ポリ塩化ビニル 環境ホルモン問題に対する懸念

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ポリ塩化ビニル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/29 01:20 UTC 版)

環境ホルモン問題に対する懸念

20世紀末ごろ、いわゆる環境ホルモンへの関心が高まる中で、ポリ塩化ビニル中に含まれる可塑剤食品中などに溶け出すことで人体に与える影響が懸念されるようになった。これまで可塑剤として広く用いられていたフタル酸エステルであるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)油脂を含んだ食品中へ溶け出す可能性があり、食品が直接触れる容器包装への使用が制限されるようになった。また、玩具のうちソフトビニール人形などの「乳幼児に接触することをその本質とするおもちゃ」に対してもフタル酸エステルを含むポリ塩化ビニルの使用が制限され[4]、代替材料として熱可塑性エラストマーが用いられるようになった。

食品製造時に用いられているポリ手袋も同様の理由から問題視された。2000年6月、厚生省(現・厚生労働省)は食品製造時のポリ塩化ビニル製手袋の使用を中止するよう通達を出した。なお2003年環境省検討会において、フタル酸エステルには環境ホルモン様作用が確認されなかったことが報告された。

エネルギー問題との関連

重量比にして塩素が約半分を占めており石油消費量が小さいため、他の石油系プラスチックに比べてポリ塩化ビニルは重量あたりの二酸化炭素排出量が小さく、環境への影響が小さいプラスチックであるという見方ができる[5]。樹脂化学業界団体は「塩化ビニルは製造プロセスにおけるエネルギー投入量が他の炭化水素系樹脂と比較して少なくて済む」「石油消費量が他の炭化水素系樹脂と比較して少なくて済む」「高断熱性で省エネに貢献する」などを主張している[6]

一方で、一般的な炭化水素系樹脂と比較して化学的性質がかなり異なるため、樹脂を再生利用する際にポリ塩化ビニルが混在していると障害の原因になりやすい[7]。塩化ビニルの焼却ではダイオキシン類の生成を抑える工夫が必要になるため、高炉における還元剤として使用する場合に障害となる例や、ペットボトルの再生の障害となっている例などがある。リサイクル施設ではポリ塩化ビニルと他の樹脂とはX線の透過特性が異なる事を利用して分別している事例もある。


  1. ^ 2011年5月末時点で157.5円/kg(日経商品指数)。最も簡単な構造のポリエチレンでさえ218.0円/kgである。 - 日本経済新聞 2011年5月30日
  2. ^ 例・ヴィッツ、9代目以降のカローラシリーズ、2代目以降のプリウス等の一部のトヨタ車、および、6代目以降のミラ、3代目以降のムーヴ、9代目以降のハイゼットトラック、10代目以降のハイゼットカーゴ等、2004年12月以降に製造された一部のダイハツ車に採用。
  3. ^ 塩化ビニル環境対策協議会 ダイオキシン生成への食塩の関与、京大との共同研究で確認
  4. ^ 薬事・食品衛生審議会の答申について
  5. ^ Life Cycle Assessment of PVC and of principal competing materials (PDF) (英語)
  6. ^ President 稼ぎ頭の勉強法 落ちこぼれの勉強法 2008年8月4日号 身近な「塩ビ」で環境に貢献!実証されたその凄い「省エネ性能」 塩ビ工業・環境協会会長 菅原公一
  7. ^ [1]


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