大台ヶ原山 生態系

大台ヶ原山

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/27 08:30 UTC 版)

生態系

大台ヶ原の南東部、正木ヶ原や牛石ヶ原ではトウヒの立ち枯れと笹原が見られる。これは、1959年昭和34年)に近畿地方を襲った伊勢湾台風が森林を破壊して地表に日光が差し込むようになり、コケ類が衰退してミヤコザサが繁茂し始めたためである[12]。ミヤコザサの繁茂はこれらを主食とするニホンジカの生息数増加を招き、大台ヶ原の森林を構成する樹木の幼木や樹皮がシカに採食されるようになった[12]。このほかにも人為や地球規模での環境変化など、複合的な要因によって森林衰退が進んでいると考えられている[12]環境省ではシカが環境に与える影響が大きいとして個体数の調整(捕獲)を実施してきている[13]が、自然保護団体からは、シカと環境変化の因果関係は不明であり駆除を行うべきでないという意見も出ている[14]

生息種の例

登山・観光

大台ヶ原は吉野熊野国立公園のひとつに指定されていて、中心付近の標高1,573.7m地点には大台ヶ原の自然や歴史を紹介する施設として「大台ヶ原ビジターセンター」が建てられている。ビジターセンターには200台以上を収容できる駐車場が整備され、周辺には売店や飲食店、宿泊施設が営業している。登山道はビジターセンターを起点に周回する複数のルートが整備されているほか、東側山麓の大杉渓谷からのルートが知られている。1961年に大台ヶ原ドライブウェイが開通してからは、手軽に訪れることができる山となり、登山者や観光客が増加したことも自然に影響を与えていると推定されている[12]

東大台

大蛇嵓

ビジターセンターから東の区域は東大台と呼ばれ、一般登山者向けのコース「東大台ヶ原自然観察路」が整備されている[19]。日出ヶ岳山頂は東大台の北東端にあり、登山道は尾根沿いに南西へ牛石ヶ原(うしいしがはら)や正木ヶ原(まさきがはら)を通りながら大蛇嵓(だいじゃぐら、ぐらの字はやまかんむりに「品」)まで続いている[20][21]

西大台

西大台、三津河落山(右上)

ビジターセンターから西の区域は西大台と呼ばれ、自然環境を保持して自然体験の場を提供するため、環境省により立ち入り人数が制限されている[22](曜日や時期に応じて1日につき30人から100人[23])。また、立ち入りに当たっては3ヶ月前までに事前申請を行って手数料を納付した上、当日までにレクチャーを受けなければならない[24]。西大台へはビジターセンターから入るゲートと、南西の逆峠から入るゲートがある[22]

アクセス

公共交通機関
大台ヶ原ビジターセンターの駐車場脇には「大台ヶ原」バス停があり、近畿日本鉄道吉野線大和上市駅から奈良交通が路線バスを季節運行している[25]。なお、2022年はイオンモール橿原発着、大和八木駅・橿原神宮前駅経由で運行されており、大和上市駅には停車しない[26]
大杉渓谷の登山口へはJR東海紀勢本線三瀬谷駅付近から、エスパール交通株式会社が「大杉渓谷登山バス」として募集型企画旅行のツアーバスを運行している[27]
自家用車
国道169号新伯母峯トンネル付近から奈良県道40号大台ケ原公園川上線(大台ヶ原ドライブウェイ)を経由して、ビジターセンターまでおよそ20kmの道のりである(冬季通行止)。
大杉谷の登山口へは、紀勢自動車道大宮大台インターチェンジから国道422号三重県道53号大台ヶ原線を経由して約47kmの道のりである[28]

林業

1914年(大正3年)、四日市製紙が東大台ケ原の森林8000町歩を買収。三重県相賀町に至るインクライン索道軽便鉄道を組み合わせた搬出路を建設して[29]1916年(大正5年)からモミカラマツツガヒノキを伐採し、搬出を行った。これに対して東京帝国大学白井光太郎が問題提起の演説会を行うと、地元の岸田日出男らにより自然林の保護運動が活発となった[30]1925年(大正14年)、四日市製紙を合併した富士製紙は、割高な伐出経費と木材市況の低迷から東大台ケ原の伐採を中止。その後、同地の森林は保安林に指定された[31]


  1. ^ a b c 基準点成果等閲覧サービス”. 国土地理院. 2011年3月21日閲覧。
  2. ^ 「エコパーク拡張 大台町全体に 活性化へ まず地元愛」中日新聞2016年4月3日付朝刊、三重版26ページ
  3. ^ 大和大峰研究グループ著『大峰山・大台ヶ原山 -自然のおいたちと人々のいとなみ-』築地書館 2009年 77ページ
  4. ^ 自然公園法第二十一条
  5. ^ 吉野熊野国立公園区域図(北部) (pdf)”. 環境省. 2013年11月19日閲覧。
  6. ^ 吉野熊野国立公園大台ヶ原|大台ケ原とは|歴史|変遷1~海底の記憶”. 環境省. 2013年11月18日閲覧。
  7. ^ 自然環境の概要”. 環境省. 2013年11月19日閲覧。
  8. ^ 大和大峰研究グループ著『大峰山・大台ヶ原山 -自然のおいたちと人々のいとなみ-』築地書館 2009年 72-74ページ
  9. ^ 吉野熊野国立公園大台ヶ原|大台ケ原とは|自然環境|地質的特徴”. 環境省. 2013年11月18日閲覧。
  10. ^ a b c 吉野熊野国立公園大台ヶ原|大台ケ原とは|自然環境|大台ヶ原の気候”. 環境省. 2013年11月18日閲覧。
  11. ^ 大和大峰研究グループ著『大峰山・大台ヶ原山 -自然のおいたちと人々のいとなみ-』築地書館 2009年 81ページ
  12. ^ a b c d 大台ヶ原自然再生事業”. 環境省. 2013年11月19日閲覧。
  13. ^ 大台ヶ原ニホンジカ保護管理計画 環境省近畿地方環境事務所、2011年2月20日閲覧。
  14. ^ 鹿と原生林との共生のために 大台ケ原・大峰の自然を守る会、2011年2月20日閲覧。
  15. ^ a b 吉野熊野国立公園大台ヶ原|大台ケ原とは|生き物紹介|は虫類・両生類”. 環境省. 2013年11月19日閲覧。
  16. ^ a b c 吉野熊野国立公園大台ヶ原|大台ケ原とは|生き物紹介|鳥類”. 環境省. 2013年11月19日閲覧。
  17. ^ a b c 吉野熊野国立公園大台ヶ原|大台ケ原とは|生き物紹介|哺乳類”. 環境省. 2013年11月19日閲覧。
  18. ^ a b c d e Mount Odaigahara, Mount Omine and Osugidani Biosphere Reserve, Japan” (英語). UNESCO (2020年5月). 2023年1月27日閲覧。
  19. ^ 大和大峰研究グループ著『大峰山・大台ヶ原山 -自然のおいたちと人々のいとなみ-』築地書館 2009年 84ページ
  20. ^ 吉野熊野国立公園大台ヶ原|コース案内|東大台地区”. 環境省. 2013年11月22日閲覧。
  21. ^ 大和大峰研究グループ著『大峰山・大台ヶ原山 -自然のおいたちと人々のいとなみ-』築地書館 2009年 78-79ページ
  22. ^ a b 吉野熊野国立公園大台ヶ原|西大台利用調整地区|利用調整地区とは”. 環境省. 2013年11月22日閲覧。
  23. ^ 吉野熊野国立公園大台ヶ原|西大台利用調整地区|利用ルール”. 環境省. 2013年11月22日閲覧。
  24. ^ 吉野熊野国立公園大台ヶ原|西大台利用調整地区|西大台地区に入るには”. 環境省. 2013年11月22日閲覧。
  25. ^ 路線図(上市駅)”. 奈良交通株式会社. 2013年11月22日閲覧。
  26. ^ 大台ヶ原・和佐又山|春の臨時バス|奈良交通”. 奈良交通株式会社. 2022年4月27日閲覧。
  27. ^ エスパール交通株式会社”. エスパール交通株式会社. 2013年11月22日閲覧。
  28. ^ (無題) (pdf)”. 社団法人大杉谷登山センター. 2013年11月22日閲覧。
  29. ^ 島田錦蔵『流筏林業盛衰史 : 吉野北山林業の技術と経済』p25,26 1974年10月15日 林業経済研究所 全国書誌番号:70000450
  30. ^ 吉野熊野国立公園の父・岸田日出男”. 大淀町 (2019年5月14日). 2021年6月4日閲覧。
  31. ^ 歴史の情報蔵 四日市製紙が構想―紀北の発電計画”. 三重県県史編さん班 (2008年). 2021年8月10日閲覧。


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