電気二重層コンデンサ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 06:43 UTC 版)
電気二重層キャパシタは陽極と陰極の2つの電極を持つが、この2つが二重層という名前の元となったわけではなく、両極それぞれの表面付近で起こる物理現象である「電気二重層」が元となっている。電気二重層コンデンサは俗にウルトラ・キャパシタ(英: ultracapacitor)やスーパー・キャパシタ(英: supercapacitor)とも呼ばれることもある[2][3]。
特徴
- 電池に比べて内部抵抗が低く短時間で充放電が行なえる(ただし他コンデンサに比べると圧倒的に劣る)
- 充放電による劣化が少ないので製品寿命が非常に長い
- 耐電圧が低い
- コンデンサであるため、電池に比べ自己放電によって時間と共に失われる電気(リーク電流)が比較的多い
- コンデンサであるため、電池と違い充放電時に電圧が直線的に変化する
- 電池に比べると一般的には高価である
二次電池と異なり電極での化学反応によって電気エネルギーを蓄えるのではなく、イオン分子が電荷を蓄えるため、充放電による劣化は少なく、耐電圧付近での電極の劣化や電解質のイオン分子の劣化が長期的には少し存在するだけで、10万 - 100万回程度の充放電サイクルが可能だと考えられている。 また、耐電圧が低く、充電できる電圧は最高でも3V程度となるため、高電圧が必要なら直列接続が必要となる。充放電サイクルで並列接続と直列接続を繰り返すと二次電池のメモリ効果のように充電可能な容量が減るので、適時に完全放電が必要になる。
キャパシタ(コンデンサ)なので、自己放電によって時間と共に電荷が失われ、化学反応で電気を蓄える二次電池と比べると蓄電できる時間は短い。一方、化学反応を必要としないため充電と放電の反応が早く、内部抵抗も少ないために、大電流での充放電が行なえる。化学反応ではないので、充放電の電圧は一定ではなく、0Vから2Vや2.5Vまでの範囲で直線的に変化する。
2008年現在の高性能電池であるリチウムイオン電池のエネルギー密度、100 - 500Wh/Lと比べれば、電気二重層コンデンサは2 - 10Wh/L程度で数十倍の能力差がある。リチウムイオン二次電池の技術を取り入れたリチウムイオンキャパシタはエネルギー密度が10-30Wh/L程度である[4]。
レアメタルのように将来コスト高となる可能性がある素材の使用は求められていないが、電極の加工に手間がかかって高価格となっている[2][3]。
歴史
1879年にドイツ人のヘルムホルツ(1821年 - 1894年)が、電解液中に導体を漬けると導体の界面に分子1層分の薄い層が生じ、その外に拡散層が生ずる、「電気二重層」の現象を発見した[2]。
1970年代後半に日本の電子部品メーカーが、従来の電解コンデンサに対し、容量で1000倍に相当する高性能な新製品として電気二重層コンデンサの販売を開始した[3]。
- ^ “【スーパーチャージ】スーパーキャパシタはリチウムイオン電池に取って代われるか”. ダッソー・システムズ株式会社 公式ブログ (2020年1月16日). 2021年8月28日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 岡村廸夫著 『電気二重層キャパシタと蓄電システム』 日刊工業新聞社 2001年2月28日第2版第1刷 ISBN 4526-047139
- ^ a b c d e f g 石川正司著 『キャパシタ』 (株)ケーディー・ネオ・ブック 化学同人 2007年10月15日第1版第1刷発行 ISBN 9784759803419
- ^ a b 『電気2重層を駆逐するかLiイオン・キャパシタ』 日経エレクトロニクス 2008年11月17日号 83頁
- ^ “スーパーキャパシタートラム完成、30秒充電で5キロ走行 中車株洲電力機車”. 新華網日本語. 新華社. 2020年8月26日閲覧。
- ^ “MRT tram made by CRRC officially starts operation”. 中国中車. 2023年8月4日閲覧。
- 1 電気二重層コンデンサとは
- 2 電気二重層コンデンサの概要
- 3 原理
- 4 実用例
- 5 関連項目
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