かいようむさんそ‐じへん〔カイヤウムサンソ‐〕【海洋無酸素事変】
海洋無酸素事変
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/17 09:24 UTC 版)
海洋無酸素事変(かいようむさんそじへん、Oceanic Anoxic Events、OAEs)は、海水中の酸素欠乏状態(無酸素または貧酸素)が広範囲に拡大し、海洋環境の変化を引き起こす現象。海洋低酸素事変(かいようていさんそじへん)とも呼ばれる。
- ^ 地球内部変動研究センター (IFREE) 地球古環境変動研究プログラム
- ^ a b c Richard Smith "Crude - the incredible journey of oil", Australian Broadcasting Corporation, 2007. 日本語版:『石油 1億6千万年の旅』(前編・後編)、NHK。
- ^ Yoji Nakajima et al.(2003)Distribution of chloropigments in suspended particle matter and benthic microbial mat of a meromictic lake, Kaiike, Japan. Environ. Microbiol. 5: 1103-1110., 中島陽司(2004) 色素化合物の組成および化合物個別安定同位体比を用いた還元的水界生態系における光合成細菌の追跡
- ^ 平野弘道『絶滅古生物学』、岩波書店、2006年、ISBN 4-00-006273-5。
- ^ a b 石浜佐栄子『ジュラ紀前期の海洋無酸素事変の研究に関する進展と動向』、神奈川県立生命の星・地球博物館 研究報告 自然科学36号、2007年3月(本文中に引用・参考文献あり)。
- ^ 西弘嗣, 北里洋, 平野弘道 ほか「特集 白亜紀海洋無酸素事変の解明」『化石』 74巻 2003年9月 p.18-19, 日本古生物学会, doi:10.14825/kaseki.74.0_18。
- 1 海洋無酸素事変とは
- 2 海洋無酸素事変の概要
- 3 化石燃料との相関
海洋無酸素事変
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/04 05:26 UTC 版)
中央太平洋南部のマニヒキ海台に分布するバレミアン階からアプチアン階の地層から産出した緑黒色ワックス質火山砕屑岩は全有機炭素が28.7%に達する。1976年当初はこの有機炭素の量は海洋循環の弱化によるものであると説明されていたが、世界の海洋で酸素極小帯が卓越した結果、すなわち海洋無酸素事変の結果であると考えられるようになった。 前期アプチアンの後期(約1億2000万年前)にはOAE1aと呼ばれる海洋無酸素事変が発生し、放散虫は種レベルで41%、日本近海のアンモナイトは完全に絶滅した。火山活動の直後に約50 - 100万年ほどかけて黒色頁岩が全球的に、特に東太平洋熱帯域・南太平洋・南北大西洋・ヨーロッパ大陸海・南極海に堆積した。黒色頁岩に海生プランクトン起源と見られるケロジェンが確認されていることから、気候変動や海進により淡水や降水が海洋に流れ込んで熱塩循環を停滞させたこと、淡水に含まれる栄養塩により生物生産が活発化して酸素が大量に消費されたことが原因とされる。OAE1aの直前にはナノプランクトンの絶滅イベントが起こった。海水準変動に伴うメタンハイドレートの分解が起こり、軽い炭素13を含むメタンガスが待機中に放出されてδ13C値は一時的に負にシフトした。メタンは温室効果ガスの一種であるが、酸素極小帯が卓越した状況で硝酸が枯渇し、窒素固定が可能であるシアノバクテリアが繁栄したため、その光合成により同じく温室効果ガスである二酸化炭素が大きく消費された。ハプト藻や渦鞭毛藻による生物生産が活発であったことも手伝い、OAE1aの終期には大気中の二酸化炭素が最大で10 - 15%減少し、表層海水温は30 - 32℃から27℃まで低下した。 さらに、アプチアンからアルビアンをまたぐ時期(1億1450万 - 1億821万年前)にはメキシコなど当時のテチス海の各地で黒色頁岩が堆積しており、OAE1bと呼ばれる別の海洋無酸素事変が生じたとされる。詳細はアルビアンの記事を参照。
※この「海洋無酸素事変」の解説は、「アプチアン」の解説の一部です。
「海洋無酸素事変」を含む「アプチアン」の記事については、「アプチアン」の概要を参照ください。
海洋無酸素事変
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 11:50 UTC 版)
アプチアンからアルビアンにかけて、OAE1bと呼ばれる海洋無酸素事変が発生していたと考えられている。メキシコなど当時のテチス海にあたる各地で不連続な黒色頁岩が産出しており、これは海洋中の酸素が少なかったために堆積した有機物が十分分解されなかった根拠となる。黒色頁岩の堆積期間は北大西洋では約22万年ないし約60万年、テチス海では約21万年と見積られている。放散虫は種レベルで42%絶滅し、日本近海のアンモナイトは種レベルで70%絶滅した。原因は生物の一次生産の増大のほか、海中の熱塩成層の強化(海洋循環の停滞)や河川水・降水量の増加が指摘されている。黒色頁岩の堆積は古い順にジャコブイベント、パキエイベント、ルオンアールイベントと呼ばれ、ルオンアールイベントは前者が原因とみられる。パキエイベントは前者と後者の両方の学説が存在しており、前者の根拠は海成ケロジェン、後者の根拠はδ18O値勾配の急激な増加である。 後期アルビアンにはOAE1cと呼ばれる海洋無酸素事変が生じ、放散虫への影響は小さかったものの、日本近海ではアンモナイトの90%が絶滅するという被害をもたらした。西部内陸海路・テチス海西部・南極海で黒色頁岩の堆積が見られ、イタリア中央部やオーストラリアなどから陸現生のケロジェンが確認されている。このことから、大量の淡水が大陸から供給されたために海水の垂直循環が停止し、海底の有機物が保存されたと推測されている。また、この堆積物は歳差運動による気候の周期的な変化も反映している。 最後期アルビアンにはOAE1dと呼ばれる海洋無酸素事変が生じた。前期白亜紀において頂点捕食者の地位にあったクロノサウルスがこの海洋無酸素事変で絶滅し、当時の放散虫は種レベルで約28%が絶滅した。黒色頁岩はテチス海域の広範囲と太平洋熱帯域に分布し、頁岩に含まれるケロジェンが海生プランクトンに起因するものであることから、海水の垂直混合の強化と温暖化による生物生産の向上が原因と考えられている。 また、アルビアンの間にはインド洋南部ケルグエレン海台の火山活動が二度発生していた。
※この「海洋無酸素事変」の解説は、「アルビアン」の解説の一部です。
「海洋無酸素事変」を含む「アルビアン」の記事については、「アルビアン」の概要を参照ください。
- 海洋無酸素事変のページへのリンク