高齢者の医療の確保に関する法律
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 09:23 UTC 版)
法改正
無償化によって膨張し続ける高齢者医療費による財政圧迫を打開するため[1]、高齢者医療費無償の全国化から10年後である1982年(昭和57年)には、旧法にあたる老人保健法が制定された[2][3]。翌1983年から高齢者医療費無償化が廃止され、入院1日300円、外来月400円の定額負担制度が導入された[4]。
「老人保健法」同法に基づく老人保健制度は市町村の事業とされ、その原資は日本国政府および区市町村3割、現役世代(64歳以下全員と65~69歳の健常者)からの基金供出金が7割であり[5]、受給者本人にも自己負担(外来で一ヶ月400円、入院で一日300円を上限)が設けられた[5]。
旧老人保健法に基づく事業
医療事業
老人医療の実施の主体者は区市町村である。対象者は70歳以上の高齢者と65~69歳の障害者。当初は全ての老人医療を担っていたが、介護保険法の登場により、その適用は、老人の急性期医療や高度な医療が必要とされる慢性期医療に限られるようになった。
財政は、患者負担額を除いた額について30%が公費負担(国20%、都道府県5%、区市町村5%)、70%が現役世代(0~64歳全員と65~69歳の健常者)の負担であった[2]。
患者負担金は、保険医療機関あたり以下と定められた[2]。
- 1982-1986年: 外来は月あたり400円 、入院は一日300円(最大2か月)
- 1986-1991年 :外来は月あたり800円、入院は1日400円(上限なし)
- 1991-1992年 :外来は月あたり900円、入院は1日600円
- 1993-1994年:外来は月あたり1000円、入院は1日700円
- 1995年-2001年:物価スライド制を導入
- 2001年-:外来は定率1割負担、入院は1日1200円
保健事業
原則として40~69歳を対象としている。将来、要介護者や生活習慣病にならないように配慮されている。具体的な内容を以下に示す。
- 健康手帳の交付
- 健康教育
- 健康診査
老人保健法による健康診査には歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、健康度評価、受診指導、肝炎ウイルスが含まれる。がん検診は現在は一般財源化している。
定額負担化後の議論
しかし、定額負担制度導入後も高齢者医療費は伸び続け[6]、日本国政府は数年おきに自己負担上限額の引き上げを行ってきた。健保組合に課される老人保健拠出金も明治生まれが全員70歳以上となった直後の1983年には13%であったが1996年に大正生まれも全員70歳以上になり、1999年には40%まで上昇し、1999年にはサンリオ健康保険組合が主導する老人保健拠出金不払い運動に発展、97%の健康保険組合が参加した[7][8]。
高齢者医療費無償の全国化から24年後、定額化から14年後である1997年には、入院1日300円から1000円へ、外来は月400円から「毎月4回まで1日500円」へと定額負担額が増加された[3]。
後期高齢者医療制度の議論
- 1999年(平成11年)
- 2006年(平成18年)
- 2007年(平成19年)
- 2008年(平成20年)
- 3月30日 「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について[14](平成19年3月30日付)と題する厚生労働省保険局医療課長通知が出される。
- 4月1日 「高齢者の医療の確保に関する法律」を施行[15]。
- 4月11日 厚生労働省が市町村及び広域連合からの照会のためのホットラインを設置。
- 4月 139の市区町村で保険料の徴収金額の間違え、保険料の免除者から誤って徴収したことが報道される[16]。
- 4月25日 厚生労働省が制度に関する国民の質問等を土曜日及び日曜日においても受け付ける専用ホットラインを設置。
- 5月23日 民主・共産・社民・国民新の野党4党が参院厚生労働委員会に「後期高齢者医療制度廃止法案」を提出。趣旨説明が行われ、実質審議入り[17]。
- 5月27日 元自民党衆議院議員浜田幸一を起用した後期高齢者医療制度への理解を求めるCMを沖縄県議選に向けてオンエア。
- 6月3日 『毎日新聞』が保険料を負担している人の約7割は負担が軽減されたとの厚生労働省の調査結果を報じる[18]。
- 6月4日 後期高齢者医療制度への移行に伴う保険料増減の厚生労働省の実態調査において所得の低い世帯ほど保険料負担が増えていたことが判明[19][20][21]。
- 6月5日 町村信孝内閣官房長官が記者会見で、与党がまとめた保険料軽減策を実施する場合、国民健康保険から移った高齢者世帯で保険料が下がる割合は現行の69%から75%に上がるとの見通しを示す[22]。
- 6月5日 参議院の厚生労働委員会において「後期高齢者医療制度廃止法案」が可決。
- 6月6日 「後期高齢者医療制度廃止法案」が参議院において可決。
- 6月12日 厚生労働省が改善策を公表(#保険料の軽減措置)[23]。
- 6月15日 自民、公明の連絡会議で後期高齢者医療制度の運用改善策が決定。
- 9月 後期高齢者医療制度検討会設置決定。
- 2009年(平成21年)
- 3月17日 検討会の最終報告書。「後期高齢者」「終末期相談支援料」の名称の見直し程度だった。
- 4月 65〜69歳の医療費負担額を3割から2割に下げる計画とともに、現役世代は3割、65〜74歳は2割、75歳以上を1割とする案が発表される。
- 8月30日 第45回衆議院議員総選挙で政権交代。
- ^ “米山隆一の10年先のために - 私が憲法での高等教育無償化に反対する理由 ~ただより高いものはない~”. www.election.ne.jp. 2023年12月2日閲覧。
- ^ a b c 日本社会保障資料Ⅳ(1980-2000) (Report). 国立社会保障・人口問題研究所. 2005-03. Chapt.3 医療保険.
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の日付が不正です。 (説明) - ^ a b “高齢期の患者負担は1割、2割、それとも?”. 東洋経済オンライン (2020年11月25日). 2023年12月2日閲覧。
- ^ “自己負担割合はどう推移してきた?【医療の現状】”. 医療維新. 2023年12月2日閲覧。
- ^ a b 厚生労働白書 2011, pp. 56–59.
- ^ 厚生労働白書 2011, Chapt.2.2.3.
- ^ . 第170回国会 厚生労働委員会. Vol. 5. 19 November 2008 https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigirokua.nsf/html/kaigirokua/009717020081119005.htm。
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は必須です。 (説明) - ^ 10年が過ぎた後期高齢者医療制度はどうなっているのか(下)-制度改革の経緯と見直しの選択肢を考える (Report). ニッセイ基礎研究所. 7 August 2018.
- ^ a b 第146回国会 衆議院 厚生委員会 第2号 平成11年(1999年)11月9日(議事録)
- ^ 議案審議情報(参議院)
- ^ 第164回国会 衆議院 厚生労働委員会 第22号 平成18年(2006年)5月17日(議事録)
- ^ 第164回国会 衆議院 本会議 第31号. 5月18日(議事録)
- ^ 第164回国会 参議院 本会議 第33号 平成18年(2006年)6月14日(議事録)
- ^ 「診療報酬の算定方法の制定等に伴う実施上の留意事項について」等の一部改正について 厚生労働省
- ^ 厚生労働白書 2011, pp. 75–77.
- ^ 第169回国会 参議院 厚生労働委員会 第14号 平成20年(2008年)6月3日(議事録)
- ^ “後期高齢者医療制度の廃止法案が審議入り”. MSN産経ニュース. (2008年5月29日). オリジナルの2008年6月1日時点におけるアーカイブ。 2008年5月29日閲覧。
- ^ “後期高齢者医療:「7割は負担減」 厚労省調査”. 毎日新聞. (2008年6月4日)
- ^ “低所得層ほど負担増 後期高齢者医療制度で実態調査”. MSN産経ニュース. (2008年6月4日). オリジナルの2008年6月7日時点におけるアーカイブ。 2008年6月4日閲覧。
- ^ “新高齢者医療 低所得者の負担増、高所得者は負担減”. asahi.com. (2008年6月4日). オリジナルの2008年6月7日時点におけるアーカイブ。 2022年8月22日閲覧。
- ^ “低所得者、実は負担増…後期高齢者医療制度”. 読売新聞. (2008年6月7日). オリジナルの2008年6月8日時点におけるアーカイブ。 2022年8月22日閲覧。
- ^ “後期高齢者医療、保険料軽減世帯75%に 官房長官”. NIKKEI NET (2008年6月5日). 2008年6月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月22日閲覧。
- ^ 『高齢者医療の円滑な運営のための負担の軽減等について』(プレスリリース)厚生労働省、2008年6月2日 。2022年8月22日閲覧。
固有名詞の分類
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