モンポウ:ひそやかな音楽 第1巻
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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モンポウ:ひそやかな音楽 第1巻 | Musica Callada | 作曲年: 1959年 出版年: 1959年 初版出版地/出版社: Salabert |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | Book I No.1 Angelico | 2分00秒 | No Image |
2 | Book I No.2 Lento | 2分00秒 | No Image |
3 | Book I No.3 Placide | 1分30秒 | No Image |
4 | Book I No.4 Afflitto e penoso | 3分30秒 | No Image |
5 | Book I No.5 Quarter Note = 54 | 2分00秒 | No Image |
6 | Book I No.6 Lento | 2分30秒 | No Image |
7 | Book I No.7 Lento | 3分00秒 | No Image |
8 | Book I No.8 Semplice | 1分00秒 | No Image |
9 | Book I No.9 Lento | 3分00秒 | No Image |
作品解説
1953年に母を失い、さらに友人の死をうけて、モンポウはこれまで以上に内面的な音楽を作曲するようになった。《ひそやかな音楽》も、その時期に作曲された作品である。スペイン語の“Musica Callada”は、《沈黙の音楽》と訳されることもある。1巻に付された文章の中で、詩人サン・ファン・デ・ラ・クルスの詩の“La Musica Callada, la Soledad Sonora(鳴り響く孤独、沈黙する音楽)”から引用された言葉であることが記されている。
この曲集は、1959年~1967年にわたって作曲された。第1巻~第4巻にわたり、それぞれ9曲、7曲、5曲、7曲ずつ、いずれも2ページ以内の小曲がおさめられている。実際に、演奏会向けにかかれた曲集ではなく、独り言のように書かれているものが多い。第4巻のみ、ラローチャに献呈された。
I.旋律は、天使の歌声のように清らかに、静かに歌われる。拍子、小節線は記されていないが、息の長さはおよそ4分音符7拍、8拍分のまとまりの中でかかれている。
II.4分の3拍子、レント。不協和音が立体的に重ねられている。不吉な響きの中ににほんの一瞬垣間見える協和音の柔らかい音色が印象的である。
III.4分の3拍子。穏やかで優しい右手の旋律に対して、左手の音が不協和にぶつけられている。緊張と解決が波のように繰り返される。
IV.4分の3拍子。非常に単純なリズムが繰り返され、和声が微妙に変化していく。その中に悲しみや苦しみがつまっているようだ。
V.4分の3拍子。終始一貫して8分音符がうちならされる。それらの執拗な音は、旋律の表情にあわせて音量や奏する間隔を微妙に変化させながら音楽を支える。
VI.4分の4拍子、モルト・カンタービレ。不協和に音を連ねていく不安定な旋律は、安らぎを求めて彷徨う心の声のようにきこえてくる。
VII.4分の4拍子、レント。冒頭、低音の深いところで左手がへ音を中心にした動きをみせ、つづいて祈るような旋律が歌われていく。拍子の変化が多いので、それぞれの拍子感を感じて奏する。
VIII.4分の3拍子、左手の和音の上で右手の旋律が左右に揺れるように歌われていく。40秒程度の非常に短い一曲。音の動きがなくなるところでは、のばしている音の響きをしっかりときくように注意する。
IX.4分の4拍子、レント。右手の音の合間をぬうようにして左手が音を落としていく。重なる音の響きを注意深くききながら奏する。ポコ・ピウ・モッソでは、雰囲気を一変させて、高音での鋭く輝くような音が印象的である。
モンポウ:ひそやかな音楽 第2巻
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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モンポウ:ひそやかな音楽 第2巻 | Musica Callada | 作曲年: 1962年 出版年: 1962年 初版出版地/出版社: Salabert |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | Book II No.10 Lento - cantabile | 1分30秒 | No Image |
2 | Book II No.11 Allegretto | 1分00秒 | No Image |
3 | Book II No.12 Lento | 3分00秒 | No Image |
4 | Book II No.13 Tranquillo - très calme | 2分00秒 | No Image |
5 | Book II No.14 Severo - sérieux | 1分30秒 | No Image |
6 | Book II No.15 Lento - plaintif | 2分00秒 | No Image |
7 | Book II No.16 Calme | 2分00秒 | No Image |
作品解説
1953年に母を失い、さらに友人の死をうけて、モンポウはこれまで以上に内面的な音楽を作曲するようになった。《ひそやかな音楽》も、その時期に作曲された作品である。スペイン語の“Musica Callada”は、《沈黙の音楽》と訳されることもある。1巻に付された文章の中で、詩人サン・ファン・デ・ラ・クルスの詩の“La Musica Callada, la Soledad Sonora(鳴り響く孤独、沈黙する音楽)”から引用された言葉であることが記されている。
この曲集は、1959年~1967年にわたって作曲された。第1巻~第4巻にわたり、それぞれ9曲、7曲、5曲、7曲ずつ、いずれも2ページ以内の小曲がおさめられている。実際に、演奏会向けにかかれた曲集ではなく、独り言のように書かれているものが多い。第4巻のみ、ラローチャに献呈された。
X.4分の2拍子、レント―カンタービレ。調性は感じられない。ほとんど4分音符と8分音符の単純な構成で、のっそりと歩むように奏される。
XI.4分の2拍子。アレグレット。舞曲のような勢いとリズムをもった曲。挿入的に奏されるレントの部分は、明るさやテンポの面で前後と対照を成している。スラーによるまとまりを意識して。
XII.4分の2拍子。深く暗く、鐘のように響く和音が印象的。六連音符や、pppでみられる分散和音が織り成す響きは幻想的で美しい。
XIII.2分の2拍子。トランクイロ-トレ・カルム。郷愁を感じさせるような美しく穏やかな旋律、その下につけられている鐘のような和音は不協和だが、暖かく響きわたる。つづくエネルジーコの部分はそんな空気を一気に断ち切り、かき乱すような激しさで奏される。
XIV.4分の2拍子、セヴェロ-セリュー。冒頭から、1つの長いフレーズに対して短い2つのフレーズがこだまのように応える形で音楽がつくられている。不協和でありながらもffで響き渡る和音は、気持ちがいいほど堂々としている。この曲ではあまりテンポを揺らさないようにしたい。
XV.4分の2拍子、レント-プレンティフ。終始一貫してシンコペーションの形で続く伴奏にのせて、二つの声部で問いかけるような旋律が何度も繰り返される。嘆くように。
XVI.4分の2拍子、カルム。6連音符が循環するように繰り返され、波紋のような響きをつくっていく。中間部はモルト・カンタービレ・ポコ・レント。ここでは音楽を多声的にきくことに神経を集中させるべきであろう。最後はppppで消えるように曲を閉じる。
モンポウ:ひそやかな音楽 第3巻
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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モンポウ:ひそやかな音楽 第3巻 | Musica Callada | 作曲年: 1965年 出版年: 1966年 初版出版地/出版社: Salabert |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | Book III No.17 Lento | 3分00秒 | No Image |
2 | Book III No.18 Luminoso | 2分00秒 | No Image |
3 | Book III No.19 Tranquillo | 2分30秒 | No Image |
4 | Book III No.20 Calme | 3分30秒 | No Image |
5 | Book III No.21 Lento | 3分00秒 | No Image |
作品解説
1953年に母を失い、さらに友人の死をうけて、モンポウはこれまで以上に内面的な音楽を作曲するようになった。《ひそやかな音楽》も、その時期に作曲された作品である。スペイン語の“Musica Callada”は、《沈黙の音楽》と訳されることもある。1巻に付された文章の中で、詩人サン・ファン・デ・ラ・クルスの詩の“La Musica Callada, la Soledad Sonora(鳴り響く孤独、沈黙する音楽)”から引用された言葉であることが記されている。
この曲集は、1959年~1967年にわたって作曲された。第1巻~第4巻にわたり、それぞれ9曲、7曲、5曲、7曲ずつ、いずれも2ページ以内の小曲がおさめられている。実際に、演奏会向けにかかれた曲集ではなく、独り言のように書かれているものが多い。第4巻のみ、ラローチャに献呈された。
XVII.4分の4拍子、レント。執拗に同音でならされるオクターブにはじまり、重苦しい足取りで同じところを彷徨う旋律。そこに希望の光はみあたらない。
XVIII.4分の3拍子、ルミノーソ。光を帯びた3連音符が暗闇の中で何度もこだまする。強弱の変化に気を配ることはもちろん、音を重ねていくうえで注意深い耳が必要である。
XIX.4分の3拍子、トランクィロ。重苦しい雰囲気が続く、第三曲。細かいテンポ設定に注意する。バスの音を奏する際、のばしている上の和音の響きにくびれができないように。
XX.4分の2拍子、カルム。雰囲気は柔らかく穏やかだがやはり常に不安定で、心は休まらない。パーツは細切れだが、大きなまとまりの中でその部分が停滞している部分なのか、進んでいる部分なのかを意識して演奏したい。
XXI.4分4拍子、レント。静けさの中できらめく不協和、低音で何度もうちならされる鐘の音、神秘的な4度、5度の和音など。音のもつ性格的には第2曲と似通ったところがあるだろう。終始重く沈んだような雰囲気が貫かれている。
モンポウ:ひそやかな音楽 第4巻
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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モンポウ:ひそやかな音楽 第4巻 | Musica Callada | 作曲年: 1967年 出版年: 1974年 初版出版地/出版社: Salabert |
楽章・曲名 | 演奏時間 | 譜例 | |
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1 | Book IV No.22 Molto lento e tranquillo | 2分30秒 | No Image |
2 | Book IV No.23 Calme, avec clartè | 2分30秒 | No Image |
3 | Book IV No.24 Moderato | 2分00秒 | No Image |
4 | Book IV No.25 Quarter Note = 100 | 3分00秒 | No Image |
5 | Book IV No.26 Lento | 3分30秒 | No Image |
6 | Book IV No.27 Lento molto | 3分30秒 | No Image |
7 | Book IV No.28 Lento | 4分30秒 | No Image |
作品解説
1953年に母を失い、さらに友人の死をうけて、モンポウはこれまで以上に内面的な音楽を作曲するようになった。《ひそやかな音楽》も、その時期に作曲された作品である。スペイン語の“Musica Callada”は、《沈黙の音楽》と訳されることもある。1巻に付された文章の中で、詩人サン・ファン・デ・ラ・クルスの詩の“La Musica Callada, la Soledad Sonora(鳴り響く孤独、沈黙する音楽)”から引用された言葉であることが記されている。
この曲集は、1959年~1967年にわたって作曲された。第1巻~第4巻にわたり、それぞれ9曲、7曲、5曲、7曲ずつ、いずれも2ページ以内の小曲がおさめられている。実際に、演奏会向けにかかれた曲集ではなく、独り言のように書かれているものが多い。第4巻のみ、ラローチャに献呈された。
XXII.4分の2拍子、モルト・レント・エ・トランクィロ。悲しげに下降する左手の上を、右手で同音が静かにうちならされる。終始小雨がしとしととふりつづいているような浮かない雰囲気が曲を支配している。
XXIII.4分の2拍子、カルム・アベック・クラルテ。冒頭では上下を繰り返す音の中で変わっていく音、変化していない音をそれぞれ意識して奏する。ポコ・ピウ・モッソではこれまで停滞気味だった
音楽に流れが加わっている。表情豊かに。
XXIV.4分の2拍子、モデラート。伴奏では終始一貫して8分音符に刻まれているこの曲だが、旋律において、フレーズの長さを細かく変化させながら音楽が展開している点に注意したい。3巻からこれまで重苦しい雰囲気が延々と続いていたが、この曲できかれる和声的解決の部分は非常に暖かい光につつまれている。
XXV.4分の2拍子。音一つ一つの響きを生かしながら色をつけていくような曲である。ペダリングの指示も細かく指示されているが、指遣いにおいても、少し前の音の余韻を残すようなタッチで音を響かせていくとよいだろう。
XXVI.4分の2拍子、レント。循環するような音形で歌われる内的な一曲。この曲においても遠近法的な手法が効果的に用いられている。旋律とは外れた場所で鳴りつづけている長い音符を常に同じ位置で聞き続けられるように注意したい。
XXVII.レント・モルト。4分の2拍子と4分の3拍子を行き来するが、小節線は部分的にしかかかれていない。もやがかったような雰囲気の中で、非常に繊細な音の揺れを表現しなければならず、多くの集中力を必要とする。
XXVIII.4分の4拍子、レント。他の小品と比較して、調性がはっきりしており、ききやすい。シンプルでピュアな音楽をもって最大限の表現を追及するモンポウの姿勢を改めて感じさせる。曲集すべてのしめくくりにふさわしく、荘厳なたたずまいをもった一曲である。
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