セヴァストポリ 歴史

セヴァストポリ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/09 01:15 UTC 版)

歴史

古代この地にはボスポロス王国の都市ケルソネソス(ケルソン)があり、6世紀に東ローマ帝国の統治下になった後も東ローマ帝国のクリミア半島における統治の拠点、ハザールキエフ大公国などとの交易拠点としてテマ(軍管区)が置かれ、12世紀のコムネノス王朝時代まで東ローマの領土であった。

12世紀後半に東ローマが衰退すると、その後はモンゴル人ジョチ・ウルス、その後裔のクリミア・ハン国などの支配下にあったが、1783年ロシア帝国クリミア半島を併合した際、一緒に組み込まれた。その後、重要な海軍基地、商業港として発展してきた。

1856年のセヴァストポリ

1853年からのクリミア戦争では、同地を拠点とする黒海艦隊シノープの海戦オスマン帝国の艦隊を撃破するなどの戦果を挙げたが、1854年にオスマン帝国と同盟を結んで参戦してきたイギリスフランスオーストリアの妨害工作により攻略目標をオデッサからセヴァストポリに変更。ロシア軍は英仏艦隊の侵入を阻止するために黒海艦隊を湾内に自沈させ、市街地全体に防塁を築いて要塞化したが、長期にわたる包囲戦の末にパーヴェル・ナヒーモフ提督やヴラジーミル・コルニーロフ提督も戦死し(セヴァストポリ包囲戦 (1854年-1855年))、1855年9月に放棄を決定。後にパリで開かれた講和会議でカルス要塞と引き換えに返還された。

第二次世界大戦時、要塞化された同地に対してドイツ軍は80cm列車砲「ドーラ」、カール自走臼砲などを用いて攻略、占領したが、その後赤軍の反撃によりセヴァストポリはソ連へ取り戻された。(セヴァストポリ包囲戦 (1941年-1942年)

ソビエト連邦の時代には、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国内のクリミア州の一部としてではなく、キエフ(1954年以前はモスクワ)の直轄下に置かれ、外国人の立ち入りを固く規制する閉鎖都市だった。

ソ連時代に、クリミア戦争第二次世界大戦での攻防戦の奮闘を讃え英雄都市の称号を与えられた。

ソビエト連邦崩壊後のセヴァストポリ軍港にはロシア連邦海軍基地とウクライナ海軍の司令部も置かれている。ソビエト連邦時代はソ連の黒海艦隊の基地であったが、ソ連邦解体後の1997年にロシア・ウクライナ間で締結された協定により、2017年まで租借、また2010年に再締結された協定によりさらに2042年まで駐留が認められることになった。ウクライナが受け取る租借料は年間9800万ドルであり、そのセヴァストポリ軍港租借料はウクライナがロシアへ払うガス料金未納分を考慮して決められている。

ロシア編入後のセヴァストポリ(2014年4月)

ロシアとウクライナの政治対立から、セヴァストポリのロシア領土編入を求める運動がしばしば同地に住むロシア人住民によって起きており、両国の対立の火種となってきた。2010年以降のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ政権では対立は沈静化していた。しかし2014年2月にヤヌコーヴィチ政権が崩壊し、親欧米派の暫定政権が樹立されたことにロシアは反発。2014年3月11日、ロシア軍の占領下で実施された同月16日の住民投票においてクリミアのロシアへの編入が賛成多数を得た場合、ウクライナよりいったん独立する決議をクリミア自治共和国とともに採択した(クリミア・セヴァストポリ独立宣言[2]。16日の投票では賛成票が全体の9割を超え(2014年クリミア住民投票)、クリミア自治共和国とともに主権宣言した上で(クリミア共和国)、3月18日にロシア連邦に編入される条約をロシア連邦と締結した(ロシアによるクリミアの併合)。この編入により、セヴァストポリはロシア連邦の連邦市という位置付けになったが、ウクライナを始めとする大多数の国は認めていないため、国際的にはウクライナの特別市のままである。2014年4月1日には市政のトップが市長から知事へと改められた[3]

2022年ロシアのウクライナ侵攻は、ロシアに併合された状態で迎えた。2023年に入るとセヴァストポリは、ウクライナからドローンなどの攻撃を受けるようになり[4]、同年8月20日、ロシア黒海艦隊の司令部がドローンによる攻撃を受けた[5]ほか、同年9月13日には、巡航ミサイルやドローンがロシア海軍の艦船修理工場に着弾。潜水艦と大型揚陸艦が損傷する被害を受けた[6][7]。同年9月20日、ウクライナは黒海艦隊司令部をドローンで攻撃したことを発表した[8]


  1. ^ Citypopulation.de/Sevastopol
  2. ^ “クリミア議会、ウクライナからの独立を決議”. AFPBB News (フランス通信社). (2014年3月11日). https://www.afpbb.com/articles/-/3010151 2014年3月12日閲覧。 
  3. ^ rulers.org - Ukraine”. rulers.org. 2022年2月9日閲覧。
  4. ^ クリミア半島セバストポリで大規模火災、ドローン攻撃か”. CNN (2023年4月29日). 2023年9月20日閲覧。
  5. ^ クリミア・セヴァストポリでドローン攻撃 ロシア黒海艦隊の司令部”. BBC NEWS JAPAN (2023年8月21日). 2023年9月13日閲覧。
  6. ^ ウクライナ、クリミアに大規模攻撃 露軍艦艇2隻損傷”. 産経新聞 (2023年9月13日). 2023年9月13日閲覧。
  7. ^ ウクライナの特殊弾頭、ロシア潜水艦を内側から破壊”. Forbes (2023年9月21日). 2023年9月21日閲覧。
  8. ^ ウクライナ軍、セバストポリのロシア黒海艦隊司令部を攻撃”. ロイター (2023年9月21日). 2023年9月20日閲覧。
  9. ^ ウクライナ国立統計委員会 (2001年12月5日). “2001年ウクライナ国勢調査。ウクライナの総人口” (ウクライナ語). 2011年12月14日閲覧。
  10. ^ ウクライナ国立統計委員会 (2001年12月5日). “2001年ウクライナ国勢調査。ウクライナの都市人口・農村人口” (ウクライナ語). 2011年12月14日閲覧。
  11. ^ ウクライナ国立統計委員会 (2001年12月5日). “2001年ウクライナ国勢調査。ウクライナの性別人口” (ウクライナ語). 2011年12月14日閲覧。
  12. ^ ウクライナ国立統計委員会 (2001年12月5日). “2001年ウクライナ国勢調査。地域別民族構成” (ウクライナ語). 2011年12月14日閲覧。






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