悪魔 悪魔の概要

悪魔

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/09 01:51 UTC 版)

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ミケランジェロ作「大アントニオスの苦悩」。様々な誘惑をする悪魔達にもがき苦しむ大アントニオスを描いている。
アルハンゲリスク州の都市の紋章, ロシア, 悪魔との天使の戦いミカエルを示している。

悪魔は、仏教では仏道を邪魔する悪神を意味し、煩悩のことであるとも捉えられる[1]キリスト教ではサタンを指し、を誹謗中傷し、人間を誘惑する存在とされる[2]。サタン以外の西洋文化の悪霊(デーモン)も現代日本語では一般に悪魔と呼ばれたりする。イスラム教においては悪魔はシャイターンイブリースと呼ばれる。

宗教によっては神に敵対するものを指し、他宗教の神々への蔑称ともなる(後述)。

日本語の悪魔

漢語の「悪魔」は本来、漢訳仏典に由来する仏教語であるが、現代日本語では西洋のサタン、デビル、デーモンの訳語としても用いられている[3]ハビアンの『破提宇子』には「じゃぼ」(ポルトガル語の Diabo の音訳)、「悪魔」、「天狗」、「鬼物」といった、キリシタンによるキリスト教の悪魔の翻訳例が示されている[4]

仏教語としての悪魔はサンスクリット語マーラの音訳「魔羅」「魔」と同義である。「」という漢字は、死者を指し超自然的なものを含意する意符「」と、マーラの音を表す音符「麻」とを組み合わせたものである。唐の湛然によれば、古くは「磨」と書かれていたのをの武帝蕭衍以来「魔」と書くようになったという(『止観輔行伝弘決』: 「古訳経論 魔字従石 自梁武帝 謂魔能悩人 字宜従鬼」)。これは康煕字典にも記されている通説であるが、梁の武帝よりも前の時代に書写されたと推定される「魔」の字を含む考古学史料が存在する[5]。日本の民俗信仰では、災いをなす原因と想定されるモノを漠然と擬人的に「悪魔」と呼ぶようになった[6]通り悪魔も参照)。

西洋語の悪魔

悪魔・魔王を指す西洋語の「デビル」 (: Devil, : Teufel) はヘブライ語のサタンのギリシア語訳ディアボロス (古希: Διάβολος: Diabolus) から派生した言葉であり、キリスト教の神に敵対する存在を指す。

悪魔とも悪霊とも和訳される西洋語の「デーモン」(フランス語読みで「デモン」とも)の語源は、ギリシア語のダイモーン古希: δαίμων、ラテン翻字 daimon)である(デーモンを指す西洋諸語 : demon, : Dämon はギリシア語のダイモーンから派生した)。ダイモーンのラテン語綴り daemon はキリスト教的文脈においてほぼ悪霊・悪魔の意味で用いられている。英語でも daemon は demon と同様に [diːmən] と発音され、ギリシア神話のダイモーンの意味で用いられる場合もあるが、悪霊としての demon の別綴りとして用いられることもある[7]

デビルとデーモンはいずれも、ラテン語で神を意味するデウス (deus) と同様に、サンスクリットを意味する語である「デーヴァ」(देव女性形は「デーヴィー」 देवी)と同じ印欧祖語語根 div (輝く)の派生であるという説もある[8]

英語での悪魔の俗称「オールド・ニック Old Nick」は北欧神話の「オーディン Woden」に他ならないという説がある[9]


  1. ^ a b 中村元福永光司田村芳朗、今野達、末木文美士 編 『岩波 仏教辞典 第二版』 岩波書店、2002年、p.6
  2. ^ 大貫隆、名取四郎、宮本久雄、百瀬文晃 編 『岩波キリスト教辞典』 岩波書店、2002年、pp.16-17
  3. ^ 南條竹則 『悪魔学入門』 講談社、2010年、pp.20-21
  4. ^ 芥川龍之介『るしへる』 - 青空文庫
  5. ^ 船山徹 『仏典はどう漢訳されたのか - スートラが経典になるとき』 岩波書店、2013年、185-187頁。
  6. ^ 福田アジオ、新谷尚紀、湯川洋司、神田より子、中込睦子、渡邊欣雄 編 『精選 日本民俗辞典』 吉川弘文館、2006年、p.9 「悪魔」(池上良正 筆)
  7. ^ 『リーダーズ英和辞典』、『ジーニアス英和大辞典』など。
  8. ^ フレッド・ゲティングズ 『悪魔の事典』 青土社
  9. ^ S・ベアリング=グールド著、今泉忠義・訳『民俗学の話』角川文庫、1955年、62p。
  10. ^ 稲垣良典 『天使論序説』 講談社学術文庫
  11. ^ a b c d シュメルツァー 1993, pp. 54–61.
  12. ^ [監修]岡田温司『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』ナツメ社 p166
  13. ^ a b 谷口茂(編}『宗教における罪悪の諸問題』 山本書店 1991年 ISBN 4-8414-0163-6 pp.151-157.
  14. ^ 田中雅志 『魔女の誕生と衰退』 三交社、2008年、pp.34-41
  15. ^ J・B・ラッセル 『ルシファー 中世の悪魔』 野村美紀子訳、教文館、1989年、p.32
  16. ^ テモテヘの第一の手紙(口語訳)#3:7
  17. ^ テモテヘの第二の手紙(口語訳)#2:26
  18. ^ ヤコブの手紙(口語訳)#4:7
  19. ^ ヨハネの第一の手紙(口語訳)#5:19
  20. ^ J・B・ラッセル 『ルシファー 中世の悪魔』 野村美紀子訳、教文館、1989年、p.52
  21. ^ 大貫隆、名取四郎、宮本久雄、百瀬文晃 編 『岩波キリスト教辞典』 岩波書店、2002年、p.17 「悪魔」(大貫隆筆)
  22. ^ 誠信書房 『新佛教辞典』
  23. ^ ルーサー・リンク 『悪魔』 高山宏訳、研究社出版、1995年、p18
  24. ^ J・B・ラッセル 『悪魔の系譜』(新装版)、大瀧啓裕訳、青土社、2002年、p16
  25. ^ A・リチャードソン、J・ボーデン編 『キリスト教神学事典』 古屋安雄監修、佐柳文男訳、教文館、2005年、p25
  26. ^ J・B・ラッセル 『ルシファー 中世の悪魔』 野村美紀子訳、教文館、1989年、pp.51-52
  27. ^ "devil", Encyclopædia Britannica. 2007. Encyclopædia Britannica Online. 29 June 2007.
  28. ^ ダイアン・フォーチュン 『心霊的自己防衛』 国書刊行会 pp.90-91
  29. ^ ジョン・R・ヒネルズ『ペルシア神話』井本英一、奥西峻介訳 青土社 1993年 ISBN 4791752724 pp.107-119.






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