タラス・シェフチェンコ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/14 13:38 UTC 版)
概要
タラス・シェフチェンコは1814年3月9日[3]、ロシア帝国領ウクライナ、キエフ県モールィンツィ村[4]の農奴の家庭にて、父フリホーリィ・シェフチェンコ(英: Hryhoriy Ivanovych Shevchenko)と母カテリーナ(英: Kateryna Shevchenko)のあいだに生まれた。 一家は翌年、近隣のキリーリフカ村(現在のシェフチェンコ村、Шевченкове)へと移る[5]。彼らが生活したのはドイツ系ロシア貴族のヴァシーリィ・エンゲリガルト(Енгельгардт Василь Васильович)の所領であった[5]。 幼い頃より村の教会学校で読み書きを習いながら、絵画を独学していたが、1823年(9歳)に母、25年(11歳)に父を失ってしまう[6]。孤児となったシェフチェンコは、教会の住み込みとして輔祭のもとで働きながら教会スラヴ語の読本や祈祷書などに親しんだ[6]。その後1828年、14歳の時にヴィリシャーナ村にて(先代ヴァーシリィの跡を継いでいた[6])パヴェル・エンゲリガルドトの家庭で小使を務めはじめた。
1829年にはエンゲリガルトに随伴して、ロシア帝国領リトアニアのヴィリニュスへ移り、1831年以降は帝国の首都ペテルブルクに住むようになった。地主はシェフチェンコを家庭画家にする予定があったので、シェフチェンコはロシア画家V.シリャイエフの弟子となり、美術を習うこととなった。この頃から、シェフチェンコは密かに詩を書くようになる。
シェフチェンコの作品はロシアの画家たちカール・ブリューロフ、イヴァン・ソシェンコ、アレクセイ・ヴェネツィアノフと、詩人たちヴァシリー・ジュコフスキーとイェヴゲン・フレビーンカなどによって高く評価され、1838年にシェフチェンコ自身は彼らの努力によって農奴制から解放された。同年、上述した文化人たちの推薦によってシェフチェンコはロシア帝国美術大学に入学し、ブリューロフの弟子となった。
1840年にシェフチェンコは、美術大学に在籍しながら、有名な詩集『コブザール 』を著した。詩集はウクライナ語で書かれていたので、ヴィッサリオン・ベリンスキーをはじめとするロシアの知識人はシェフチェンコを「いなかっぺの言葉」を用いる「いなかっぺの詩人」として鋭く批判した。一方、ウクライナの文化人たちは、『コブザール』を絶賛した。都の批判に対しシェフチェンコは、ウクライナ・コサック時代を英雄化する『ハイダマークィ』(1841年)と『ハマリア』(1844年)という二つの物語詩を出版した。
1843年にシェフチェンコはウクライナに戻り、史学者ムィハーロ・マクスィモーヴィチと作家パンテレイモーン・クリーシュと知り合い、『絵のように美しいウクライナ』という絵画シリーズを作り始めた。大学に戻ったシェフチェンコは、1844年に反農奴制と反帝国主義を説く『夢』という政治的物語詩を著した。同じく農奴である役者、ミハイル・シェープキンとも交流があった。
- ^ a b “Encyclopædia Britannica. Taras Hryhorovych Shevchenko (protected). UKRAINIAN POET.” (1998年7月20日). 2021年3月10日閲覧。
- ^ ウクライナ語に準ずる正しい表記はシェウチェンコだが、現時点では慣例的にシェフチェンコと表記されることがほとんどである。従来ロシア語文献・ロシア文学からの紹介が多かった名残。「ニューエクスプレス ウクライナ語」中澤英彦著(白水社, 2009)、「新興国ウクライナ」ウイルヘルム・キスキー著、世界思潮研究会訳(世界思潮研究会, 1921)では、タラス・シェウチェンコと紹介されている。また、藤井悦子は岩波文庫版『シェフチェンコ詩集』の「付記」にて「ウクライナ国内でも地域によって発音が異なること」も理由の一つに挙げている。
- ^ ユリウス暦では1814年2月25日。
- ^ 現在、ウクライナ、チェルカースィ州、ズヴェヌィーホロド地区モールィンツィ村
- ^ a b 藤井悦子「シェフチェンコの生涯」『詩集 コブザール』(群像社、2018年)p.304
- ^ a b c 藤井悦子「シェフチェンコの生涯」『詩集 コブザール』(群像社、2018年)p.305
固有名詞の分類
ウクライナの詩人 |
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ウクライナの作家 |
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