異性化糖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/03 04:32 UTC 版)
特性
- 砂糖より甘みが口中に残りにくく、低温下で甘味度を増すので、清涼飲料や冷菓などに多く使われている。異性化糖は価格も安い(果糖分 55 % の果糖ブドウ糖液糖は砂糖の7割程度)ので、他に缶詰、パン、みりん風調味料などにも使われている。
- 低温での利用に向いている半面で、熱に弱く、加熱すると着色してしまう(このときメイラード反応が起きる)。
- 粘性が少ないため、取り扱いやすく、タンクローリーにより大量に運送したり、タンクに保存・貯蔵したりすることが容易である。
- 液状のため、固形化や粉末化するのが難しく、果糖ブドウ糖液糖の一部がガムシロップとして市販されている以外は、一般消費者向けにはほとんど小売りされず、大半がBtoBでの販売である。
各国の事情
異性化糖は主に工業国において生産される。普及の割合には、各国の農業政策と密接な関係がある。補助金制度等は現在の農業自由化の流れの中で変化しつつある。
日本
- 日本においては、国内で余剰気味のサツマイモ等を原料とした糖類を作る技術が求められ、農林省および通商産業省所管下の試験研究機関で競って研究開発が進められた結果、1960年代後半から1970年代にかけて技術が確立された。現在の製法は通商産業省工業技術院(現国立研究開発法人産業技術総合研究所)の高崎義幸らのグループにおいて開発されたものである(特公昭41-7431)。日本においては普及は急速ではなかったものの、清涼飲料水において普及が進み、今では砂糖類の需要の40%程度となっている[3]。日本においてもデンプン源として主に使われるのは今はトウモロコシであるが、農業振興のため、一定量の国内産デンプンの引き取り義務がある。
- 日本の市場規模は、年間800億円 - 1000億円。10社(日本スターチ・糖化工業会)が9割のシェアを握る構造となっている[4][5]。
アメリカ合衆国
- アメリカ合衆国ではコーンスターチ(トウモロコシから作られたデンプン、現在では原料には低コスト生産のため病害虫耐性を高めた遺伝子組み換えトウモロコシが主に使用される)を原料に使っているため HFCS (high-fructose corn syrup) と呼ばれている。
- 通商産業省工業技術院は、1966年に再実施権付きの独占実施契約を、コーンスターチの5大メーカーの一であったスタンダード・ブランズと締結している。この契約は国有特許の輸出第一号になったものである。
- アメリカ食品医薬品局の審査を経た後、開発された直後の1970年代に急速に受け入れられ、今では糖類の需要の半分近くを占め、世界の生産量、消費量の7割を占めており、直接ないし清涼飲料水の形で周辺国へ輸出もしている。これにはキューバ革命によって、キューバからの砂糖の輸入が途絶え価格が高騰したこと、液糖を使う素地が元々あったことが考えられる。
- 普及に伴い、肥満の原因としてやり玉に挙げられることが多くなり、大きな論争の種となっている。
欧州連合
- 欧州連合 (EU) 砂糖規制法規においてはイソグルコース (isoglucose) と呼ばれ、製糖業の保護のために生産割り当てが行われている。その結果、EU諸国における異性化糖の占める割合は多くて 5 % 以下で、あまり普及していない。食品表示上では、ブドウ糖果糖液糖に相当する Glucose-Fructose Syrup (GFS) が使われる。果糖ブドウ糖液糖等に相当する Fructose-Glucose Syrup (FGS) の表記も規定されているがEU圏内では殆ど生産されていない。
脚注
注釈・出典
- ^ 砂糖及びでん粉の価格調整に関する法律 - e-Gov法令検索
- ^ a b c d e Cordain L, Eaton SB, Sebastian A, et al. (2005). “Origins and evolution of the Western diet: health implications for the 21st century”. Am. J. Clin. Nutr. 81 (2): 341–54. PMID 15699220 .
- ^ 砂糖及び異性化糖の需給総括表['20年1月7日] - 農畜産業振興機構
- ^ 甘味料販売で価格カルテルか。公取委、10社立ち入り[リンク切れ](47NEWS.2012年1月31日)2012年2月3日
- ^ “甘味料販売で価格カルテルか / 公取委、10社立ち入り”. 四国新聞社 (2012年1月31日). 2019年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年7月2日閲覧。
異性化糖と同じ種類の言葉
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