シラカンバ 花粉症

シラカンバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/27 05:46 UTC 版)

花粉症

風媒花であるため花粉症の原因にもなる。シラカンバが多く自生するスカンディナヴィア半島(スカンジナビア半島)では患者数も多い。札幌市の女性のうち8.9%が抗体を保有しているという報告もある。また、ブナ目の他の樹木の花粉との共通抗原性もあると考えられている[26]

シラカンバ花粉症は、口腔アレルギー症候群 (OAS) との関連もある。シラカンバ花粉症を持つ人のうち一定割合の人がリンゴモモなどバラ科の果物を食べた際に咽喉アレルギー症状を起こすことが知られている[27]

利用

植栽樹として、庭木や街路樹に植えられる[21]。痩せ地でも育ち、表層土壌が堆積すると他の樹種の影に埋もれていく性質を利用して、土壌条件が悪い新地に若木の苗を植えて、急速に生長させて早期緑化に用いることがある[19]

樹皮は細工物に使われたり[17]、油分を多く含んで容易に燃えるので松明としても使われたり[14]、水を通さず長持ちするので北ヨーロッパなどでは屋根葺きの材料に使われる[21]。中国大陸側では、ロール状に巻いた樹皮を浮子にして漁網につけられる[28]。長野県や岩手県の一部地域では、樺皮とよばれるロール状に巻いたシラカバの樹皮を、盆の迎え火、送り火に家の前で焚くのに使う[28]。アイヌ民族はシラカバ皮を巻き上げた松明をチノイエタッ(我らが巻いた樺皮)と呼び、先端を割った木に挟んで点火したものを夜間のサケ漁の照明、あるいはハレの日の照明に用いた。また、樹皮を焚いた煤は入れ墨を入れる際の染料にも用いられた[29][30]

材は比較的やわらかく、腐りやすい欠点をもつが、白い肌をそのまま活かして、山小屋の内外装、ベランダの手すり、デッキ、柵などに好まれる[21]。意外なところでは、アイスの棒(スプーン)や、割り箸楊枝といったものも製造されている。

春、芽吹く頃のシラカバの幹に傷を付けると、大量の樹液が吹き出す[22]アイヌ民族はこの樹液を「タッニ・ワッカ」(シラカバの水)と呼び、水場がない場所で野営する際の、炊事の水に用いてきた[30][29]。樹液からシロップ、煮詰めて白樺糖、さらには酒が造られる[22]。樹液に含まれる成分にヒト表皮保湿を促進する効用があることから化粧品にも利用される。

皇室では、平成時代の皇后美智子お印になっている。

文化

フィンランドでは 山火事などの後に、最初に生え、雑木林を育てていくことから「マザーツリー」と呼ばれ、樹液や樹皮のバッグなど広く親しまれているほか、若芽の小枝を束ねたヴィヒタはサウナにおいてなくてはならないとされている[要出典]ロウリュ参照。

ロシアでは、雪解けの頃近郊の森に出かけ樹液を飲む習慣がモスクワにも残っており、「百薬の長だと今でも信じている」と報道されている[誰によって?]民間療法で、シラカンバに寄生するチャーガ(和名:カバノアナタケ)というキノコ胃腸の調子が悪い時にお茶のようにして飲む風習がある。ソルジェニーツィンの『ガン病棟』ではガン民間薬として書かれている。

ヨーロッパでは、五月祭にシラカンバの葉や花で飾り付けたメイポール (Maypole) を広場に立て、その周りを踊りながら廻るという風習があった[要出典]

ルーン文字のひとつにこれをあらわすものがある[要出典]

シラカンバの花言葉は、「光と豊富」「柔和」「あなたを待ちます」などとされている[13]。盛大な結婚式のことを「華燭の典」というが、この華燭とはシラカバなどの樺の樹皮を松明にして明るくすることを指す言葉である[14]

国の木

  • フィンランドでは、国の自然を代表するシンボルとしてシラカンバがあげられており、事実上、国の木として扱われている[31]

  

都道府県・市町村の木に指定する自治体

日本において、高原を代表する樹木で、長野県の県木に指定されているほか、市町村の木に指定する地方自治体もある[17]


  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev シラカンバ(広義)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula pendula Roth var. japonica (Miq.) Rehder シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula mandshurica auct. non (Regel) Nakai シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula mandshurica (Regel) Nakai var. japonica (Miq.) Rehder シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula japonica (Miq.) Siebold ex H.J.P.Winkl. シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula tauschii (Regel) Koidz. シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. cuneifolia (Nakai) H.Hara シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  8. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. pluricostata (H.J.P.Winkl.) Tatew. シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  9. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. platyphylla コウアンシラカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  10. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. japonica (Miq.) H.Hara f. laciniata (Miyabe et Tatew.) H.Hara キレハシラカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  11. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. kamtschatica (Regel) H.Hara エゾノシラカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  12. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. mandshurica (Regel) H.Hara カラフトシラカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m n 田中潔 2011, p. 129.
  14. ^ a b c d e f g h i 辻井達一 1995, p. 85.
  15. ^ a b c d e f g h 西田尚道監修 志村隆・平野勝男編 2009, p. 159.
  16. ^ a b c d 亀田龍吉 2014, p. 96.
  17. ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 1997, p. 162.
  18. ^ a b c d e f g h i j k 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 130.
  19. ^ a b c d e f 辻井達一 1995, p. 87.
  20. ^ a b 長谷川哲雄 2014, p. 20.
  21. ^ a b c d e 辻井達一 1995, p. 86.
  22. ^ a b c d 辻井達一 1995, p. 88.
  23. ^ 長谷川哲雄 2014, pp. 20, 138.
  24. ^ a b 渡辺一夫 『イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか:樹木の個性と生き残り戦略』 築地書館 2009 ISBN 9784806713937 pp.174-179.
  25. ^ 長谷川哲雄 2014, p. 139.
  26. ^ アレルゲンを識る(間口四郎.石狩湾耳鼻科院長)
  27. ^ “体調不良は給食のリンゴ原因 美幌の小中学生、アレルギー反応”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年7月12日). http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/550707.html 
  28. ^ a b 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 131.
  29. ^ a b 角田陽一 2018, p. 116.
  30. ^ a b 更科源蔵 1977, p. 28-29.
  31. ^ フィンランドの概略(フィンランド大使館)






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