指定席車両の改札
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 05:02 UTC 版)
座席指定制を採用する特急・快速・普通列車では指定券の確認のため、車内改札が行なわれるのが原則である。ただし、乗務員の携帯端末に座席の予約状況を送信するシステムの導入が進んでからは、その状況は変わりつつある。 JR東日本では、「ひたち」「あずさ」「成田エクスプレス」などの首都圏近郊の特急列車の多くでは、あらかじめ座席指定券(指定席特急券・指定席グリーン券)を購入した段階でその情報が乗務員の持つ携帯端末に送られ(DoPa網を使用)、普通車及びグリーン車の指定席車両の車内改札は行わない方向に進めている。乗務員は車内改札の替わりに携帯端末の指定席予約情報と乗客の着席状況を照らし合わせて、一致していれば正規の乗客であると推定して通過する。指定券が発行されていない席に乗客が着席している場合などに限って車内改札を行う。但し東海旅客鉄道(JR東海)から直通する篠ノ井線特急「ワイドビューしなの」は情報端末が対応していない為、無条件で車内改札を行う。全車指定席の特急「スーパービュー踊り子」においてはドアカットで車両の入口を限定したうえで係員が指定席特急券を確認している。近年投入された特急車両では、普通列車グリーン車と同様のランプが天井に取り付けられており、指定席発売状況に応じてランプの色が変化するようになっている。 同様に、近畿日本鉄道の特急、京成電鉄の「スカイライナー」、東武鉄道本線系統、小田急ロマンスカー、南海電気鉄道、名古屋鉄道 の特急等でも指定席の予約状況が車掌の携帯端末に送信され、予約されていない席に着席している客に対してのみ車内改札を行うなど簡略化している。「指定券を持っていないのが一発で分かる」のはこのためである。乗客からは「睡眠を邪魔されない」など概ね好評であるため、車内改札を省略又は簡略化する動きは広まっている。 北海道旅客鉄道(JR北海道)のグリーン車の一部やuシート、JR九州の885系、787系で運用される特急列車のように、座席にチケットホルダーが装備されており、そこに指定券を入れることで車掌がチェックしている所もある。 四国旅客鉄道(JR四国)の特急列車では、通常の車内改札のほか、途中駅からの乗客の改札も兼ねて、終点の手前の区間(例、児島 - 岡山間、坂出 - 高松間、今治 - 伊予北条 - 松山間、土佐山田 - 後免 - 高知間)で自由席の乗客に対して自由席特急券を回収する。また、一部の特急列車では、一定の条件を満たした指定席の乗客には車内改札を省略している。 山形新幹線・秋田新幹線も含む新幹線では、自動改札機に投入された指定席特急券から指定席の座席情報を読み取る機能を付けており、改札機に特急券が投入されるとその座席情報が乗務員の携帯端末に伝達されるようになっている。JR東日本、西日本旅客鉄道(JR西日本)、九州旅客鉄道(JR九州)では早くから、その情報を元に車内改札を省略してきたが、長らく東海旅客鉄道(JR東海)だけは車内改札を続けてきた。 東海道・山陽新幹線では、現在は指定席車両に限り車内改札を廃止した(自由席車両では継続)が、以前は東海旅客鉄道(JR東海)と西日本旅客鉄道(JR西日本)とで対応が分かれていた。JR西日本が管轄する山陽新幹線では、山陽新幹線内で完結する列車と九州新幹線に直通する列車(ひかりレールスターやみずほなど)に限り車内改札を省略していたが、JR東海が管轄する東海道新幹線および同線に乗り入れる山陽新幹線の列車では、全車両を対象に2016年3月25日まで車内改札が行われていた。 JR東海でもJR東日本・JR西日本と同様に携帯端末は導入しており、その携帯端末による確認も実施してはいたが、車内改札の完全廃止に否定的であった。車掌は携帯端末の他に各車両の着席状況を記したカードを所持しており、チェックのない席に座っている乗客に改札し、終了後、座席番号を確認してどの駅まで乗るのか書き記した。 JR東海が車内改札を継続してきたのは、路線・列車の利用者層の性格にも起因している。東海道新幹線は東名阪3大都市圏の移動を旅客流動のメインとしており、以下の理由から車内改札が全廃できなかった要因とされる。 乗客の約7割はビジネス目的でその数が圧倒的に多く、また乗客の入れ替わりが頻繁である。さらに運行間隔も短いため、指定席券を持っていても予定よりも早く駅に到着したら列車変更の手続きを行わずに先行する列車に乗車するなど、指定した列車以外に乗車して乗車後に指定券を買うつもりで空いた指定席に座ったり、また予定の列車に乗っても座席が空いていれば他の座席に移動(窓側・通路側の移動、あるいは隣席に他の乗客がいない席へ等)したりする等の行為が多く、車内改札をしなければ指定席料金を取り逃してしまう。 フルムーンやジャパンレールパスなどの「のぞみ」が利用できない企画乗車券で「のぞみ」に誤乗する乗客が多く、その乗客から乗車券・特急券の料金等を収受する必要がある。 テロ対策で車内巡回の側面もある。 だが、エクスプレス予約の利用者が増えたことやシステムの改良により車内改札の省略が可能となったことから、JR東海でも2016年3月26日のダイヤ改正から指定席車両に限り原則として車内改札を廃止する意向を示し、予定通り指定席車両に限り原則として廃止された。 この車内改札の省略事例で進んだものとしては、小田急電鉄の特急ロマンスカーでの携帯電話によるインターネットサービスを利用し特急券をチケットレス化した「ロマンスカー@クラブ」が挙げられる。詳細は当該項目を参照されたい。また、近畿日本鉄道の特急は「近鉄特急チケットレスサービス」、南海電気鉄道の特急は「南海鉄道倶楽部」というインターネット予約サービスを行い、その後名古屋鉄道 など他社でも広がっている。
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