火星の植民 行程

火星の植民

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/16 15:06 UTC 版)

行程

火星は、エネルギー(速度変更)という点では地球から向かうことが最も簡単な惑星である。化学燃料ロケットを使っている限り、火星への旅には数か月の期間が必要であるものの、比推力可変型プラズマ推進機 (VASIMR)[1]原子力ロケットなどが実現すれば、2週間程度まで短縮できる[2]。ともあれ、現段階で実現可能な方法でも、現実的な時間で到達できる点は非常に大きい。

地球との類似点

火星

地球のすぐ内側を公転する金星は、その質量や半径などの点では地球によく似た惑星である。しかし、金星は大きさは同じくらいとはいえ、太陽から近いためあまりに高温であるのでサイズが地球よりかなり小さい火星の方が、人類移住の候補として注目を浴びている。これには次のような理由がある。

  • 火星の1日(火星日またはsol)は地球の1日に非常に近い。火星の太陽日は24時間39分35.244秒である[3]
  • もともと火星にはがあり、太陽からの距離を考慮すると地球と同じように生命が栄えてもおかしくなかった(重力磁気圏が地球に比べたら小さいので、地球で生命の出発点となった海をつなぎとめておくことができなかった)こと。
  • 火星の表面積は地球の28.4%で、地球の陸地(地球表面積の29.2%)と比べてわずかに少ない程度である。
  • 火星の赤道傾斜角は25.19°で地球の23.44°に近い。そのため、火星の季節は地球とよく似ている。ただし、火星の1年は地球の1.88年相当であるため、各季節は2倍近い期間続く。火星の天の北極こぐま座ではなくはくちょう座である。
  • 火星は大気を持つ。地球大気の0.7%と薄いものだが、多少なりとも太陽放射宇宙線を和らげる上、宇宙船が空力ブレーキを使うのに利用することもできる。
  • NASAマーズ・エクスプロレーション・ローバーフェニックスESAマーズ・エクスプレスなどによる21世紀初頭の観測は、火星にが存在するという主張を裏付けるものとなった。火星には地球型の生命を支えるのに必要な元素がかなりの量存在している可能性が高い[4]

地球との相違点

地球と火星の間には、当然違いもある。

  • 火星の表面重力は地球の1/3にすぎない。この重力下で低重力での健康上の問題が発生しないかどうかはよく分かっていない。
  • 火星は地球と比べて非常に寒く、平均表面温度は-43で、最低温度は-140℃である。
  • 火星表面に液体の存在は確認されていない。
  • 火星は太陽から遠いため、表面に届く太陽のエネルギーの量(太陽定数)は、地球やに届く量の半分程度でしかない。
  • 火星の軌道は地球のそれよりも潰れた楕円であるため、太陽との距離の変化が大きく、温度や太陽定数の変化を激化させる。
  • 火星の気圧は、人間が与圧服無しで生存するには低過ぎる。従って、火星表面に作る居住施設は宇宙船のように与圧式にする必要がある。
  • 火星の大気は薄いが主成分は二酸化炭素であるため、火星表面でのCO2分圧は地球の52倍にもなる。(もっとも、このため火星上で植物は生育可能かもしれない。)
  • 火星は2つの衛星フォボスダイモスを持っている。フォボスとダイモスは地球のと比べてはるかに小さく距離も惑星に近い。これらの衛星を小惑星の植民の実験場として活用することも考えられている。
  • 火星の磁気圏はとても弱く、太陽風を防ぐのに十分ではない。

  1. ^ Variable-Specific-Impulse Magnetoplasma Rocket”. NASA (2001年9月1日). 2011年7月23日閲覧。
  2. ^ Zubrin, Robert (1996). The Case for Mars: The Plan to Settle the Red Planet and Why We Must. Touchstone. ISBN 0-684-83550-9 
  3. ^ Mars24 Sunclock — Time on Mars” (英語). NASA (2015年6月30日). 2016年11月1日閲覧。
  4. ^ Sibling Rivalry: A Mars/Earth Comparison”. NASA (2004年4月21日). 2011年7月23日閲覧。
  5. ^ Atmospheric Flight on Venus” (PDF). NASA (2002年6月). 2011年7月23日閲覧。
  6. ^ Higher, Farther, and Longer — Record Balloon Flights in the Second Part of the Twentieth Century”. NASA. 2011年7月23日閲覧。
  7. ^ Barometric Pressure vs. Altitude Table”. Sable Systems. 2011年7月23日閲覧。
  8. ^ Remarks as Prepared for Delivery By the Honorable Shana Dale, NASA Deputy Administrator”. NASA. 2008年12月6日閲覧。
  9. ^ Technological Requirements for Terraforming Mars”. The Terraforming Information Pages. 2011年7月23日閲覧。
  10. ^ Space Radiobiology”. NASA (2010年1月27日). 2011年7月23日閲覧。
  11. ^ Zubrin, Robert (1996). The Case for Mars: The Plan to Settle the Red Planet and Why We Must. Touchstone. pp. 114–116. ISBN 0-684-83550-9 
  12. ^ During Solar Conjunction, Mars Spacecraft Will Be on Autopilot”. NASA (2006年10月20日). 2011年7月23日閲覧。





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