1968年(昭和43年)9月15日に新潮文庫より刊行の『花ざかりの森・憂国――自選短編集』に収録された[8][7]。
翻訳版は、Ian Hideo Levy訳(英題:The Boy Who Wrote Poetry)、中国(中題:寫詩的少年)などで行われている[10]。
執筆動機
自身で〈私小説〉〈半ば自伝的な作品〉だという『詩を書く少年』を執筆した動機について三島由紀夫は、自分を詩人だと信じていた少年時代の幸福感を定着しておきたいという思いもあったとしている[1]。
また、自分が〈詩人〉ではなかったことを発見し、〈小説家〉になった転機を書いておかなければならなかったとしている[2]。
なお、『詩を書く少年』のRのモデルとなった坊城俊民は、当時三島と「〈詩人〉の定義」で言い争ったことがあるとし[4]、「私が龍之介の文学論を盾に、最も純粋な文学者を詩人とよんだのに対し、三島は〈小説家〉と〈詩人〉を峻別して譲らなかった」と述べている[4][5]。また、三島は自身を〈詩人〉と思い込み、坊城と手紙の交換をしていた14、15歳の頃が、〈小生の黄金時代〉で、その時以上の〈文学的甘露〉はなかったと自決の6日前に回顧している[11]。
主題
三島は『詩を書く少年』を、『海と夕焼』『憂国』と並んで、〈私にとつてもつとも切実な問題を秘めたもの〉として、『詩を書く少年』には、〈少年時代の私と言葉(観念)との関係が語られてをり、私の文学の出発点の、わがままな、しかし宿命的な成立ちが語られてゐる〉と説明している[12]。
なお三島は、『詩を書く少年』と『海と夕焼』との関連性に触れ、『海と夕焼』は『詩を書く少年』の〈絵解きとも見るべき作品〉だとし、『海と夕焼』の〈つひに海が別れるのを見ることがなかつた少年の絶望〉は、『詩を書く少年』の〈自分が詩人でないことを発見した少年の絶望〉と同じだと解説している[2]。また『海と夕焼』の主題を、〈おそらく私の一生を貫く主題になるもの〉として、自身の〈問題性〉である〈「なぜあのとき海が二つに割れなかつたかといふ奇蹟待望」が自分にとつて不可避なことと、同時にそれが不可能なこと〉は、『詩を書く少年』を書いた15歳の頃から、〈明らかに自覚されていた筈〉と自己分析している[12]。
- ^ a b c 「おくがき」(『詩を書く少年』角川小説新書、1956年6月)。29巻 2003, pp. 221–222に所収
- ^ a b c d 「あとがき」(『三島由紀夫短篇全集・5』講談社、1965年7月)。33巻 2003, pp. 411–414に所収
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 佐藤秀明「〈現実が許容しない詩〉と三島由紀夫の小説」(論集II 2001, pp. 1–22)
- ^ a b c 「『詩を書く少年』のころ」(坊城 1971)
- ^ a b c 田中美代子「詩を書く少年」(事典 2000, pp. 185–187)
- ^ 井上隆史「作品目録――昭和29年」(42巻 2005, pp. 403–406)
- ^ a b c 田中美代子「解題――詩を書く少年」(19巻 & 2002-06, pp. 788–790)
- ^ a b 山中剛史「著書目録――目次」(42巻 2005, pp. 540–561)
- ^ 高橋重臣「詩を書く少年」(旧事典 1976, p. 177)
- ^ 久保田裕子「三島由紀夫翻訳書目」(事典 2000, pp. 695–729)
- ^ 「坊城俊民宛ての書簡」(昭和45年11月19日付)。38巻 2004, pp. 875–876
- ^ a b c 「解説」(『花ざかりの森・憂国――自選短編集』新潮文庫、1968年9月)。花・憂国 1992, pp. 281–286、35巻 2003, pp. 172–176に所収
- ^ a b 野島秀勝「『拒まれた者』の美学―三島由紀夫論」(群像 1959年2月号)。野島秀勝『「日本回帰」のドン・キホーテたち』(冬樹社、1971年)に所収。論集II 2001, p. 5
- ^ 神西清「ナルシシスムの運命」(文學界 1952年3月号)。群像18 1990に所収。論集II 2001, p. 5
- ^ a b 高橋和幸「三島由紀夫の初期世界の考察―小説家の誕生と中世」(私学研修 第151・152合併号、1999年2月)。論集II 2001, p. 6
- ^ 『小説家の休暇』(講談社、1955年11月)。28巻 2003, pp. 553–656に所収
- 1 詩を書く少年とは
- 2 詩を書く少年の概要
- 3 あらすじ
- 4 登場人物
- 5 脚注
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