咽頭炎 分類

咽頭炎

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 13:34 UTC 版)

分類

ウイルス性

伝染性単核球症

ウイルス性は、すべての感染症例のおよそ40–80%を占めており、様々なウイルス感染症の特徴となっている[7][8]

細菌性

レンサ球菌咽頭炎

かぜ症候群と異なり、急激に症状が出現することが典型的である。咽頭炎の症状としては急性の高熱、喉の痛み、腫れであり鼻水は少ない。原因としては60%がウイルス性であり、40%が細菌性であると言われている。重要な鑑別疾患としては伝染性単核球症ジフテリアHIV淋病亜急性甲状腺炎咽頭結膜炎などがあげられる。細菌性咽頭炎の場合はほとんどの場合は化膿性レンサ球菌が原因であるため、ほとんどの場合はペニシリンが著効する(溶連菌のペニシリン感受性は100%)。

細菌性咽頭炎はA群β溶血性連鎖球菌による感染症が合併症対策として非常に重要である。合併症は非化膿性合併症と化膿性合併症に分類される。非化膿性合併症としてはレンサ球菌感染後糸球体腎炎IgA腎症、急性リウマチ熱が重要である。化膿性合併症としては咽頭膿瘍、中耳炎副鼻腔炎、壊死性筋膜炎がなどが知られている。糸球体腎炎、IgA腎症以外は抗菌薬投与によって予防が可能であるとされている。咽頭炎後、翌日に肉眼的血尿が出現したらIgA腎症、2週間後ならば急性糸球体腎炎というところが小児科における典型的な病歴である。予防が特に重要な点はリウマチ熱である。リウマチ熱は抗菌薬が頻用されるようになってから激減した。リウマチ熱の症状としては心炎、多発性関節炎、舞踏病、有縁性紅斑、皮下結節(ここまでが大基準)、関節痛、発熱、血沈やCRP上昇、PR延長(ここまでが小基準)などが知られている。小児期のリウマチ熱発症は老年期に心臓弁膜症(特に僧帽弁狭窄症)を起こし心房細動、血栓症(特に脳梗塞)を起こすことが知られており、予防が重要である。ジョーンズの基準が世界的によく用いられており、大基準2つ、または大基準1つと小基準2つを満たし、A群β溶血性連鎖球菌の感染を証明する方法、咽頭培養やA群β溶血性連鎖球菌迅速診断キット(Rapid Antigen testとしてクリアビューストレップAが有名)で陽性、ASLO陽性にて診断ができる。高齢者の弁膜症の場合は、発症当時ジョーンズの基準がないため、注意深い問診が必要となる。A群β溶血性連鎖球菌以外の細菌性咽頭炎の場合は抗菌薬を投与しても自覚症状がわずかに軽減するのみであり、メリットはほとんどない。

A群β溶血性連鎖球菌による咽頭炎の診断は非常に重要であるためいくつかの診断法がある。centor criteria及びカナダルールが有名である。centor criteriaでは扁桃腺の白苔、圧痛を伴う前頸部リンパ節腫脹、病歴に発熱がある、咳を認めない、以上の4項目中3項目を満たせば感度75%,特異度75%でA群β溶血性連鎖球菌による咽頭炎と診断できる。ゴールドスタンダードは咽頭培養であるが、時間がかかるため実用的ではない。近年はA群β溶血性連鎖球菌迅速診断キット(Rapid Antigen testとしてクリアビューストレップAが有名)で陽性ということで行うことも多く、この場合は感度90.8%で特異度は96.0%である。カナダルールというものがよく知られている。熱が38度以上、咳がない、前頸部リンパ節腫脹を認める、扁挑がはれている、または扁挑に浸出物がある、年齢が3~14歳であるという項目に対してイエスといった数を数える。なお年齢が45歳以上の場合は-1とする。合計点が1以下である場合は細菌性咽頭炎ではなく、2点以上である場合は咽頭培養、または(感度は落ちるものの)溶連菌迅速検査を用いて検査後、ペニシリンを投与して良いとされている。4点以上の場合はエンピリックにペニシリンを投与する場合もある。

化膿性咽頭炎の治療は抗菌薬の投与であるが、これにはいくつかの考え方がある。それは伝染性単核球症との区別の問題、マクロライド耐性菌の存在、ニューキノロンによる結核の診断困難などがあげられる。伝染性単核球症はペニシリン特にアモキシシリンの投与によって皮疹が出現してしまう。これは30歳以前に多いとされている。胸鎖乳突筋より前にある前頸部リンパ節に圧痛がある場合は細菌性咽頭炎であることが多く、胸鎖乳突筋より後方にある後頸部リンパ節に圧痛があるばあいは伝染性単核球症である確率が高いと言われている。30歳以前ではバイシリン(バイシリンG顆粒)というペニシリン製剤がよく利用される。これはアモキシシリンとは異なり皮疹を起こすリスクが低いといわれている。それ以外にクリンダマイシンアジスロマイシンミノサイクリン(但し20歳以後)が用いられることがある。30歳以後では伝染性単核球症のリスクが低いことからアモキシシリン(商品名はパセトシン細粒やサワシリン)も処方可能である。いずれにせよ、ニューキノロンは使わない方が安全である。

インフルエンザ

インフルエンザウイルスによる感染症。RSウイルスパラインフルエンザウイルスによってもほぼ同様の症状が出る(インフルエンザ様疾患という)ためワクチンを打ったのにインフルエンザになったというエピソードが生まれることがある。インフルエンザは冬に多く、インフルエンザ様疾患は春や夏に多いという特徴がある。インフルエンザの症状としては、急性の高熱、悪寒、関節痛、のどの痛み(ただし咽頭の発赤、腫脹はない)、咳、鼻水などがあげられる。通常は自然治癒するが高齢者は重症化し死に至ることもあるため予防が大切と言われている。空気感染飛沫核感染)するため、感染者は5日間の就業停止が望ましいと言われている。特に高齢者との接触は避けたいところである。また抗菌薬の投与に肺炎の予防効果はないと言われている。診断は高熱、関節痛、筋肉痛といった全身症状が強く、咽頭発赤など局所症状がその割に弱いことで疑い、迅速診断キットにて診断する。迅速診断キットは発症(大抵は発熱)後12時間経過していないと偽陰性率が高いことが知られている。発症後48時間ならば抗インフルエンザ薬が効果的である。治療薬としてオセルタミビルザナミビルが有名である。インフルエンザにはA型、B型の2種類が知られているがこれらはどちらにでも効く。健常者にオセルタミビルを使っても症状回復を1日早めるものの感染期間(伝染させる期間)は縮まないこと、肺炎など合併症は減少しないこと、死亡率が下がらないことから高齢者、ハイリスク患者を除いては積極的に投与する意義は薄いと考えられている。ザナミビルは吸入薬であり、高齢者は吸入が苦手な場合があること、まれに気管支痙縮を起こす可能性があることから、気管支喘息の患者への投与には注意が必要である。A型インフルエンザの場合はシンメトリル(アマンタジン)が有効な場合もあるが、20〜80%が耐性化しているという報告がある。なお、インフルエンザの時、解熱剤にNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を使用するとインフルエンザ脳症を起こす可能性があるため、アセトアミノフェンが推奨される。

性感染症

淋菌クラミジアの治療に準じる。セフトリアキソン1g点滴投与及びアジスロマイシン250mg 4錠分1を投与する。必ずパートナーも治療する。


  1. ^ a b c d e f g h i j Hildreth, AF; Takhar, S; Clark, MA; Hatten, B (September 2015). “Evidence-Based Evaluation And Management Of Patients With Pharyngitis In The Emergency Department.”. Emergency Medicine Practice 17 (9): 1–16; quiz 16–7. PMID 26276908. 
  2. ^ a b Rutter, Paul Professor; Newby, David (2015) (英語). Community Pharmacy ANZ: Symptoms, Diagnosis and Treatment. Elsevier Health Sciences. p. 19. ISBN 9780729583459. オリジナルの8 September 2017時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170908192747/https://books.google.com/books?id=NbjVCgAAQBAJ&pg=PA19 
  3. ^ Neville, Brad W.; Damm, Douglas D.; Allen, Carl M.; Chi, Angela C. (2016). Oral and maxillofacial pathology (4th ed.). St. Louis, MO: Elsevier. pp. 166. ISBN 9781455770526. OCLC 908336985. https://www.clinicalkey.com/dura/browse/bookChapter/3-s2.0-C20110077025 
  4. ^ Pharyngitis”. National Library of Medicine. 2016年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  5. ^ a b Weber, R (March 2014). “Pharyngitis.”. Primary Care 41 (1): 91–8. doi:10.1016/j.pop.2013.10.010. PMC 7119355. PMID 24439883. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7119355/. 
  6. ^ Jones, Roger (2004) (英語). Oxford Textbook of Primary Medical Care. Oxford University Press. p. 674. ISBN 9780198567820. https://books.google.com/books?id=2LB0PC17uFsC&pg=PA674 2016年8月4日閲覧。 
  7. ^ a b Marx, John (2010). Rosen's emergency medicine: concepts and clinical practice (7th ed.). Philadelphia, Pennsylvania: Mosby/Elsevier. Chapter 30. ISBN 978-0-323-05472-0 
  8. ^ Acerra JR. “Pharyngitis”. eMedicine. 2010年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年4月28日閲覧。






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