大相撲
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優勝制度
幕内最高優勝は1909年6月場所、新聞社による最高成績者への優勝額贈呈によって事実上始まった。当初は物言いがついた相撲であえて決着をつけない預りや、取り組み編成後に一方の力士が休場した場合、相手力士も休場扱いとなる制度などあって、これらが優勝争いを左右することも少なくなかった。その後、預りの廃止や不戦勝制度、同点の場合の優勝決定戦の導入などがありつつ、白星数の優劣で優勝を争う大筋は変わらぬまま現在に至っている。
優勝制度の不公平
同じ幕内に属して(2014年現在の定員は42名)幕内最高優勝を争う立場であっても、上位と下位で15日間の対戦相手がまったく違うことなどへの批判もあり[34]、過去に横綱・大関とまったく対戦せずに全勝した時津山仁一や、十両力士への敗戦があった佐田の山晋松の優勝が物議を醸した例がある。そのため、現在では幕内下位で優勝争いの先頭または2番手につけている力士を、終盤に横綱・大関と対戦させることで[注 2]、優勝の価値の公平化を図っている。
所属部屋ごとの対戦相手の不公平もしばしば問題視される。近年の例では、二子山部屋や武蔵川部屋の幕内力士が上位に集中していた[注 3]、1990年代後半から2000年代初頭に、個人別総当たり制の導入が話題になったことがあった。養成員(幕下以下の力士)時代は大部屋で共同生活を送るという相撲部屋のしきたりが、個人別総当たり制の実現を妨げる要因となっている。
力士の条件
現行制度では、大相撲の力士を志望する者(男性限定)は、新弟子検査を受検し、体格検査及び内臓検査に合格しなければならない。国籍は不問だが、「外国出身力士は各部屋1人ずつ」という規定が存在する。2019年2月に力士(競技者)規定の一部が改正となり、入れ墨の禁止も明文化された[35][36]。
力士の報酬
関取の報酬
大相撲力士の報酬制度は、地位によって与えられる給与・手当と、成績給に相当する力士褒賞金(給金)と、いわゆる2階建てになっている。
(2019年1月現在)
項目 | 横綱 | 大関 | 三役(関脇・小結) | 平幕(前頭) | 十両 |
---|---|---|---|---|---|
月額給与 | 300万円 | 250万円 | 180万円 | 140万円 | 110万円 |
年額給与 | 3,600万円 | 3,000万円 | 2,160万円 | 1,680万円 | 1,320万円 |
年額賞与 | 600万円 | 500万円 | 360万円 | 280万円 | 220万円 |
特別手当 | 120万円 | 90万円 | 30万円 | ||
出張手当 | 115.5万円 | 99.7万円 | 85万円 | 74.5万円 | 68.2万円 |
力士補助金 | 7.5万円 | 7.5万円 | 7.5万円 | 7.5万円 | 7.5万円 |
力士褒賞金(1場所) | 60万円 | 40万円 | 24万円 | 24万円 | 16万円 |
年額報酬 | 4,803万円 | 3,937.2万円 | 2,786.5万円 | 2,186万円 | 1,711.7万円 |
- 力士褒賞金は、本場所ごとの最低支給金額(年額報酬では6場所分で計算)。
給与
十両以上の力士(関取)には、次の通りの金額が月額給与として支給される。そのため、11月場所において十両で負け越し、1月場所で幕下に陥落した場合でも12月分の給与は支給される。幕下陥落が確実になり引退の意思を固めた力士が、翌月分の給与確保のため引退届提出を番付編成会議後まで遅らせ、翌場所の番付に名を残すケースも多い。
給与額は原則として年1回、理事会において見直すこととなっている。給与額は2001年に現行の金額となって以降2018年まで据え置きだったが、2018年11月の理事会の決定により、2019年1月場所から十両以上の力士の給料が増額されている[37]。
賞与
賞与は、9月と12月にそれぞれ月額給与の1カ月分が支給される。したがって、年額賞与は月額給与の2カ月分である。賞与の支給月が世間一般の6月と12月と違っているのは、以前に支給されていた巡業手当が賞与に変わったためである。
本場所特別手当
本場所特別手当は、小結以上の力士に対して本場所ごとに年6回支給される。11日間以上出場した場合は全額、6日-10日間出場した場合は3分の2、5日間以下の出場の場合は3分の1が支給され、全休(不戦敗も含む)の場合は支給されない。
- 横綱:200,000円
- 大関:150,000円
- 関脇・小結:50,000円
出張手当
出張手当は、3月場所、7月場所、11月場所の年3回、各場所ごとに次の通りの1日分支給金額を35日分[注 4]支給される。
- 横綱:宿泊費8,000円、日当3,000円
- 大関:宿泊費7,500円、日当2,000円
- 関脇・小結:宿泊費6,500円、日当1,600円
- 平幕:宿泊費5,700円、日当1,400円
- 十両:宿泊費5,300円、日当1,200円
力士補助金
力士補助金は、1月場所、5月場所、9月場所の年3回、髪結の補助金として支給される。
- 横綱から十枚目(十両)まで:一律25,000円
力士褒賞金
場所ごとに過去に残した成績に応じて支給される。計算の基礎となる持ち給金(支給標準額)の累積は序ノ口から始まり、持ち給金を4000倍した金額が十両以上の力士(関取)に支給される。持ち給金は勝ち越し1点につき50銭ずつ累積され[注 5]、負け越しや休場などでの減額はない。金星や幕内最高優勝では大きな加算(後述)があるほか、十両・幕内(関脇と小結を含む)・大関・横綱と持ち給金の最低額が決まっており、昇進時に累積額がその金額に満たなければ番付に応じた最低額まで引き上げられる。
番付 | 持ち給金 (最低額) |
最低支給額 (1場所ごと) |
---|---|---|
横綱 | 150円 | 60万円 |
大関 | 100円 | 40万円 |
幕内 | 60円 | 24万円 |
十両 | 40円 | 16万円 |
力士養成員の報酬
幕下以下は「力士養成員」と呼ばれ、給与と力士褒賞金は支給されないが、場所手当と本場所の成績による幕下以下奨励金(勝ち星1つごとに支給される勝星奨励金と勝ち越した数に応じて支給される勝越金)が本場所ごとに年6回支給される。
- 幕下:165,000円
- 三段目:110,000円
- 序二段:88,000円
- 序ノ口:77,000円
(2019年1月現在)
項目 | 幕下 | 三段目 | 序二段 | 序ノ口 |
---|---|---|---|---|
場所手当 | 165,000円 | 110,000円 | 88,000円 | 77,000円 |
年額報酬 | 990,000円 | 660,000円 | 528,000円 | 462,000円 |
勝星奨励金(1つあたり) | 2,500円 | 2,000円 | 1,500円 | 1,500円 |
勝越金(1つあたり) | 6,000円 | 4,500円 | 3,500円 | 3,500円 |
成績による場所ごとの収入の計算式を示すと次のようになる。
- 7戦全敗:場所手当のみ
- 1勝6敗:場所手当+勝星奨励金1勝分
- 2勝5敗:場所手当+勝星奨励金2勝分
- 3勝4敗:場所手当+勝星奨励金3勝分
- 4勝3敗:場所手当+勝星奨励金4勝分+勝越金1点分
- 5勝2敗:場所手当+勝星奨励金5勝分+勝越金3点分
- 6勝1敗:場所手当+勝星奨励金6勝分+勝越金5点分
- 7戦全勝:場所手当+勝星奨励金7勝分+勝越金7点分
上に示した成績の負け数には休場も含む。幕下上位及び序ノ口下位の八番相撲の場合は、負け越している場合は勝越金がないため7番取って同じ数の白星を挙げた力士と同じになるが、勝ち越している場合は上の式にそのまま当てはまらず、勝越金が偶数点分になることが起こりうる。また今後出る可能性はほぼないと思われるが、引分や痛み分けが絡んだ場合も上の式にそのまま当てはまらないことが起こりうる。
このほか、本場所における電車賃が乗車券で支給される。
力士養成員でも、寝食は各々相撲部屋でできる(費用は協会から部屋持ち親方に対して、力士養成員1人につき月額70,000円、年額840,000円が支給されている)うえに、共同の食事「ちゃんこ」もあるので、幕下以下の生活が続いても食いはぐれることはない。ただし慣習としての部屋への上納つまり「持ち出し」もあるので必ずしも全額が可処分所得になるわけではない。特に親方、部屋の看板である十両以上の力士はかなりの額を「持ち出し」せねばならないが、逆に部屋に十両以上力士がいるかいないかで部屋の生活水準、ひいては本場所成績が大きく異なってくる。
注釈
- ^ ただし「番付外」や「新序」も力士の経歴を説明する場合は解かり易くするために番付の一種として扱う。
- ^ 横綱対大関の対戦カードや大関対大関の対戦カードを減らして下位の優勝争い力士と横綱や大関との対戦カードを組んでいる。
- ^ 横綱・大関のみ表記するが、二子山部屋の貴乃花,若乃花,貴ノ浪、武蔵川部屋の武蔵丸,出島,武双山,雅山などで、表記した力士は、横綱対横綱や横綱対大関の対戦カードが他の力士に比べて減る事になる。
- ^ 番付発表日から本場所初日前日までの13日間、本場所15日間、本場所千秋楽翌日から本場所千秋楽の翌日曜日までの7日間(この間は休みとなり、休み明けから巡業が始まる)の合計。
- ^ ゆえに、勝ち越しは給金直しとも言われる。
- ^ ただし、現役力士の自動車運転は内規で禁止(運転免許の取得そのものは可)されているため、別に運転手を確保する必要がある。
- ^ ただし、紫馬簾は関脇以下でも、横綱の太刀持ち・露払いを務める者は例外的に使用が可能。また、大関を陥落した者も引き続き使える。
- ^ 引退時に大関から陥落していた場合であってもこの権利は維持される。
- ^ ただし、出世が早いなどの理由で大銀杏が結えない力士は務められない。
- ^ 地位が上がるほど人数も増える。
- ^ 幕下以下の力士は、共同の部屋で寝起きする。
- ^ 幕下以下の力士より遅い時間に稽古場に現れることが多い。
- ^ これらは一般に後援会から寄贈される事が多い。
- ^ 十両と幕内は別に行われる。
- ^ 横綱は3個、横綱以外は1個。陥落した者を含めて幕下以下では使えない。
- ^ 幕下上位の取組の場合で、進行が早い場合は塩を使用することがある。
- ^ 大銀杏はあくまで「正装」であり、関取でも稽古の時など、普段結う髷は丁髷である。また、幕下以下の力士養成員でも本場所で十両力士と対する場合や弓取り式を行う者、初っ切り、断髪式の時は大銀杏が結える他、床山が練習するために大銀杏を結うことはある。
- ^ 十両経験者であっても現在の番付が幕下以下の場合は不可。
- ^ また、幕内力士の場合は納税対策として懸賞金の一部(2014年5月以降は26,700円)が納税充当金として天引きされ、力士本人の名義で協会がプールし、納税額に不足が生じた時はここから充当されるようになっている。
- ^ 留意すべき事項として名古屋場所の新弟子検査の受検者数は例年少なく、高校・大学を中退して受検する者が減少していることも一因である。
出典
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- ^ ニコニコ超会議2015「リアルSUMOU」55th ACC CM FESTIVAL・インタラクティブ部門で”ACCゴールド”を受賞 株式会社ドワンゴ 2015年10月28日
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