高田保馬 研究内容・業績

高田保馬

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/07 17:36 UTC 版)

研究内容・業績

総合社会学」を否定し、独自の視点からジンメルの掲げた「形式社会学」の彫琢に努め、「勢力論」を提唱したことで知られる。

結合定量の法則

「結合定量の法則」とは、人間が日常生活において取り持つ相互関係の量には定量があるとする仮説である。熱力学エネルギー保存則を想起させるこの法則は、都市における人間同士の関係における「希薄さ」を数理モデルで説明しようとしたものであるが、社会学者であると同時に経済学者でもあった高田によってこそ、定式化が可能であった。

誇示的消費

誇示的消費で需要曲線が右上がり(逓昇的)になる可能性を1930年に明白に指摘しており、これは1950年にハーヴェイ・ライベンシュタインが論文「Bandwagon, Snob and Veblen Effects in the Theory of Consumers' Demand」でバンドワゴン効果スノッブ効果ヴェブレン効果を提唱するよりも20年も先んじていた[4]

労働者の生活水準、失業、ならびに社会について

失業対策について、ケインズ経済学的な有効需要の創出政策を批判しており、労働者の生活水準(賃金)の引き下げを主張していた[9]。また人口減少対策として、都市階層に課税して農村に所得移転させる政策を主張していた[10]。高田は人口そのものを国力と捉え、農村を人口の供給源として重要視していた[10]

高田は「失業や国の衰退は過度な消費が原因であるとしており、貧乏な生活が経済発展の基礎となる」と主張した[11]。それに対して天野貞祐は「高田の議論は生活が低ければ低いほど貢献しているということになり、低い生活は即ち道徳という意味に取れる。仮に社会的享受が少ないほど貢献しているとするならば、死ぬことが最大の貢献になることになる。貧乏そのものが道徳を意味するならば、社会は有識者の多さで苦しむことになる」と述べている[12]。貧しさが生産費を抑え、日本製品の国際競争力につながるという高田の主張について、天野貞祐は「貧者を利益の方便とする一部の人間が儲かるだけである」と批判している[12]住谷悦治は「虚栄心を捨てれば貧困問題は解決すると言っているに等しい」と述べている[12]

評価・影響

アメリカ合衆国の経済学者M・ブロンフェンブレンナーは高田を「日本のマーシャル」と讃えている[4][13]


  1. ^ ケインズシュンペーターと同年生まれである。出典:[根岸隆2010]。
  2. ^ 現在の佐賀西高校佐賀北高校佐賀東高校
  3. ^ 水田洋(昭16学後)「朝鮮の二人の先輩」一般社団法人如水会
  4. ^ a b c d 根岸隆 2010.
  5. ^ 高田は河上より先にマルクス研究を開始していた。出典:[根岸隆2010]。
  6. ^ 思想としての近代経済学, p. 75.
  7. ^ 思想としての近代経済学, p. 75-76.
  8. ^ この時高田から経済原論と経済哲学の講義を聴いた学生には、後に大阪大学ロンドン大学の教授を務めた森嶋通夫(1942年10月入学、1943年12月徴兵)がいる。出典:[思想としての近代経済学,pp.75-76]。
  9. ^ 田中秀臣『経済政策を歴史に学ぶ』(ソフトバンク新書、2006年)117-118頁
  10. ^ a b 田中秀臣『経済政策を歴史に学ぶ』(ソフトバンク新書〉、2006年)121頁
  11. ^ 田中秀臣 2001, p. 100.
  12. ^ a b c 田中秀臣 2001, p. 101.
  13. ^ 橘木俊詔『朝日おとなの学びなおし 経済学 課題解明の経済学史』(朝日新聞出版、2012年)230頁
  14. ^ a b 歌人として 高田保馬博士顕彰会(2024年4月5日閲覧)






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固有名詞の分類

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京都大学の教員 矢野暢  梶山雄一  小島祐馬  高田保馬  鳥養利三郎
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