衝動買い 衝動買いの概要

衝動買い

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/29 06:58 UTC 版)

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類型

消費者の購入意思決定のタイミングを入店前/後で二分し[4]、入店前に特定のブランドや商品カテゴリを決めその予定通りに購入する行為は「計画購買」、逆に入店後の店内の刺激に誘発され予定に無かった商品を購入する行為は「非計画購買」と呼ばれ[4]、後者は広義の「衝動買い」に相当する[5]

購買行動分析の草分けの一人であるホーキンズ・スターンは、非計画購買を衝動買い (impulse buying) とほぼ同義としつつ、それを以下の4つに類型化した[6]

  • 純粋衝動購買 - 新奇性などに惹かれた、純粋に衝動的なもの
    • 「何このバッグ!? 可愛い! 欲しい!」
  • 想起的衝動購買 - 家での在庫切れなどを思い出して引き起こされるもの
    • 「そういえばトイレットペーパーが切れかけてたな。」
  • 提案需要型衝動購買 - その品の事前知識無しに、店内の刺激で購買するもの
    • 「お客様、スーツをお求めなら、このネクタイもいかがで。」「おっ、これはいいね!」
  • 計画的衝動購買 - 購入を考えつつ来店し、特売などの条件によって実際に購買を決めるもの
    • 「歳末セールで3割引きになってるぞ。これは買い時だ。」

真に衝動的感情に突き動かされているという点では、純粋衝動購買と提案需要型衝動購買こそ狭義の衝動買いと解釈しうるだろう[7]

また、スターンのモデルを踏まえつつ青木幸弘が次のように改めた非計画購買の類型化も[8]よく知られている[9]

  • 想起購買 - 入店時には忘却していた必要性が店内の刺激で想起されたもの
    • 「あ、ぼた餅を売ってる。そういえば明日はお彼岸だった。」
  • 関連購買 - 購入した他の商品の関連性から必要性が認識されたもの
    • 「カメラを買うとなると、メモリカードも揃えないとな。」
  • 条件購買 - 来店時の漠然とした購買意図が、価格など店内での情報を元に購買へ結び付くもの
    • 「タイムセール中かぁ。夕飯のおかずはこれにしちゃおう。」
  • 衝動購買 - 上記に属さない、真に衝動的なもの
    • 「何このバッグ!? 可愛い! 欲しい!」

この場合ならば最後の衝動購買が、世にいう真の意味での「衝動買い」に該当すると言えるだろう[9]

いずれにせよ消費者の購買行動を分析する際、非計画購買イコール衝動買いとしてしまうと購買行動全体に占めるその割合が高くなりすぎ、解明すべきポイントが曖昧になりがちなので留意が必要である[10]

消費者にとって

衝動買いの実行は、その人の所持金額、時間、精神的・肉体的努力に依存し[11]、特に気分の高揚やストレスの存在は衝動買いを促進させる[12]。その点で、衝動買いは単なる消費行動というよりは、幸福感・充足感を与える一種の娯楽という性質も持っている[13][14]

衝動買いは、「後悔」や「無駄遣い」を連想させる好ましくない行為[15]、非合理的で未熟な行為と世間一般からみなされる事が多い[16]。実際に多くの消費者が衝動買いを我慢しようという意識を持っており[15]、衝動買いは自制心と表裏一体という側面がある[11]。衝動買いに陥りやすい多重債務者を研究したケースでは、自制心の低さ、将来より今という価値観、破滅性・自暴自棄性、判断力欠如といった個人的特性が挙げられている[17]

女性は男性よりも衝動買いしやすく[12]、特に子育て中の主婦はその傾向が強まる[18]。また新奇性や驚きといった快楽傾向の強い人も衝動買いしやすい[12]

非計画購買の割合

商品カテゴリにもよるが、非計画購買という括りで見ると、それは計画購買に比べてかなり高い比率を占めていることが多くの調査で確かめられている[19][20]

夕方のスーパーで何を買うか決めている人は3割もいれば良いほう。[21] — 鈴木敏文(セブン&アイ・ホールディングス代表取締役会長)

日本のような成熟経済下の社会では生活必需品が既に行き渡り、その上でさらにモノがあふれ商品の選択肢が多様にあるため、気まぐれな非計画購買は多くなる[21]。特に近年の消費者は情報化社会による情報の氾濫に直面し、商品・サービスを生真面目に取捨選択する労力コストの高さに辟易しており(いわゆる情報過負荷状態[22])、多くの商品カテゴリで計画購買の割合が減りつつある[23]


  1. ^ デジタル大辞泉』小学館。2021年4月18日閲覧。
  2. ^ 日本国語大辞典』小学館国語辞典編集部、小学館、2001年、第2版。
  3. ^ 『スーパー大辞林』三省堂、3.0。
  4. ^ a b c d 高橋 (2008) p.171
  5. ^ 高橋 (2008) p.179
  6. ^ 高橋 (2008) p.180
  7. ^ 向井 (2014) p.57
  8. ^ 青木 (1989) p.72
  9. ^ a b 池内 (2018) p.52
  10. ^ >青木 (1989) pp.69-70
  11. ^ a b Luo (2006)
  12. ^ a b c d e 池内 (2018) p.56
  13. ^ a b 西山 (2017)
  14. ^ 向井 (2014) p.54
  15. ^ a b 向井 (2014) p.55
  16. ^ a b c 池内 (2018) p.53
  17. ^ 田村 (2012)
  18. ^ 「若者に買わせるには衝動買いを狙え」『週刊東洋経済』2012年2月11日、東洋経済新報社、2012年、 78-79頁。
  19. ^ a b c d e 道家 (2010) p.114
  20. ^ 青木 (1989) p.69
  21. ^ a b 松本 (2011) p.21
  22. ^ 齋藤 (2008) p.19
  23. ^ a b c d e 「オンライン上の消費行動を理解する Google 提唱の「パルス消費」とは」『販促会議』第275号、宣伝会議、2021年3月、 39-40頁。
  24. ^ a b 堀田 (2018)
  25. ^ 松本 (2011) p.25
  26. ^ 松本 (2011) p.23
  27. ^ 松本 (2011) p.24
  28. ^ 松本 (2011) p.16
  29. ^ 「マース、衝動買いの促進に小売業と協業」『流通情報』、流通経済研究所、2016年3月、 81頁。
  30. ^ 池内 (2018) p.59
  31. ^ 池内 (2018) pp.58-59
  32. ^ 由良 (2021)
  33. ^ 中山洋平 (2020年4月23日). “グーグルが提唱「パルス消費」 スマホ世代の消費行動の新事実”. 日経クロストレンド. 日経BP. 2021年4月25日閲覧。
  34. ^ a b 晝間 (2011)
  35. ^ 青木 (1989) p.106
  36. ^ a b c 道家 (2010) p.115
  37. ^ a b 道家 (2010) p.116


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