This Manとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > This Manの意味・解説 

This Man

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/29 04:22 UTC 版)

This Man(ディス マン)は、イタリア人のマーケティング専門家・社会学者のアンドレア・ナテッラ (Andrea Natella) がゲリラ・マーケティングの一環として考案した都市伝説である。2008年に立ち上げられたEver Dreamed This Man?というウェブサイトが初出で、2009年10月頃から報道やインターネットユーザの注目を集め始めた。This Manは、2千人を超える世界中の人々の夢の中に繰り返し現れるものの、現実では決して姿を現さないとされる謎の人物と語られる。2010年にナテッラはThis Manがゲリラ・マーケティングの一環だったことを認めた。

映画や『X-ファイル』、『世にも奇妙な物語』といったテレビ番組で取り上げられ、『週刊少年マガジン』でThis Manを元にした漫画が連載された。

虚構の筋書き

ナテッラによると、ThisMan.orgにはThis Manの風貌をアンドルー・ロイド・ウェバー (左) やアブドルファッターフ・アッ=シーシー (右) といった実在の人物と比較する電子メールが送られたという。

This Manの初出であるEver Dreamed This Man? (ドメインはThisMan.org) の説明では、This Manを最初に描いたのはニューヨークの著名な精神科医 (ウェブサイトでは具体的に誰であるかは言及されない) であるとされる。

2006年1月に、夢でThis Manを見続けていると訴える女性患者を診察した際に描いたという[1]。数日後、ある男性患者がその絵を見て、自分も夢で見たことがあると語った。どちらの患者も現実ではThis Manに会ったことがないと述べた。その後、精神科医が4人の同業者にこの絵を送ったところ、彼らの患者たちもその男性を夢で見たことがあった[1]

後に、ロサンゼルスベルリンサンパウロテヘラン北京ローマバルセロナストックホルムパリニューデリーモスクワといった世界中の主要都市で2000名を超える人々が夢でこの人物を見たことがあると訴えた[1]。夢の内容はロマンチックなものや性的なもの、恐ろしいものと様々で、一緒に空を飛んだというものもあれば、何もせずに見つめてきたというものもある[2]

Vice英語版誌でThis Manを事実として特集する記事が掲載された。その記事ではナテッラのインタビューが載っており、2008年の冬、最初に夢でThis Manを見て、その際にThis Manに誘われてその人物についての情報を求めるウェブサイトを立ち上げたと語った[3]。This Manの似顔絵を用意したのも自分であり、携帯端末アプリケーションのUltimate Flash Faceを用いて作成したと述べている[3]

実在の人物でThis Manと似た容姿を持つ人物は特定されていない。夢でThis Manを見たことがある人と無関係であるが、This Manを夢に見たことがある人がいるとされる[4]。また、This Manの声も判明していないとされる。これについては、夢では視覚情報と比べると音声は記憶に残りにくいことや、This Manは滅多に夢の中で話さないことが理由に挙げられている[3]。ただし、ナテッラはThis Manの外見をThe Man from Another Place英語版The Dummy英語版といったフィクションの登場人物、アンドルー・ロイド・ウェバーアブドルファッターフ・アッ=シーシーといった実在の著名人と比較する手紙や電子メールを受け取ったと主張している[3]。また、Arud Kannan Ayyaというインド人の導師など、自身がThis Manであると主張する人物もいたと語っている[3]

ThisMan.orgではThis Manについて下記の5つの説を提示している[4]

  • This Manはカール・ユングの学説であり、無関係の人々が共通で見るという無意識の元型イメージの1つである。
  • This Manは神が顕現した存在である。
  • 企業が人々に精神的な条件付けを施してThis Manの夢を見せている。
  • 単にThis Manを見た人の話を聞いた人がその夢を見ただけである。
  • 夢の中で人の顔を覚えるのは困難であるため、自分が見た夢を思い出そうとしてThis Manの似顔絵を思い浮かべてしまう。

知名度

This Manは2009年にインターネットユーザや報道からの注目を集め始めた[5][6]。その年の10月になってからThis Manのウェブサイトへのアクセスが急増した[7]。短期間のうちに200万以上のアクセスを記録し、1万を超える電子メールが送られ、This Manを夢に見たという体験談や、This Manに似た人の写真が寄せられた[8]。2009年10月12日にコメディアンのTim Heidecker英語版TwitterでThis Manについての投稿を行った[9]。ナテッラの以前のゲリラ・マーケティングは局地的な関心しか集めなかったが、This Manで初めて世界的に広めることに成功した[10]

正体の公表

This Manの話が広まり始めたときから、電子掲示板である4chanのユーザや、ASSMEio9英語版などのブログで、ゲリラ・マーケティングではないかと疑う声があがった。彼らはThisMan.orgをホストする企業がguerrigliamarketing.itというウェブサイトもホストしていることを発見した[10][6][11]。ナテッラは自身がフェイク広告の事業を行っていると紹介していた[12]。そして、Kookというウェブサイト (This Manが注目を集めていた時期にナテッラが共同経営者になっていた) での2010年の投稿や、2012年に"Viral 'K' Marketing"と題された印刷媒体での記事で、ナテッラはとうとうThis Manは虚偽であることを認めた[10][8]

しかし、ナテッラはThisMan.orgが単にマーケティングの計略でしかなかったことを認めた一方で、何をプロモーションしていたのかは決して明かさなかった。The Kernelなどでは、ブライアン・ベルティノ (2008年の映画『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』脚本・監督) による同名の映画の宣伝のためだったという説が挙げられている[10][13]。ゴースト・ハウス・ピクチャーズが2010年5月にThisMan.orgを購入し[14]、ベルティノを脚本・監督として契約してThis Manを題材とした映画を製作していると公表した[15][16][17]。ゴースト・ハウス・ピクチャーズが取得した映画化の権利は後に失効し、複数のイタリアの映画製作会社に打診が行われたものの、再取得は行われなかったという[18]

ナテッラがゲリラ・マーケティングと認めた後でも、The Epoch TimesVice誌などでThis Manを事実として扱う報道が2010年代半ばまで続いた[19]。後に、ViceはThis Manは事実ではないという旨の記事を掲載した[20]

他のメディアでの扱い

インターネット上でThis Manの似顔絵をバラク・オバマ (左) やダニエル・トッシュ英語版 (右) などの著名人と置き換えたパロディが出現した。

This Manが人々に知られるようになると、インターネットユーザはThis Manについての情報提供を呼びかけるチラシを改変し、This Manの顔をカール・マルクスバラク・オバマなどの著名人の顔に置き換えた画像を制作した[21][13]コメディ・セントラルダニエル・トッシュ英語版の顔を使用した同様の画像を制作している[22]

2010年に、魔夜峰央の漫画『パタリロ!』で This Man を扱った回が描かれている(初出『MELODY』2010年2月号、同年刊の単行本第85巻所収)。

2014年には日本でドラマ『MOZU』が公開。作中でThis Manをモチーフとしただるまと言われる男が登場する。

This Manの似顔絵は2017年韓国映画Lucid Dream英語版の冒頭で短時間使用された[23]。また、『X-ファイル』のエピソード"Plus One英語版"でも取り上げられた[24]フジテレビオムニバスドラマシリーズ『世にも奇妙な物語』でも、2017年4月29日放送の『世にも奇妙な物語 '17春の特別編』にて「夢男」と題した短編ドラマでThis Manが登場した[25]

2018年に『週刊少年マガジン』でThis Manを元にした漫画『This Man〜その顔を見た者には死を〜』(花林ソラ原作、恵広史作画)の連載が開始された[26][27]マガジンポケットへの移籍を経て、翌年2019年に完結した[28]

2024年に、This Manに日本独自の解釈と社会風刺を加えて描いた映画『THIS MAN』が公開予定[29][30]

脚注

  1. ^ a b c History”. Ever Dreamed This Man?. 2019年4月29日閲覧。
  2. ^ Dreams”. Ever Dreamed This Man?. 2019年4月29日閲覧。
  3. ^ a b c d e Butler, Blake (2015年1月15日). “The Face Everyone Dreams About”. Vice英語版. 2019年4月29日閲覧。
  4. ^ a b Dreams”. Ever Dreamed This Man?. 2019年4月29日閲覧。
  5. ^ Albert, Attila (2009年12月1日). “Mystery of the dream man”. Bild. 2019年4月29日閲覧。
  6. ^ a b Van Hoven, Matt (2009年10月13日). “Who is This Man?”. Adweek英語版. 2019年4月29日閲覧。
  7. ^ Mystery "dream" man becomes internet hit!”. Sify英語版 (2009年10月28日). 2019年5月3日閲覧。
  8. ^ a b This Man” (Italian). KOOK Artgency (2010年). 2012年1月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月3日閲覧。
  9. ^ @timheidecker (2009年10月12日). "Scaring the shit outta me RT @JaneGomez: Can someone tell me what this is?? It scares me: tinyurl.com/ygcexgd". X(旧Twitter)より2019年5月3日閲覧
  10. ^ a b c d Cook, James (2013年10月17日). “When déjà vu is just a marketing stunt online”. The Kernel. 2019年5月3日閲覧。
  11. ^ Newitz, Annalee (2009年10月25日). “Why Are Thousands of People Dreaming About This Man?”. io9英語版. 2019年4月29日閲覧。
  12. ^ Who”. Andrew Natella. 2019年5月3日閲覧。
  13. ^ a b Have You Ever Dreamed of This Man? Probably Not”. Mysterious Universe (2014年1月20日). 2019年5月2日閲覧。
  14. ^ The Strangers Director Turns to This Man...”. Dread Central英語版. 2012年7月12日閲覧。
  15. ^ "This Man" Dream Viral To Become Feature Film”. movieviral.com. 2012年7月12日閲覧。
  16. ^ Bryan Bertino to Write and Direct THIS MAN for Sam Raimi’s Ghost House Pictures”. collider.com. 2012年7月12日閲覧。
  17. ^ Anderton, Ethan (2010年5月5日). “First Showing, Bryan Bertino Directing New Fact-based Horror Film 'This Man'”. FirstShowing.net. http://www.firstshowing.net/2010/bryan-bertino-directing-new-fact-based-horror-film-this-man/ 
  18. ^ Dream Scenario, i meme e una rivelazione esclusiva: il film ufficiale di This Man è stato opzionato”. movieplayer.it. 2025年3月29日閲覧。
  19. ^ Macisaac, Tara (2014年2月14日). “Ever Dream This Man? 2,000 People Have Seen Him in Their Dreams, According to Campaign”. The Epoch Times. 2019年4月29日閲覧。
  20. ^ Ugh, We Just Got Hoaxed: The Real Story About the ‘This Man’ Dream Face”. Vice (2015年1月15日). 2019年5月1日閲覧。
  21. ^ Meme flyers”. Ever Dreamed This Man. 2019年5月3日閲覧。
  22. ^ Lesinski, Chris (2009年10月15日). “Do You Dream About This Face?”. Comedy Central. 2009年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年5月3日閲覧。
  23. ^ This Man pop up on Netflix”. Ever Dream This Man?. 2019年5月3日閲覧。
  24. ^ Adams, Erik (2018年1月10日). “Ever dream this man? He could be the key to decrypting this season of The X-Files”. The A.V. Club英語版. 2019年4月29日閲覧。
  25. ^ #19 中条あやみ初主演で、不気味過ぎると話題の男This Manとまさかの共演!!”. 世にも奇妙な物語. フジテレビ. 2019年1月3日閲覧。
  26. ^ Dennison, Kara (2018年8月18日). “Bloody Monday Artist Publishes Manga Based on "Urban Legend"”. Crunchyroll. 2019年4月29日閲覧。
  27. ^ This Man その顔を見た者には死を”. マガジンポケット. 講談社. 2019年4月29日閲覧。
  28. ^ 『This Man その顔を見た者には死を(5)』(恵 広史,花林 ソラ)”. 講談社コミックプラス. 講談社. 2019年1月3日閲覧。
  29. ^ “この男、見たら死ぬ―― 海外発の都市伝説を日本で初映画化「THIS MAN」初夏に公開決定”. 映画.com. (2024年1月31日). https://eiga.com/news/20240131/3/ 2024年1月31日閲覧。 
  30. ^ “夢に現れる「あの男」の都市伝説『THIS MAN』出口亜梨沙&木ノ本嶺浩主演で映画化”. シネマトゥデイ. (2024年1月31日). https://www.cinematoday.jp/news/N0141216 2024年1月31日閲覧。 

外部リンク


THIS MAN

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/09 14:53 UTC 版)

THIS MAN
監督 天野友二朗
脚本 天野友二朗
原作 This Man」より
出演者 出口亜梨沙
木ノ本嶺浩
編集 天野友二朗
製作会社 Union Inc.
配給 アルバトロス・フィルム
公開 2024年6月7日[1]
上映時間 88分
製作国 日本
言語 日本語
テンプレートを表示

THIS MAN』(ディス・マン)は、2024年日本ホラー映画

2006年頃から世界的に広まった有名なインターネット・ミームThis Man」に日本独自の解釈を加え、なすすべなく人々が死んでいく描写を通して昨今のコロナ禍の惨状を風刺した作品[2][3]。監督・脚本・編集は天野友二朗

あらすじ

とある田舎町で連続変死事件が発生する。被害者の共通点は、眉がつながった奇妙な風貌の男=“あの男”を夢の中で見ていたことだった。

キャスト

脚注

外部リンク


「This Man」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

This Manのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



This Manのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのThis Man (改訂履歴)、THIS MAN (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS