ホンダ・RVF ホンダ・RVFの概要

ホンダ・RVF

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 00:33 UTC 版)

概要

排気量400ccクラスの普通自動二輪車ならびに750ccクラスの大型自動二輪車で、ホンダ・レーシング(HRC)が開発し1985年から投入されたレース専用ワークスマシンおよび1994年に発売された公道走行可能モデルに使用された商標である。

モデル別解説

本項では競技専用モデルと公道走行モデルにわけて解説を行うが、いずれのモデルも以下の共通点がある。

競技専用モデル(1984 - 1993年モデルまで)

RVF400・RVF750の2モデルが製造された。

RVF400

RVF400
TT-F3クラス1986年スポーツランドSUGO優勝車
ホンダコレクションホール所蔵

1984年から開催された全日本ロードレース選手権TT-F3クラス[注 2]用に開発され、1985年から投入された。モデルコードはNW0

レギュレーションで公道用市販車をベースにすることを規定されたことからVF400F(NC13)が基になるが[注 3]、エンジンもシリンダーヘッド/ブロックを生産車ベースのモノを使う以外は全くの別の「レース専用ワークスマシーン」として誕生した。カムギアトレーンならびに軽量高剛性のチタン合金製ピストンバルブ・コンロッドの採用。キャブレター挟み角を72°から52°へと変更しストレートインテーク化の実施[4]1986年モデルで最高出力70ps以上/13,500rpm・最大トルク3.85kg-m/11,000rpmのスペックを発揮[2]。変速機は常時噛合式6段リターントランスミッションを搭載する[2]

フレームもVF400Fのダブルクレドール型[1]に対してアルミ製ツインチューブダイヤモンド型と全くの別物である[4]。またサスペンションフロントが正立テレスコピック、リアがプロリンクとなっている。乾燥重量は128kgである[2]

全日本ロードレース選手権での戦績は1985年1986年に山本陽一が、1987年田口益充が年間チャンピオンを獲得している。国際A級TT-F3カテゴリー廃止の1988年までレースに投入された。

RVF750

RVF750
1985年モデル(左)1991年モデル(右)
フロントフォーク(正立・倒立)
リヤサスペンション(プロリンク・プロアーム)
ボディカウル・タンク形状の差異に注意
ホンダコレクションホール所蔵車両

1984年から開催された全日本ロードレース選手権TT-F1クラス[注 4]ならびにスーパーバイククラス[注 5]、さらに国際モーターサイクリズム連盟(FIM)が主催する世界耐久選手権(EWC)及びマン島TTレース参戦用のモデル。モデルコードはNW1[5]。ベースモデルはRC15型VF750Fで1984年に投入されたRS750R[注 6]を経て開発された[7] 。改造範囲は上記RVF400同様にアルミツインチューブダイヤモンド型フレームや後輪プロリンクサスペンションのほか多岐に渡っており、点火順序変更をしたほか集合方式が4into2into1のマフラーを装着し[7]、車重は約140kgで最高出力は130ps以上とされた[8]

1985年にモデルコードNW1Aが投入されて以降、以下で解説する改良が行われた[5]

1986年モデル:NW1B
リヤサスペンション及びスイングアーム懸架方式を片持ち式プロアームへ変更。
1987年モデ:NW1C
1986年の鈴鹿8時間耐久ロードレースワイン・ガードナー/ドミニク・サロン組へ先行投入。エンジンをRC24型VFR750Fベースへ変更。
1988年モデル:NW1D
ベース車をVFR750R(RC30)へ変更。
1989年モデ:NW1G
1988年モデルを熟成させる小変更。最高出力142.3psのスペックを発揮。
1990年モデル:NW1H
カウル前面にメッシュ穴を加工を施すなど細部に至る部分まで見直し前年モデルと比較し約7kgの軽量化。この年を最後に鈴鹿8耐を除く世界耐久選手権から撤退。
1991年モデル:NW1K
前年までレギュレーション上許されていた1%のボアアップ禁止化およびガス欠防止対策[注 7]に対応。フロントフォークを倒立式サスペンション化。この年を最後にTT-F1カテゴリが終了。
1992年モデル:NW1P
1992年式RVF750
同1992年式RVF750
ラムエアインテークを採用したほか、エンジン・車体剛性など13項目を改良。
RVF750 最終1993年モデル
ホンダコレクションホール所蔵車両
1993年モデル:NW1P
ライディング中の辻本聡氏(1993年鈴鹿8耐)
最終モデル。カウルやタンク形状を変更。こののちの車両は後述のRVF/RC45をベース車両に引き継がれる。1993年の世界耐久選手権第5戦・鈴鹿8時間耐久レースで2位入賞。前輪に16.5インチの新サイズタイヤを装着していた(No.7 E.ローソン/辻本聡)。

以下は主な獲得タイトルである。

FIM世界耐久選手権
  • 全日本ロードレース選手権TT-F1クラス
    • 1988年・1990年・1991年

公道走行可能モデル

400cc・750cc共にレーサーレプリカに分類されるモデルであるが、750ccモデルはスーパーバイククラス用のホモロゲーションマシンを兼ねて製造販売された。


注釈

  1. ^ 系譜的には1979年に開発されたNR500がルーツとなり、公道走行可能な市販車としては1982年に発売されたVFシリーズにフィードバックされた[1]
  2. ^ 4ストローク400cc以下または2ストローク250cc以下の公道用市販車をベースにしたバイクによって競われるクラス。
  3. ^ 本田技研工業公式HPでは市販車VFR400Fをベースにしたワークスレーサーと記載されているが[2]、NC21型VFR400Fの発売は本モデルレース投入後の1986年である[3]
  4. ^ 4ストローク750cc以下または2ストローク500cc以下の公道用市販車をベースにした改造バイクによって競われるクラス。市販車のクランクケースを使用していれば、フレーム交換やサスペンションの構造変更も可能であり、1988年からはスーパーバイク仕様でのエントリーも可能であった。
  5. ^ 4ストロークエンジンを搭載する公道用市販車をベースにした改造車によって競われる。4気筒の場合は600cc超750cc以下、3気筒では600cc超900cc以下、2気筒では750cc超1000cc以下と、気筒数によって排気量制限が変わるクラス。
  6. ^ 本モデル以前のワークス耐久レーサーには、RCB→RS1000が投入されていたが、本田技研工業では1984年から世界耐久・TT-F1の排気量が750ccとなるレギュレーションの変更を見越しており、1983年にV型4気筒エンジンを含め試作要素の高いRS850R[6]を投入した経緯がある[7]
  7. ^ 1990年の鈴鹿8時間耐久ロードレースで2位走行中だったワイン・ガードナー/マイケル・ドゥーハン組がガス欠でリタイアしたことから、リザーブコックと給油口に透明の覗き窓を装着した[8]
  8. ^ VFR400R:1速:2.928 - 2速:2.166 - 3速:1.800[10]/RVF:1速:3.307 - 2速:2.352 - 3速:1.875[9] なお4速:1.590 - 5速:1.434 - 6速:1.318ならびに1次減速比2.117・2次減速比2.666は共通である[10][9]
  9. ^ 北海道は17,000円高、沖縄は9,000円高、その他一部地域を除く[9]
  10. ^ 前身モデルのRC30型VFR750Rが1987年に発売された際も希望小売価格1,480,000円と当時の日本最高額と話題になったが[13]、本モデルと同時期に本田技研工業が販売していた他の大型自動二輪車の消費税抜希望小売価格は、RC36型VFR750Fが839,000円[14]RC42型CB750が689,000円[15]SC30型CB1000SFが920,000円[16]である。
  11. ^ 北海道は20,000円高、沖縄は10,000円高、その他一部地域を除く[11][17]
  12. ^ 1998年に本エンジンのストロークを2mm拡大し排気量781ccとしたRC46E型を搭載したVFRが発売された[18]2022年まで基本設計を継承したRC79E型を搭載するRC79型VFR800F・RC80型VFR800Xが製造販売された。
  13. ^ ハイシリコンアルミニウムの粉末に、耐久性を向上させるセラミックスグラファイトを添加し、熱間押し出し成形した素材[11]

出典

  1. ^ a b 1982年12月10日プレスリリース
  2. ^ a b c d 本田技研工業公式HP 1986 RVF400
  3. ^ 1986年3月20日プレスリリース
  4. ^ a b c d THE444RR大全・2 HONDA VFR/RVF - Web Mr.Bike モーターマガジン社
  5. ^ a b 鈴鹿8耐・栄光のTT-F1マシン[1984-1993] - - Web ヤングマシン 内外出版社 2019年7月11日
  6. ^ 本田技研工業公式HP 1983 RSR850R
  7. ^ a b c HONDAコレクションホール所蔵車両 走行確認レポート 闘うDNA 二輪編その3 - Web Mr.Bike モーターマガジン社
  8. ^ a b 本田技研工業公式HP 宮城光の鈴鹿8耐歴代ロードレーサの鼓動 第4話 グランプリマシンより熱いRVF750
  9. ^ a b c d e f g h 1994年1月12日プレスリリース
  10. ^ a b c 1988年12月6日プレスリリース
  11. ^ a b c d e f g 1994年1月7日プレスリリース
  12. ^ 高度な最新技術を採用したV型4気筒エンジン搭載のスーパースポーツバイク「ホンダ RVF/RC45」を'95シーズンに向け限定発売”. www.honda.co.jp. 2022年3月17日閲覧。
  13. ^ 1987年7月24日プレスリリース
  14. ^ 1990年2月20日プレスリリース
  15. ^ 1992年2月20日プレスリリース
  16. ^ 1994年6月28日プレスリリース
  17. ^ 1994年8月22日プレスリリース
  18. ^ 1998年4月10日プレスリリース
  19. ^ RC45 ワークスレーサー譲りのスペックを市販車に投入したV4マシン - バイクのニュース 2019年11月14日
  20. ^ a b c 『RACERS Vol.65 RVF/RC45 ホンダV4最後の栄光: RVF/RC45 Part2<'97-'99>.』三栄書房、2022年。ISBN 978-4-7796-4682-9 
  21. ^ a b c 『RACERS - Vol.63 RVF / RC45 スーパーバイクのために開発された最後のV4レーサー』三栄。 
  22. ^ 【第20回優勝ホンダ RVF/RC45】 真夏の鈴鹿8耐、第1回大会1978年から現在までの歴代優勝マシンを紹介。 - 8耐をもっと知ろう!"コカ・コーラ"鈴鹿8耐 特設サイト”. suzuka8hours.lrnc.cc. 2024年1月3日閲覧。
  23. ^ 『RACERS - Vol.41 VTR1000 SPW』三栄。 
  24. ^ 2000年HONDA二輪モータースポーツ計画”. global.honda. 2024年3月10日閲覧。


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