軽減税率 各国の軽減税率の区分と問題

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軽減税率

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/02/17 00:11 UTC 版)

各国の軽減税率の区分と問題

欧州諸国では多くの国で消費税に軽減税率が導入されている。しかし、運用コストの高さ、逆累進性問題、癒着など問題点が多かったため、その反省から現在では単一税率へ向け見直しの機運が高まっている。税制の専門家などでは欧州諸国の軽減税率は失敗の経験として、軽減税率導入は否定的に捉えられている[4][9]

また欧州諸国における軽減税率は、経済困窮者への配慮などといった福祉政策的な観点によって作られた制度ではない[10]。1960年頃の欧州では分野により税制が大きく異なるものが多数あり、それらの統一を図ろうとしたものの各所からの抵抗や反発の結果、政治的妥協として消費税に複数の税率が適応される事態となったことがその経緯だ。

2015年、EU加盟国28カ国中21カ国で軽減税率が適用されている。区分けや税率は各国で違いがある[11]。例えば、カナダでは「ドーナツ5個以内」は「外食」とみなし消費税6%を課税し、「ドーナツ6個以上」は「その場では食べられない」とみなされ「食料品」となり、消費税は非課税となる(2013年1月時点)[12]ドイツではハンバーガーを食べる場所により変わり、店内で食べると「外食」とみなし消費税19%を課税し、「テイクアウト」にすると「食料品」とみなし、消費税を7%に減税している(2013年1月時点)[12]

欧米諸国では各業界団体が軽減税率の適用を求める問題や軽減税率導入によって税収が減り、社会保障費を賄うためには予算不足なために将来的な基本消費税率が高くなっている[13]

軽減税率とC効率性

日本

軽減税率の無い国であるために消費税の優れた課税ベースの広いという性質を活かしてC効率性[14] は世界5位を誇っている。しかし、軽減税率が導入後には消費税の課税ベース縮小するために下落予定である。軽減税率の導入で将来的には標準税率は軽減税率の不足分増されていく予定なので、軽減税率と標準税率の差拡大の度のC効率性の順位下落が確実視されている[15]

ニュージーランド

広い免税範囲・7種類の従価税率7と12種類の特別税率という複雑な税率構造・サービス業非課税・製造業者から直接購入できる大規模小売業者に有利などの従来の卸売売上税の歪みを是正・歳入における個人所得税への極端な依存を是正・社会保障給付の増加と保護主義的な経済政策で拡大した財政赤字の削減などのために消費税が1968年に10%で導入された。1989年に12.5%へ消費増税されたことで、1994年からGDP比の財政収支が黒字に転じた。軽減税率を導入せずに消費税の税率が全て一律なため、デンマークは世界で最も課税ベースが広い国であると鎌倉は述べている。経済に対して最も中立的な付加価値税の制度を設けているので世界2位のC効率性を誇っている。1999年にニュージーランド政府は最小のコストで安定した税収を得るためには、課税ベースの拡大と単一かつ定率の消費税だとの方針を示している。1986年の軽減税率無しの10%の消費税導入に日本のような国民の反発はなかった。背景として、ニュージーランドでは社会保障費の制度を中負担中福祉にすることや低所得者には消費税による軽減税率しない場合の増えた税収から後で多く再分配する方が、小売店や役所の負担軽減と軽減税率計算処理による納税コスト軽減や格差是正には効率的との政府の方針を国民が受け入れたためである。2006年に付加価値税収の総税収に占める割合は24.4%である[16][15]

デンマーク

1967年に福祉国家建設のための予算不足のために広く安定した課税ベースを確立することを目的にデンマーク社会民主党によって軽減税率無しの10%で導入された。1970年代に20.25%台にまで引き上げられた後に、1992年から現行の25%になった。軽減税率は歳入減少の財政負担・徴収の効率化・軽減税率の適用対象品目の区別などが困難だったからであった。一律25%の消費税による税収を後で社会保障給付によって逆進性への対処として再分配を行う方が効率的として導入しなかった。2006年の対総税収比では個人所得税負担の割合が 51.3%と突出しており、付加価値税の割合は21.3%である。デンマークは自国企業の国際競争力や外資誘致のために法定実行税率も低く、高負担高国家として国民の手厚い社会保障の財源は基本的に高い所得税と消費税で7割以上も賄わっている。同じ北欧で25%の消費税で6%の軽減税率があるスウェーデンを上回るC効率性である。スウェーデンの付加価値税がデンマークよりもC効率性は低い理由には、 軽減税率と消費者を顧客とする小売・サービス業で発生しやすい脱税・現金を用いない電子商取引の発達・税率の低い隣国での国境を越えた買い物による租税回避がある[16] [15]

日本の軽減税率導入をめぐる議論

公明党が唯一の軽減税率推進政党

2015年現在、日本では公明党が唯一の軽減税率推進政党となっている。自公与党間で軽減税率の合意はあるものの、公明党からの軽減税率の合意なしには選挙協力ができないとの条件闘争からの結果、自民党は軽減税率を合意したとされ、菅官房長官と創価学会幹部の裏ルートの会合により選挙直前に決定された。 [17]

政治的背景

自公連立政権の発足後、公明党の衆議院議員兼軽減税率制度調査委員長の上田勇の強い要望と自民党への交渉により、「平成26年度税制改正大綱」における消費税率を8%から10%に増税時に軽減税率を導入することが与党内で合意された。しかし、与党内合意の一方で自民党は導入時期に関してはやや慎重な姿勢である。また、財務省は軽減税率による税収減を懸念し、経済界は事務処理の負担増を懸念しているとされる。多くの経済学者は、軽減税率制度より簡素な給付措置の方が、低所得者対策としてより有効であると主張し続けている。しかし、昨年末、当時の大手紙の世論調査で軽減税率制度に多くの賛意が寄せられたなどを背景に、自民党と公明党は軽減税率制度の導入を決めた。

飲食料品への適用

軽減税率が適用される飲食料品は、「食品表示法に規定する食品」(酒税法に規定する酒類を除く)と、厳密に定義されている。飲食料品の定義は良いとしても、「外食」は従来通りの標準税率と決めたため、その線引きが厄介な問題となった。これは、元をたどると、軽減税率導入を検討する過程で、高級料亭での飲食も軽減税率が適用されては、低所得者対策にならないとして公明党が「外食」を適用から除外するよう要求して合意したことに起因する。

では、軽減税率が適用されない「外食」をどう定義したか。それは、取引の場所と態様(サービスの提供と言えるか)に着目した定義だ。つまり、食品衛生法上の「飲食店営業などで、テーブル、いす等を設けて飲食させるための設備を置いた場所で、食事を提供する」ことを「外食」と定義した。要するに、飲食を提供する場所を指定して飲食すれば、それが「外食」となる。ただし、学校給食老人ホームでの食事は、生活を営む場で他の形態で食事をとることが困難なため、軽減税率の対象とする。

新聞への適用

新聞への軽減税率適用は、政権迎合につながると疑問を呈す声が多く、適用は第24回参議院議員通常選挙を意識する総理大臣官邸の意向が色濃く反映されたとの見方が強い。朝日新聞のコラムで池上彰は「安倍政権は今後、新聞報道に対し、見返りを要求することはないのか。あるいは、それを仄めかすことはないのか」という疑念を示す意見を投稿している。

見返りを要求するのは当然の帰結であり、その事態を招いたのは新聞社であるとの見方が強い。新聞を軽減税率の適用品目とすることについて、インターネットでは「新聞は公共財じゃない」「新聞なんて生活必需品じゃない」「なくなってもいい」と激しい批判の声が高まっている。新聞は「ジャーナリズムより自分の給料を選んだ」という批判も強い。

堀江貴文は「5時に夢中!」(東京メトロポリタンテレビジョン)の番組内で、公明党が自民党に対し執拗に新聞を対象として含ませようとしてきた原因は、公明党の支持母体である創価学会が発行する「聖教新聞 (にかかる消費税)が8%から10%になったら、(購読者が)激減する可能性が高く、聖教新聞を守るためである」と主張している[18]

10月15日、新聞や通信、放送各社の代表ら約520人が参加する「第68回新聞大会」が日本新聞協会主催で開かれ、消費増税に伴う新聞への軽減税率適用を求める特別決議が3年連続で採択された。日本新聞協会会長で読売新聞東京本社社長の白石興二郎が、ヨーロッパを始めOECD加盟国の殆どが、社会政策として新聞に対しゼロ税率か軽減税率を適用していると指摘しており、「新聞の軽減税は世界ではある程度一般的である。読者の負担を減らすことで情報、知識へのアクセスが容易となり、結果的に減税措置は社会に還元される」と軽減税率適用の意義を訴え、新聞への軽減税率適用を求める特別決議を採択した。賛否両論の中で、日本国民の80%は賛成しているが、20%は反対している。

財務省天下り利権との批判

古賀茂明は、軽減税率は財務省が特定の品目を軽減対象として認める代わりに、その関連業界の団体・企業に天下りをさせ、族議員ら企業や団体からの政治献金・選挙協力という見返りを得るために公明党・自民党が導入させようとしている上に高い購買ほど減免の恩恵を受ける制度だと批判した[19]


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  1. ^ 検定済教科書の代金、授業料など「教育費」の一部には消費税が課税されない。
  2. ^ 日本の場合毎年一兆円の税収減
  3. ^ [1]サラリーマン増税の「真犯人」は消費税軽減税率だ 週刊diamond
  4. ^ a b c d OECD Economic Surveys: Japan 2015, OECD, (2015-04), Assesment and recommendations, doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2015-en, ISBN 9789264232389 
  5. ^ 軽減税率はなぜ人気なのか?
  6. ^ 株式会社エクス コラム 「インボイス方式導入による影響」 2017年11月24日閲覧
  7. ^ 日本経済新聞「基礎的財政赤字、6兆円台半ばに拡大 軽減税率で」
  8. ^ 日本のキャッシュレス化に向けた課題-日本のキャッシュレス化について考える(3):研究員の眼 夏野剛公式twitterアカウント 2018年1月11日
  9. ^ 軽減税率を導入すべきか - みずほ総合研究所
  10. ^ 「軽減税率は先進国の常識」の大ウソ!欧州の「失敗」を繰り返さないために…
  11. ^ 主要国の付加価値税の概要 財務省
  12. ^ a b 経済・マネー 【金融スクープ】消費増税各国が苦心する軽減税率の“珍”線引き zakzak 2013年1月16日(2013年1月13日時点のインターネットアーカイブ
  13. ^ 日本型軽減税率制度 - みずほ総合研究所
  14. ^ すべての国内消費に標準税率で課税された場合に得られる仮定での税収に対する実際の税収の比率
  15. ^ a b c 消費税の軽減税率とC 効率性 - みずほ総合研究所
  16. ^ a b 『諸外国の付加価値税 : 2008年版』,鎌倉治子,2008年
  17. ^ 軽減税率・自民と公明「大モメ」の全真相!`
  18. ^ 堀江貴文氏、軽減税率をめぐる公明党の狙いを指摘「聖教新聞守るため」”. livedoorNews. livedoor (2015年12月19日). 2016年10月21日閲覧。
  19. ^ [2]問題だらけの軽減税率 ~天下り先確保、野放しの脱税、そして増税…得をするのは金持ちだけ


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