我
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/04 17:07 UTC 版)
大乗仏教
大乗仏教では、個体としての我(人我)だけでなく、存在を構成している要素の実体(法我)をも否定して人法二無我を説き、全てのものが無自性であるとする[2]。
部派仏教における究極的な涅槃は、全てのものが無常・苦・無我で不浄であると悟って煩悩を滅し尽くした境地であるとされたが、大乗仏教では、全てのものがもともと空であることを悟った涅槃の境地は絶対的な自由の境地であり、常・楽・我・浄の徳をもつとする[2]。ここにおける我は、凡夫の考える小我と区別され大我や真我[注釈 2]といわれる[2]。
龍樹
問うて曰く、若し仏法中に一切法は空にして一切に我あること無しといわば、いかんが仏の経に初頭に如是我聞というや
と問い、
無我は了解しているが、俗法(言語習慣、言い習わし)に随って我といったので、それは実我ではない
と述べている。
日常用語・慣用句
- 一人称
- 日常会話で使われる範囲では、日本語の一人称の一つであるが、フィクションや成句以外で使われることは滅多にない。ただし、関西地方など、一人称を二人称に転用する時に使われる場合がある(例:ワレは~)。また、自己主張、我儘などを指して「我(が)の強い人間」という表現もある。普通話では /wŏ/ と読み、広東語では /ngo5/ と読む。
- 天上天下唯我独尊
- 天の上にも下にも尊い者は自分一人である、という言葉。仏陀が生まれた時、両手の親指でそれぞれ天地をさしてこれを表していたという伝説がある。現代では、極端なナルシズムやエゴイズムを批判して使われることが多い。
- 我思う、故に我あり
- デカルトの言葉。懐疑論によってあらゆる事象の根拠が揺らいだとしても、自分が思考しているという事実は思考によって否定されえず、ゆえに自分の存在も否定されえない確かな物である、という意味。
- 和歌・俳句
- 我こそは新島守よ隠岐の海の荒き波風心して吹け : 後鳥羽天皇
- 我のみやあはれと思はん蛬なくゆふかげのやまとなでしこ : 素性法師『寛平御時后宮歌合』
- 吾はもや安見児得たりみな人の得がてにすとふ安見児得たり : 藤原鎌足
- われを思ふ人を思はぬむくいにやわが思ふ人の我を思はぬ : 『古今和歌集』(読み人知らず)
- 我と来て遊べや親のない雀 : 小林一茶
注釈
出典
- ^ 『我』 - コトバンク
- ^ a b c d e f g h i j k l m 総合仏教大辞典編集委員会(編)『総合仏教大辞典』 上巻、法蔵館、1988年1月、158-159頁。
- ^ a b 望月信亨 編『望月仏教大辞典 第1巻 (アーケ)』世界聖典刊行協会、1954年、我見。doi:10.11501/3000331。
- ^ Harvey 1995b, p. 17.
- ^ Harvey 1995b, pp. 17–19.
- ^ Charles Johnston (2014). The Mukhya Upanishads. Kshetra Books (Reprint), Original: OUP (1931). pp. 706–717. ISBN 978-1-4959-4653-0
- ^ [a] Michael Daniels (2013). Harris L. Friedman. ed. The Wiley-Blackwell Handbook of Transpersonal Psychology. Glenn Hartelius. John Wiley & Sons. p. 26. ISBN 978-1-118-59131-4
[b] Eugene F. Gorski (2008). Theology of Religions: A Sourcebook for Interreligious Study. Paulist Press. p. 90. ISBN 978-0-8091-4533-1;
[c] Forrest E. Baird (2006). Classics of Asian Thought. Pearson Prentice Hall. p. 6. ISBN 978-0-13-352329-4 - ^ Harvey 1995b, pp. 17–28.
- ^ Peter Harvey (2013). The Selfless Mind: Personality, Consciousness and Nirvana in Early Buddhism. Routledge. pp. 1–2, 34–40, 224–225. ISBN 978-1-136-78336-4
- ^ 『狭衣物語』
- ^ 式亭三馬『浮世床』
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