筑波研究学園都市 沿革

筑波研究学園都市

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/06 09:14 UTC 版)

沿革

筑波山麓
国際科学技術博覧会

1950年代東京は急激な人口増加によって過密状態となっていた。このため政府は、1956年昭和31年)に首都圏整備委員会(以下、委員会)を設置し首都機能の一部を移転することに関する検討を始めた。委員会は、都内のすべての大学を移転し70万人都市を建設する試案や都内のすべての官庁を移転し18万人都市を建設する試案などを立案していった。

1961年(昭和36年)9月、「首都への人口の過度集中の防止に資するため、各種防止対策の強化を図るべきであるが、先ず、機能上必ずしも東京都の既成市街地に置くことを要しない官庁(附属機関及び国立の学校を含む。)の集団移転について、速やかに具体的方策を検討するものとする。」とした閣議決定がなされ具体的な検討が始まった[3]。委員会は1963年(昭和38年)に移転の候補地として富士山麓赤城山麓那須高原筑波山麓の実地調査を行い、同年9月に筑波山麓(注:現在のつくば市と牛久市)に4,000haの研究学園都市を建設することが閣議了解された[4]。筑波山麓の利点として東京から距離が離れすぎていないこと、霞ヶ浦から十分な水が採取できること(水質汚濁1960年代以降)、地盤が安定した平坦地であること、鉄分の多い水質であったため土地所有者が農地を手離すことに理解があり、用地買収が容易だったこと[5]などが挙げられる。翌月、委員会は基本計画としてNVT(Nouvelle Ville de Tsukuba:筑波ニュータウン)案を提案するが激しい地元住民の反対にあった。その後、田畑・人家をできるだけ避け赤松林を中心に造成するため南北に細長くし、計画面積を2,700haに縮小した案を提案、試行錯誤しながら建設の計画を進めた。

1967年(昭和42年)9月、6省庁36機関(その後43機関に増加)を移転することを閣議了解、1968年(昭和43年)10月に旧科学技術庁防災科学技術センターが着工した。しかし多くの機関は工事に着工しなかったため、1970年(昭和45年)5月に筑波研究学園都市建設法を施行することで着実に都市建設と機関の移転が進み1980年(昭和55年)に機関の移転が終了した[1]。並行して都市機能の整備が進められた。1985年(昭和60年)には筑波の国内外における知名度の向上と民間企業の誘致のために国際科学技術博覧会(通称「科学万博」)が開催され、この前後数年の間に中心部の商業施設や交通機関が特に大きく拡充された。その後も住環境の都市化が進み、約300に及ぶ研究機関・企業と約1万3000人の研究者を擁するに至る。

なお、計画面積の縮小に伴い最も影響を受けたことの一つが共同利用施設の計画縮小である。そのため、省庁の枠を超えた研究機関同士の交流や産官学の連携は不十分なものになったが近年連携の強化を模索している。


注釈

  1. ^ 筑波郡谷田部町筑波町大穂町豊里町、新治郡桜村、稲敷郡茎崎町の6町村。
  2. ^ 新・旧住民の区分は学術論文や官公庁の資料にもそのまま採用されているので、この語をそのまま用いる。

出典

  1. ^ a b c d e f 『茨城県大百科事典』茨城新聞社、(1981)
  2. ^ a b つくば市FactBook2011”. p. 10. 2012年2月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年1月6日閲覧。
  3. ^ 内閣 (1961年(昭和36年)9月1日). “官庁の移転について”. 2011年7月18日閲覧。
  4. ^ 内閣 (1963年(昭和38年)9月10日). “研究・学園都市の建設について”. 2011年7月18日閲覧。
  5. ^ オーラル地域史「土浦と霞ヶ浦の自然を守る」奥井登美子(土浦の自然を守る会代表)、2009年8月8日
  6. ^ a b 「現在地、ひと目で - 学園都市主要道路にゲート設置」『いはらき』茨城新聞社、1985年3月19日付日刊、15面
  7. ^ 筑波研究学園都市建設法”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2020年1月28日閲覧。
  8. ^ 堀口純子 1980「筑波研究学園都市における新旧住民の交流とアクセント(1)」 『文藝言語研究. 言語篇』
  9. ^ 堀口純子 2006「筑波研究学園都市における新旧住民の交流とアクセント(2)」 『文藝言語研究. 言語篇』
  10. ^ 筑波研究学園都市の生活を記録する会編 1981年昭和56年) 『長ぐつと星空:筑波研究学園都市の十年 1, 2, 3』 筑波書林
  11. ^ 筑波研究学園都市の生活を記録する会編 1985年(昭和60年) 『続・長ぐつと星空:筑波研究学園都市のその後 上, 中, 下』 筑波書林(ふるさと文庫)
  12. ^ 国土交通省・筑波研究学園都市の歴史にみる都市づくりのあり方
  13. ^ 筑波研究学園都市研究機関等連絡協議会『平成25年度筑波研究学園都市外国人研究者等調査結果』
  14. ^ 筑波研究所移転の件(2006年2月2日)ダイセル化学工業






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