ナガイモ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/20 21:50 UTC 版)
利用法
滋養に富み強精作用がある食材として知られ、漢方では「山薬」と称して疲労回復に役立てられた[14]。食材としては太くずんぐりして張りがあり、皮が肌色でしわが寄っていないものが良品とされる[14]。
消化酵素のアミラーゼを多く含んでおり、芋類としてはめずらしく生のままでも食べられる[15]。アミラーゼは糖質を効率よく分解する酵素で熱に弱く、芋をすりおろすことで酵素が活性化して働きが良くなるともいわれている[14]。独特の粘り成分はムチレージ(ムシレージ)で胃腸を助ける働きをする[14]。その他の栄養素としてはビタミンB1、カリウムをバランスよく含む[14]。芋類のなかでは水分とたんぱく質が多く炭水化物とエネルギーが少ない[16]。
生食
ヤマノイモと同じく長く伸びる根茎を食用にする。すり下ろして「とろろ」にしたり、細く刻んだりして生食する方法が代表的である[17]。すり下ろしたとろろは麦とろ、山かけ、とろろ蕎麦などに用いられ、お好み焼きなどの生地に焼き上がりをよくするために混ぜられることもある。またヤマノイモより水分が多く粘りは弱いため、細切りにしてサラダにするなど歯触りを活かした料理にも向き、煮物にするとほっくりした食感で味わえる[17]。エビ、イカ、マグロといった海産物との相性が良いためこれらと一緒に食べることも多い。 練り切り、かるかん、薯蕷饅頭といった和菓子の材料としても用いる。中国料理では「山芋の飴炊き」という、大学芋や関西の中華ポテトに類似した点心が作られる。
ヤマノイモ同様、むかご(葉の付け根に生える芽)も食用になる。むかごは秋の味覚として知られ、塩ゆでにしたり味噌汁や炊き込みご飯の具などに使われる[17]。
薬用
ナガイモ、あるいはヤマノイモの皮を剥いた根茎を乾燥させたものを山薬といい、生薬として利用される。日本薬局方にも収録されている生薬で、滋養強壮、止瀉、止渇作用があり、八味地黄丸(はちみじおうがん)、六味丸(ろくみがん)、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)などの漢方方剤に使われる。また粘り成分のムチンは、胃の粘膜保護にもなり胃潰瘍を予防し、コレステロールを体外に排出して、高脂血症を予防する働きも知られている[15]。近年、ナガイモやヤマイモが「レジスタントスターチ」を多く含み、便秘などを防ぐ効能が大いにあることを、NHKテレビその他のマスコミで広く取り上げられている[18][19]。
ハーブティーにも使われる。ハーブとしては英語名のチャイニーズヤムで呼ぶことが多い。
保存
芋の部分を丸ごと保存するときは、乾燥しないように新聞紙などに包み、風通しのよい冷暗所に保存する[17]。切ったものは、切り口をラップなどで包み、冷蔵庫に保存する[17]。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Dioscorea polystachya Turcz. ナガイモ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月24日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Dioscorea batatas Decne. ナガイモ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月24日閲覧。
- ^ 編:文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会 編「2 いも及びでん粉類」『日本食品標準成分表』(2015年版(七訂))、2015年12月25日。ISBN 978-4-86458-118-9 。2016年10月15日閲覧。
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- ^ 講談社編 2013, p. 103.
- ^ a b c d e 主婦の友社編 2011, p. 205.
- ^ 腸内パワーを引き出す新成分!あのネバネバ食材で便秘改善SP(ガッテン)
- ^ 炭水化物なのに太らない 秘密はレジスタントスターチ(日経Goodday 30+)
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