産業カウンセラー 産業カウンセラーの概要

産業カウンセラー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/18 04:56 UTC 版)

産業カウンセラー
実施国 日本
資格種類 民間資格
分野 産業精神保健
認定団体 一般社団法人日本産業カウンセラー協会
認定開始年月日 1992年
公式サイト http://www.counselor.or.jp/
ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル 資格
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概要

産業カウンセラーは、心理学的手法を用いて働く人たちが抱える問題を自らの力で解決できるよう援助する心理職資格である[4]。「メンタルヘルス対策への援助」「人間関係開発への援助」「キャリア開発への援助」の3つを活動領域とする[4]。日本では、心理職の国家資格である公認心理師のみならず、民間の心理学関連資格は多数存在するが、その中で産業カウンセラー資格は知名度の高いものの一つである[5]

一方で取得までの難易度は、大学院課程修了を基本要件とする「臨床心理士」資格や、大学院課程修了を一部要件とする「学校心理士」「臨床発達心理士」に比して緩やかであり[1]、産業カウンセラーの上位資格とされる「シニア産業カウンセラー」資格を含めて比較しても、その難度は低い[6]

成年に達していれば学歴不問で参加できる「産業カウンセラー養成講座[7]」を受講すれば、四年制大学(心理学又は心理学隣接諸科等の学部)を卒業していなくても最短では約半年間で受験資格が得られ、かつ全受験者の60%以上[8]が合格するため、「心理相談員」資格や「認定心理士」資格などのような基礎的・入門的資格として、あるいは時間的制約のある在職の一般的労働者の取得が多いという特徴がある[7]ほか、専門職大学院などの臨床心理士指定大学院への入学を目指すものが、産業カウンセラー資格の取得を目指す場合もある[9]

実技試験の3年度間免除制度と通信教育

免除制度や代替制度もいくつか用意されている。例えば「産業カウンセラー養成講座」等における受講者同士のミニカウンセリングなどの模擬演習にて、その能力が一定の水準に達したものと認められると、「受講年度」「翌年度」「翌々年度」まで本試験実技試験の免除を受けられる。ほかにも、「産業カウンセラー養成通信講座[10]」があり、通常の「産業カウンセラー養成講座」等に通えない場合などに、理論科目はテキスト添削問題の提出、演習科目は課題レポートの提出と12日間の演習出席[10]を行うと受験資格が得られる。なお、この「産業カウンセラー養成通信講座」の模擬演習でも、上記と同じ条件で本試験実技試験の免除を受けることができる[10]

名称をめぐる誤解

「産業カウンセラー」は資格名であり、「スクールカウンセラー」や「キャリアカウンセラー」のような職業名ではない[1]産業精神保健分野で活動する心理カウンセラーの総称は、「企業内カウンセラー」などの職業名で呼ばれ、精神科医などの医師[11]臨床心理士[12]のような専門家が委嘱契約などに基づき務めるほか、高度な心理職専門家人材の確保が困難なときには保健師[13]が兼務することがある。産業カウンセラーは「現に産業精神保健分野を担当している者」に限らない。また「産業カウンセラー資格を取得しなければ産業精神保健分野での活動ができない」は誤解である。

歴史

産業カウンセリングは1958年頃、国際電電電電公社など各社のカウンセラーや人事労務担当者、管理者などが集まり、産業カウンセリング研究会が開かれたことに端を発する。1960年「第一回産業カウンセリング全国研究大会」が立教大学で開催され、全国組織の「日本産業カウンセラー協会」が誕生した。

1970年に労働大臣の許可により社団法人となった後、当初はカウンセリングの調査・研究・啓蒙に主眼が置かれていたが、次第に産業カウンセラーの養成・訓練・資格試験にも力を入れるようになる。1971年に「2級産業カウンセラー」試験が、1981年に「1級産業カウンセラー」試験が実施され、1991年12月には産業カウンセラー試験が旧労働省技能審査として認定されたが[2]、この認定は2001年度末で終了し、以降は技能審査から除外された[3]

この際、資格の呼称が「初級産業カウンセラー」「中級産業カウンセラー」「上級産業カウンセラー」となり、2004年度以降は「産業カウンセラー(旧初級産業カウンセラー)」と「シニア産業カウンセラー(旧中級産業カウンセラー)」に変更され、現在に至っている。尚、2002年度以降「上級産業カウンセラー」は資格試験の実施が凍結されている。


  1. ^ a b c d 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “産業カウンセラー試験”. 2010年2月21日閲覧。
  2. ^ a b 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “日本産業カウンセラー協会とは”. 2010年2月23日閲覧。
  3. ^ a b 厚生労働省 (2009年). “職業能力評価推進給付金で厚生労働大臣が定める職業能力評価”. 2010年2月24日閲覧。
  4. ^ a b 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “産業カウンセラーの3つの活動領域”. 2010年2月28日閲覧。
  5. ^ Yahoo!学習 (2010年). “資格情報、解答速報 - 産業カウンセラー”. 2010年3月3日閲覧。
  6. ^ Yahoo!学習 (2010年). “医療・福祉・心理からさがす - 資格情報、解答速報”. 2010年7月14日閲覧。
  7. ^ a b c d e 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “産業カウンセラー養成講座”. 2010年2月28日閲覧。
  8. ^ a b 日本産業カウンセラー協会 (2011年). “産業カウンセラー試験合否結果について”. 2012年2月1日閲覧。
  9. ^ asahi.com (2010年). “キャリアアップを目指す「社会人のための大学院・専門職大学院」特集”. 2010年7月3日閲覧。
  10. ^ a b c 日本産業カウンセラー協会 (2010年). “2010(平成22)年度産業カウンセラー養成通信講座のご案内” (PDF). 2010年7月14日閲覧。
  11. ^ 東京都医師会 (2004年). “産業医とは”. 2010年2月1日閲覧。
  12. ^ 日本臨床心理士資格認定協会 (2009年). “臨床心理士の職域”. 2010年1月30日閲覧。
  13. ^ 日本産業保健師会 (2009年). “日本産業保健師会とは”. 2010年2月13日閲覧。
  14. ^ a b c d e f 日本産業カウンセラー協会 (2009年). “産業カウンセラー等の実態調査” (PDF). 2010年12月1日閲覧。
  15. ^ a b c d e f 日本産業カウンセラー協会 神奈川支部 (2009年). “養成講座を修了された皆様へ -養成講座で学んだことをどう活かすか-”. ウェブ魚拓. 2010年4月22日閲覧。
  16. ^ a b c d American Psychological Association (2010年). “Ethical Principles of Psychologists and Code of Conduct”. 2010年12月1日閲覧。
  17. ^ a b c d 東京学芸大学 (2005年). “カウンセラーの職業倫理について”. 2010年12月2日閲覧。
  18. ^ 日本産業カウンセラー協会 (2006年). “産業カウンセラー倫理綱領” (PDF). 2010年2月1日閲覧。
  19. ^ 文部科学省 (2004年). “拡充事業 - 事業名:スクールカウンセラー活用事業補助” (PDF). 2010年12月1日閲覧。
  20. ^ 文部科学省 (2007年). “児童生徒の教育相談の充実について -生き生きとした子どもを育てる相談体制づくり-(報告)”. 2010年1月31日閲覧。






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