仙山線
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/13 15:36 UTC 版)
概要
宮城県の県庁所在地である仙台と山形県の県庁所在地である山形とを結んでいる。名称は、仙台と山形から頭文字を1字ずつとって付けられた。日本初の交流電化が行われた路線でもある(詳細は「#日本初の交流電化」の節を参照)。
起点の仙台駅で東北新幹線および東北本線に、終点の羽前千歳駅では奥羽本線に接続している。羽前千歳からはすべての列車が奥羽本線の山形駅に直通するため、運転系統としての仙山線は奥羽本線羽前千歳駅 - 山形駅間を含んでいる。同区間には軌間の異なる山形新幹線/山形線(軌間1,435mm)用とは別に独立した単線が仙山線用に敷設されており、北山形駅 - 山形駅間は左沢線の列車と共用している。
全線が仙台市内と山形市内にあり、東北本線との分岐部分で僅かに仙台市宮城野区、奥新川駅 - 仙山トンネルの間は一部太白区を通るものの駅や信号場などの施設はなく、駅はすべて仙台市青葉区内と山形市内にある。途中で他の市町村を通ることなく県庁所在地同士を直接結び、かつその両都市のみで完結するJRの路線は仙山線のみである[注釈 1]。
県境付近は勾配の厳しい山岳区間で、運行車両にもそれに対応する性能が求められるほか、秋季には車窓から紅葉を見ることができる反面、落葉によって車輪の空転が引き起こされ、ダイヤが乱れやすい。車輪が空転する状況が予想される場合は機関車が「落ち葉掃き列車」として走行することがある。この「落ち葉掃き列車」には、当初仙台車両センター所属のED78形電気機関車が使用されていたが、同型式の全廃後はED75形電気機関車に変更され、近年は郡山総合車両センター所属のDE10形ディーゼル機関車や、落ち葉掃き用の装置を仮設したE721系電車が使用されている。
1972年(昭和47年)から仙台市内区間は特定都区市内の対象路線となった。当初仙山線で対象となるのは北仙台駅のみであったが、後の新駅開業及び旧宮城町の仙台市への吸収合併に伴い宮城・山形県境の奥新川駅まで拡大している[注釈 2]。2003年(平成15年)からは仙台駅 - 愛子駅間がICカード乗車券「Suica」の仙台エリアに含まれ、2004年(平成16年)からは仙台駅 - 山寺駅間が「仙台まるごとパス」適用区間となった。仙山線の各種案内サインなどに用いられるラインカラーは、黄緑色に設定されている。2014年(平成26年)4月1日からは全線が大都市近郊区間として新設された「仙台近郊区間」となり、同日から作並駅・山寺駅で[報道 1]、2024年(令和6年)3月16日より羽前千歳駅でもICカード乗車券「Suica」が利用可能となった[報道 2]。
仙台駅 - 北仙台駅間は仙台市地下鉄との代替輸送(振替輸送)対象路線に指定されており、当該区間が運転見合わせとなった場合は、仙台市地下鉄南北線(仙台駅 − 北仙台駅 − 台原駅)への振替乗車が認められる場合がある。
区間 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
山形駅 | 羽前千歳駅 | 仙台駅 | ||||
路線名 | 奥羽本線 (4.8 km) (Google マップ) |
仙山線 (58.0 km) (Google マップ) | ||||
運行系統 | 仙山線 (62.8 km) (Google マップ) |
路線データ
- 路線距離(営業キロ):58.0 km [1]
- 管轄(事業種別):東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 軌間:1,067 mm [1]
- 駅数:18(起終点駅含む)
- 仙山線所属駅に限定する場合、東北本線所属の仙台駅、奥羽本線所属の羽前千歳駅[4]が除外され、16駅となる。
- 複線区間:なし(全線単線)[1]
- 電化区間:全線(交流20,000 V・50 Hz)
- 最急勾配:33.0 ‰
- 閉塞方式:特殊自動閉塞式(軌道回路検知式)
- 保安装置
- 最高速度:95 km/h
- 運転指令所:仙台総合指令室 (CTC)
- 準運転取扱駅(入換時は駅が信号を制御):作並駅
- 車両基地:仙台車両センター
- 大都市近郊区間:全線(仙台近郊区間)
- 特定都区市内:仙台駅 - 奥新川駅間(仙台市内)
- IC乗車カード対応区間:仙台駅 - 愛子駅間・作並駅・山寺駅・羽前千歳駅(Suica仙台エリア)
全線が東北本部の管轄である。
注釈
- ^ 同様の路線としてJR以外では、京阪電気鉄道の京津線がある(京都府京都市と滋賀県大津市)。
- ^ 1988年の奥新川駅までの指定拡大による影響で仙台市内までの200 km以上の長距離切符の場合、運賃計算上の営業キロは仙台駅までとなるため仙山線や山形駅を含む奥羽本線の山形県内の一部の駅に至っても仙台市内までの200 km以上の長距離切符を購入し、乗り越し精算をすると奥新川駅からの乗り越しの扱いとなるため山形県内の各駅への本来の経路指定よりも数十円から数百円程度安くなる場合がある。
- ^ 誘致活動の中には塩竈を起点に山形まで鉄道を建設するというものもあった。
- ^ 現在の山形市の一部。
- ^ 作並機関支区は1947年(昭和22年)に作並機関区、1960年(昭和35年)に仙山線管理所車両科となり1968年(昭和43年)まで存続した。
- ^ 現在の仙台市青葉区の一部。
- ^ a b ただし、1994年9月の災害による長期不通の際は、JRは仙台 - 山形間でノンストップの代行バスを運転したものの、仙山間の旅客は運賃が当時JRより安かった高速バス・仙台 - 山形線に乗客を奪われる結果となった。
- ^ E721系1000番台の投入により捻出された0番台の一部はワンマン運転対応に改造され、磐越西線の運用で残存していた719系を置き換えるために同線へ転出した。
- ^ このため、E721系1000番台の投入が開始されるまでの間、東北本線・常磐線ではE721系0番台から719系への車両変更が発生した。なお、常磐線の定期列車では、2012年3月17日以前、719系の定期運用は設定されていなかった。
出典
- ^ a b c d e f g h 国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』平成28年度版、電気車研究会・鉄道図書刊行会、p.28
- ^ 日本国有鉄道電気局『鉄道電報略号』1959年9月17日、22頁。
- ^ a b c d サステナビリティレポート2018 34頁 - JR東日本、2018年9月
- ^ 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』JTB 1998年
- ^ a b c 『山形市史』近現代編235-236頁。
- ^ a b c d e f 『仙台市史』通史編7(近代2)324-326頁。
- ^ a b c d e f g HANDS 019 仙山線 (PDF) (公益社団法人土木学会 土木の日実行委員会 土木コレクション小委員会)
- ^ a b 『山形市史』近現代編236-237頁。
- ^ 『宮城町誌』(本編)678頁。
- ^ a b c d e f g 山形県鉄道利用・整備強化促進期成同盟会 (2021年3月). “資料1.線区別沿革の概要 - 仙山線” (PDF). 山形県の鉄道輸送. 山形県. pp. 56-58. 2021年12月29日閲覧。
- ^ 『山形市史』近現代編237-238頁。
- ^ 『山形市史』近現代編238-240頁。
- ^ 『山形市史』近現代編244-245頁。
- ^ 『山形市史』近現代編240-242頁。
- ^ 『山形市史』近現代編242-244頁。
- ^ 『山形市史』近現代編245頁。
- ^ 『山形市史』近現代編245-246頁。
- ^ a b c d e f g h 2011 Tohoku University Festival 大学祭あおば 鐵物語 ―テツモノガタリ― (研究テーマ:仙山線) (PDF) (東北大学鉄道研究会)
- ^ a b 『東北の鉄道』271-272頁。
- ^ 『宮城町誌』(本編)685-686頁。
- ^ 仙山線、喜びの全通式『山形新聞』1937年(昭和12年)11月11日夕刊.『昭和ニュース事典第6巻 昭和12年-昭和13年』本編p730 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
- ^ a b c d e 『宮城町誌』(本編)686-688頁。
- ^ a b 戦後経済成長の礎を築いた鉄道10年の記録 秘蔵鉄道写真に見る戦後史 下 昭和30年代(監修:須田寛 解説:原田隆行、JTBパブリッシング) p.36
- ^ 『仙台市史』通史編8(現代1)217-218頁。
- ^ 『仙台市史』通史編9(現代2)243頁。
- ^ a b 『仙台市史』通史編9(現代2)251-252頁。
- ^ “せんだい都市交通プラン ~百万都市のにぎわいと暮らしやすさを目指して~”. 仙台市 (2010年11月10日). 2016年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年12月26日閲覧。
- ^ 『鉄道省年報. 昭和10年度』(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 記念スタンプ「逓信省告示第3515号」『官報』1937年11月5日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '02年版』ジェー・アール・アール、2002年7月1日、185頁。ISBN 4-88283-123-6。
- ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '02年版』ジェー・アール・アール、2002年7月1日、192頁。ISBN 4-88283-123-6。
- ^ a b 2023年3月ダイヤ改正について - 東日本旅客鉄道東北本部2022年12月16日
- ^ 線路別ご利用状況(2009~2013年度) (PDF) - 東日本旅客鉄道
- ^ a b “平成20年度山形県土木概要 第3章 交通政策” (PDF). 山形県 (2008年). 2009年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月3日閲覧。
- ^ “仙台都市圏交流基盤に関する懇談会” (PDF). 社団法人東北建設協会. 2011年7月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年4月3日閲覧。
- ^ 山形商工会議所 (2013年). “平成 25 年度JRへの要望事項 (回答書)”. 2018年10月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月29日閲覧。
- ^ 、2001、「RAILWAY TOPICS - 仙台地区で4月1日に改正 全列車3扉化」、『鉄道ジャーナル』(通巻414号)、鉄道ジャーナル社、2001年4月 p. 91
- ^ 『宮城町誌』(本編)688-689頁。
- ^ “各駅の乗車人員”. 東日本旅客鉄道. 2023年7月21日閲覧。
- ^ a b c 路線別ご利用状況(東日本旅客鉄道)
- ^ a b Suicaの一部サービスをご利用いただける駅が増えます (PDF) - 東日本旅客鉄道、2013年11月29日。
- ^ a b 『山形県の Suica 利用がますます便利になります!』(PDF)(プレスリリース)JR東日本東北本部、2023年12月15日 。2023年12月16日閲覧。
- ^ 『仙山線 西仙台ハイランド駅及び八ツ森駅廃止について』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道仙台支社、2014年2月14日。 オリジナルの2020年6月26日時点におけるアーカイブ 。2014年2月14日閲覧。
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- ^ 『2018年3月ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)JR東日本仙台支社、2017年12月15日 。
- ^ 『降雨等に対する防災対策工事および台風19号による被災箇所の復旧状況について』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道仙台支社、2020年4月24日 。2020年4月25日閲覧。
- ^ a b 仙山線 奥新川駅および面白山高原駅における一部列車の通過について (PDF) - 東日本旅客鉄道仙台支社、2021年12月15日
- ^ a b 冬期期間における仙山線の一部列車通過について (PDF) - 東日本旅客鉄道東北本部、2022年11月15日
- ^ a b 『2015年3月ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)東日本旅客鉄道仙台支社、2014年12月19日。 オリジナルの2019年5月12日時点におけるアーカイブ 。
- ^ a b c “<仙山線 全線開通80年>機能強化望む声根強く”. 河北新報. (2017年11月10日). オリジナルの2017年11月10日時点におけるアーカイブ。 2021年12月29日閲覧。
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- ^ 「交流電化への初の実験 国鉄仙山線 一日から二か月間」『日本経済新聞』昭和30年1月20日11面
- ^ “仙山線 CTC・自動信号化”. 交通新聞 (交通協力会): p. 1. (1985年3月13日)
- ^ “JR仙山線「面白山駅」の駅名変更 愛称名「面白山高原駅」に”. 山形新聞: p. 18. (1988年1月29日)
- ^ “仙山線復旧へ懸命”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1994年10月7日)
- ^ a b “台風の次は落ち葉でスリップ 運転再開の始発運休 JR仙山線” 朝日新聞 (朝日新聞社): p18. (1994年11月28日 夕刊)
- ^ 「車内に300人閉じ込められる…停電で仙山線」『読売新聞』読売新聞社、2014年12月3日。2014年12月3日閲覧。
- ^ 山中宏之、光田宗義「JR仙山線:冷え込む列車内に8時間「何とか耐えた」」『毎日新聞』毎日新聞社、2014年12月3日。2014年12月3日閲覧。オリジナルの2014年12月4日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「雪で停電、仙山線立ち往生 300人缶詰め 山中道なく」『朝日新聞』朝日新聞社、2014年12月3日。2014年12月3日閲覧。オリジナルの2015年4月27日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「仙山線開通80周年 記念列車が出発 仙台駅などでイベント」『河北新報』朝刊2017年11月12日(ワイド東北面)
- ^ 山口達也「<仙石線全線再開>地域再生が今後の課題」『河北新報』、2015年5月31日。オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。
- ^ 景観か渋滞緩和か 仙山線踏切高架化で「東照宮隠れる」 仙台 『河北新報』2005年2月12日
- ^ “JR仙山線にデザイン電車 14日からお目見え”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1995年10月2日)
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