ゆすり【揺すり】
ゆすり
『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』(河竹黙阿弥)3幕目「雪の下浜松屋の場」 武家娘(=実は弁天小僧)と供の若党(=南郷力丸)が、呉服屋浜松屋を訪れる。娘は緋鹿子の布(きれ)を懐に入れ、万引きするようなそぶりを見せる。店の男たちが見咎め、娘を袋叩きにして額を傷つける。娘は「これは他店で買った品」と言い、山形屋の商標を示す。店の者が過ちを詫びるが、若党は「すまぬと思うなら、百両出せ」と要求する。
『お染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)』(鶴屋南北)2幕目「瓦町油屋の場」 百姓久作が、油屋の番頭と喧嘩をして、額に傷を負った。それを聞いた喜兵衛・お六夫婦は、丁稚久太の死体(*→〔取り合わせ〕4)を久作のように見せかけ、「久作は、喧嘩の怪我がもとで死んでしまった。どうしてくれる」と言って油屋へ乗り込み、百両をゆすり取ろうとする。ところが、死体のはずの丁稚久太は息を吹き返し、さらに、百姓久作本人が油屋へやって来たので、喜兵衛・お六のゆすりは失敗した。
『盲長屋梅加賀鳶(めくらながやうめかがとび)』(河竹黙阿弥)3幕目「竹町質見世の場」 質屋伊勢屋の主人与兵衛は、小間遣(こまづかい)お朝の身の上話を聞いて憐れみ、5両を与える。お朝の叔父・目明き按摩の道玄が伊勢屋へ乗り込み、「与兵衛が5両という大金を与えたのは、14歳のお朝を毎晩抱いて寝たからだろう」と言いがかりをつけて、百両をゆすり取ろうとする。そこへ鳶の頭(かしら)松蔵が現れ、「正月15日の夜、按摩が人を殺す現場を見たぜ」と言うと、身に覚えのある道玄は、すごすご帰って行く→〔動物教導〕2。
★2.犯罪やスキャンダルに関わりのある人物を脅して、金品を要求する。
『黒革の手帖』(松本清張) 産婦人科の院長・楢林は、堕胎手術等で得た所得を隠すために、架空名義および無記名の預金口座を、複数の銀行の支店に分散して20以上も作っていた。預金総額は、3億2千5百万円にのぼった。銀座の小さなバー「カルネ」のママ原口元子は、楢林の裏預金のリストを手に入れ、「これを公けにされたくなければ、『カルネ』のために5千万円出してほしい」と要求した〔*元子は、銀座で一流の大きなバーのママになるのが夢だった。しかし最後には、金も「カルネ」も失った〕。
『犯人は二人』(ドイル) ミルヴァートンは、貴族や富裕層の人士が愛人にあてた手紙を手に入れ、それをもとに大金をゆすり取ることを、長年の稼業としてきた。ホームズとワトソンは、ある依頼人を救うために、夜、ミルヴァートンの屋敷へ忍び込み、ゆすりのネタの手紙を盗み出そうとする。ところがその同じ夜、かつてミルヴァートンによって生活を破滅させられた女性が訪れ、ホームズたちが隠れて見ている前で、ミルヴァートンを射殺して去って行った。
『恐喝(ゆすり)』(ヒッチコック) ある夜、雑貨店の娘アリスは殺人を犯し(*→〔濡れ衣〕3b)、現場に手袋を忘れた。アリスの恋人の刑事フランクが手袋の片方を拾い、心配して、翌朝アリスの店に来る。そこへ、もう片方を拾った男が訪れ、「私が拾って良かった。こういう場合、金をせびる者がいる。私にはできない」と言いつつ、店の高級葉巻を要求し、アリスに朝食の用意をさせ、フランクから何枚かの紙幣を受け取る。
*裸身を撮影した写真を示して、金をゆすり取る→〔ホテル〕5の『影男』(江戸川乱歩)、〔唇〕2bの『悪魔の百唇譜』(横溝正史)。
『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』3幕目「源氏店妾宅の場」 仲間の蝙蝠安が「小遣い稼ぎに、和泉屋多左衛門の妾の家へ行く」というので、与三郎もついて行く。蝙蝠安は妾をゆすり、一分銀をもらって満足し、帰ろうとする。与三郎は妾の顔を見て、それがかつての愛人お富だったので驚く。彼はお富と関係を持ったゆえに、全身34ヵ所を斬られたのだった。与三郎は「これじゃあ、一分(いちぶ)じゃ帰(けえ)られねえ」と、ほおかぶりを取って顔を見せ、「お富。お主ゃ俺を見忘れたか」と言う。
『老後の仕事』(星新一『ボンボンと悪夢』) 55歳の「私」はリスクの多い密輸業から足を洗い、今後は恐喝をして、ささやかな定収を得たいと思う。「私」は、恐喝物件を売買する男と接触し、恐喝見込み金額・安全性などを考慮して、1つの物件を買い取る。渡された封筒を開け、中の書類をのぞいた「私」は驚愕する。恐喝対象は、長年連れ添った「私」の妻。恐喝理由は、「子供が浮気の結果であることを、夫に隠しているから」。
揺
恐喝罪
ゆすり
「ゆすり」の例文・使い方・用例・文例
- 暴力団はその金持ちから莫大な金をゆすり取った。
- 彼は彼女から多額の金をゆすり取った。
- 保証金をゆすり取る.
- 彼は時々ゆすりに来る
- ゆすり騙りもしかねない奴だ
- 強請{ゆすり}やら騙{かた}りやらでひとかどの身代をこしらえた
- あれはゆすりたかりくらいはしかねない男だ
- 彼は不正とゆすりの容疑で拘留された
- (暴力で脅かすなどして)金をゆすり取るような重罪行為
- 信用を傷つけるような情報をもらすと脅かして、金をゆすり取ること
- 暴力で脅かされてギャングにゆすり取られる金
- (恐喝などで)金をゆすり取ること
- ゆすり屋集団で、もうけた金を集めたり分配したりする担当の者
- 悪い情報を流すと脅して、人から金をゆすり取る犯罪者
- 会社にゆすりたかりをする常習者
- 物をゆすり動かす
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