軽減税率 日本の軽減税率導入をめぐる指摘や課題

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軽減税率

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/08 08:49 UTC 版)

日本の軽減税率導入をめぐる指摘や課題

公明党が唯一の軽減税率推進政党

2015年現在、日本では公明党が唯一の積極的軽減税率推進政党となっている。自公与党間で軽減税率の合意はあるものの、公明党からの軽減税率の合意なしには選挙協力ができないとの条件闘争からの結果、自民党は軽減税率に合意したとされている[22][23]自公連立政権の発足後、公明党の衆議院議員兼軽減税率制度調査委員長の上田勇の強い要望と自民党への交渉により、「平成26年度税制改正大綱」における消費税率を8%から10%に増税時に軽減税率を導入することが与党内で合意された。しかし、与党内合意の一方で自民党は導入時期に関してはやや慎重な姿勢だ。また、財務省は軽減税率による毎年一兆円の税収減を懸念し、経済界は事務処理の負担増を懸念して反対している[23]。多くの経済学者は、軽減税率制度より給付措置の方が、低所得者対策としてより有効であると主張している。しかし、2015年末、当時の大手紙の世論調査で軽減税率制度に多くの賛意が寄せられたなどを背景に、自民党と公明党は軽減税率制度の導入を決めた[24]

飲食料品への適用

軽減税率が適用される飲食料品は、「食品表示法に規定する食品」(酒税法に規定する酒類を除く)と、厳密に定義されている。飲食料品の定義は問題にならなかったが、「外食」は従来通りの標準税率と決めたため、その線引きが問題となった。これは、元をたどると、軽減税率導入を検討する過程で、「高級料亭での飲食も軽減税率が適用されては、低所得者対策にならない」として公明党が「外食」を適用から除外するよう要求して合意したことに起因する[24]

軽減税率を適用しない外食を定義する必要性が生じたため、検討の結果、軽減税率が適用されない外食を食品衛生法上の「飲食店営業などで、テーブル、いす等を設けて飲食させるための設備を置いた場所で、食事を提供する」ことを定義した。すなわち飲食を提供する場所を指定して飲食すれば適用対象とはならない。ただし、学校給食老人ホームでの食事は、生活を営む場で他の形態で食事をとることが困難なため、軽減税率の対象となったとされている[24]

新聞への適用

堀江貴文は「5時に夢中!」(東京メトロポリタンテレビジョン)の番組内で、公明党が自民党に対し執拗に新聞を対象として含ませようとしてきた原因は、公明党の支持母体である創価学会が発行する「聖教新聞消費税が8%から10%になったら、(購読者が)激減する可能性が高く、聖教新聞を守るためだ」と主張している[25]

10月15日、朝日新聞と読売新聞、毎日新聞など日本全国の新聞会社や通信、放送各社の代表らが参加した「第68回新聞大会」が日本新聞協会主催で開かれ、消費増税に伴う新聞への軽減税率適用を求める特別決議が3年連続で採択された。日本新聞協会会長で読売新聞東京本社社長の白石興二郎が、ヨーロッパを始めOECD加盟国のほとんどが、社会政策として新聞に対しゼロ税率か軽減税率を適用しているとして、「新聞の軽減税は世界ではある程度一般的」「読者の負担を減らすことで情報、知識へのアクセスが容易となり、結果的に減税措置は社会に還元される」と軽減税率適用の意義を訴え、新聞への軽減税率適用を求める特別決議を採択した[26][27]

週2回発行される定期購入契約された新聞が軽減税率の対象で、電子版の新聞やコンビニエンスストアキヨスクで販売される新聞は、軽減税率の対象外。

インボイス制度導入

消費税率が一律の場合は、仕入れ額や売り上げ額が分かれば、それに消費税率を乗じて消費税額を簡単に計算できた。しかし、軽減税率が導入されると商品ごとに税率が異なるため、商品ごとの税率や税額が分かる書類が必要になる。そこで導入が決ったのがインボイス制度である[13]。しかし、このインボイス制度により中小企業の経営悪化が懸念される[28]。現在、売上高が1000万円以下の事業者のほとんどは消費税の納付の必要がない「免税事業者」になっている[28]。インボイス制度では、消費税率や税額が書いたインボイスを保存していることが求められるが、インボイスを交付できるのは税務署から登録を受けた課税事業者に限られ、売上高1000万円以下の免税事業者はインボイスを交付することができない[28]。そのため売上高1000万円以下の免税事業者は事業者間取引から排除され、経営悪化に直面することが懸念されている[28]。現状では2021年を目途に、商取引への影響を検証し、必要な場合には一定の措置を講ずることとされている[28]。今後、インボイス制度に関する議論の動向に注目する必要がある[28]

その他の指摘

古賀茂明は、「軽減税率は財務省が特定の品目を軽減対象として認める代わりに、その関連業界の団体・企業に天下りをさせ、族議員ら企業や団体からの政治献金・選挙協力という見返りを得るため」と主張している[29]。しかし、財務省は軽減税率のために必要な財源が毎年約1兆円になることから制度には反対している[23]

2014年6月11日の第9回税制調査会において、特別委員が軽減税率に対する賛否を表明している。伊藤元重大竹文雄土居丈朗などが反対の立場を表明した。会長の中里実は「お二人を除いてかなり強い反対があったと理解しています」「一部の方を除くと、相当強い、全面否定に近いような意見が多くの方から出ました。」と総括している[30]

夏野剛は2018年1月11日に、消費税増税時に日本のキャッシュレス化を進めるために電子決済だと消費税8%に据え置いて、現金決済だと10%に増税することを提言している。理由として、金銭的インセンティブによって現金をよく好んで使う高齢者と女性が一気に電子決済するようになり、日本のキャッシュレス化が進むからだと述べている[31]

軽減税率の実例


  1. ^ 食料品等に対する軽減税率の導入問題 髙田具視(税務大学校研究部教授)(国税庁HP)
  2. ^ ■軽減税率制度は全ての事業者の皆さんに関係します(政府広報オンライン)
  3. ^ 消費税の軽減税率制度等に関する資料(財務省HP)
  4. ^ a b 日本の場合毎年一兆円の税収減が予測されている
  5. ^ サラリーマン増税の「真犯人」は消費税軽減税率だ 週刊diamond
  6. ^ a b c 軽減税率を導入すべきか - みずほ総合研究所
  7. ^ a b 軽減税率はなぜ人気なのか?
  8. ^ a b c d OECD Economic Surveys: Japan 2015, OECD, (2015-04), Assesment and recommendations, doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2015-en, ISBN 9789264232389 
  9. ^ VATの還付制度:EU | 貿易・投資相談Q&A - 国・地域別に見る - ジェトロ”. www.jetro.go.jp. 2019年7月3日閲覧。
  10. ^ a b c 『諸外国の付加価値税 : 2008年版』,鎌倉治子,2008年
  11. ^ a b c d 消費税の軽減税率とC 効率性 - みずほ総合研究所
  12. ^ “軽減税率、高年収ほど恩恵” (日本語). 共同通信 (共同通信社). (2019年3月1日). https://this.kiji.is/474224679655064673 2019年3月3日閲覧。 
  13. ^ a b 株式会社エクス コラム 「インボイス方式導入による影響」 2017年11月24日閲覧
  14. ^ 日本経済新聞「基礎的財政赤字、6兆円台半ばに拡大 軽減税率で」
  15. ^ 軽減税率導入、財源80億円不足=減収穴埋め策判明-消費増税:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2019年2月5日). 2019年2月6日閲覧。
  16. ^ 「軽減税率は先進国の常識」の大ウソ!欧州の「失敗」を繰り返さないために…
  17. ^ 主要国の付加価値税の概要 財務省
  18. ^ a b 経済・マネー 【金融スクープ】消費増税各国が苦心する軽減税率の“珍”線引き zakzak 2013年1月16日(2013年1月13日時点のインターネットアーカイブ
  19. ^ 日本型軽減税率制度 - みずほ総合研究所
  20. ^ 消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)|国税庁” (日本語). www.nta.go.jp. 2018年11月10日閲覧。
  21. ^ すべての国内消費に標準税率で課税された場合に得られる仮定での税収に対する実際の税収の比率
  22. ^ 軽減税率・自民と公明「大モメ」の全真相!`
  23. ^ a b c “政治裁定:軽減税率/上(その2止) 財務省、重ねた誤算 - 毎日新聞” (日本語). 毎日新聞. https://mainichi.jp/articles/20151213/ddm/003/010/062000c 2018年10月4日閲覧。 
  24. ^ a b c まるで「クイズ」のような軽減税率の線引き”. 東洋経済ONLINE. 東洋経済新報社 (2016年2月22日). 2019年3月17日閲覧。
  25. ^ 堀江貴文氏、軽減税率をめぐる公明党の狙いを指摘「聖教新聞守るため」”. livedoorNews. livedoor (2015年12月19日). 2015年12月22日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年10月21日閲覧。
  26. ^ “新聞に軽減税率を適用する必要はない” (日本語). HuffPost Japan. (2015年10月16日). https://m.huffingtonpost.jp/hajime-yamada/newspaper_b_8309212.html 2018年10月4日閲覧。 
  27. ^ “消費増税と新聞の軽減税率 朝日社説の変節ぶり(THE PAGE) - Yahoo!ニュース” (日本語). Yahoo!ニュース. https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160519-00000006-wordleaf-soci 2018年10月4日閲覧。 
  28. ^ a b c d e f 税率引き上げより怖い消費税の「インボイス制度」”. 大和総研グループ. 大和総研グループ (2018年12月12日). 2019年6月22日閲覧。
  29. ^ 問題だらけの軽減税率 ~天下り先確保、野放しの脱税、そして増税…得をするのは金持ちだけ
  30. ^ 税制調査会 2014年度 - 内閣府” (日本語). 内閣府ホームページ. 2019年3月22日閲覧。
  31. ^ 日本のキャッシュレス化に向けた課題-日本のキャッシュレス化について考える(3):研究員の眼 夏野剛公式twitterアカウント 2018年1月11日


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