シラカンバ 名称

シラカンバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/27 05:46 UTC 版)

名称

和名のシラカンバは一般にシラカバともよばれ、樹皮が白いカバ(樺)がその名の由来である[15][16]。カバはカバノキの古名「かには」が転訛したものである[16]。和名はシラカンバやシラカバの他に、ガンビ[14]、シロザクラ[14]など多くの呼び名がある。中国名は、白樺[1]

分布

北半球の温帯から亜寒帯地方に多く見られる[14]。基変種であるコウアンシラカンバ Betula platyphylla var. platyphylla とそれにごく近縁にオウシュウシラカンバ Betula pendula は、アジア北東部の朝鮮半島[13]中国[13]東シベリア[13]樺太[13]・ヨーロッパの広い範囲に分布する。

日本では、変種Betula platyphylla var. japonica が、本州の福井県岐阜県以北の中部地方[17][14]関東地方北部[14]、東北地方[14]北海道[13]まで、高冷地の落葉広葉樹林帯と亜高山帯下部に分布する。特に北海道では多く見られる[16]。高原の深山などに生え[15]、日当たりのよい山地に群落を作って自生する[17]。近縁種にダケカンバがあるが、シラカンバは高山には及ばず比較的低地に分布し、ダケカンバは高地に分布する[13]

生態・形態

落葉高木広葉樹で、樹高は10 - 25メートル (m) [15][18]。明るい場所を好む典型的な陽樹である[19]。寿命は短く大木になるものは多くなく[20]、大きなものでも幹径は50センチメートル (cm) ほどである[21]。樹皮は白色で、横筋が多く薄紙のように横向きに剥がれ、枝の落ちた跡が黒く残る[17][18]。樹皮が白色を保っているのは、樹齢20年からせいぜい30年が限度といわれている[21]。ごく若い木の樹皮は暗褐色で、横長の皮目が目立つ[18]。若い枝は暗紫褐色で毛はなく、短枝がよく発達する[18]互生[13]、長さ4 - 9 cmの三角状広卵形で鋸歯がある[17][15]。葉脈の数は6 - 8対ある[22]葉柄は長さ1.5 - 3.5 cm[15]。秋になると黄葉する[16]

花期は春(4 - 5月)[13][18]雌雄同株で、葉の展開とともに、長さ5 - 7 cmほどの雄花序は、長枝の先から動物の尾状に数個垂れ下がる[17][15][20][18]。雌花序は短枝に4 cmほどの細長い棒状の花穂を1個つけ、最初は立ち上がっているが、やがて下を向いて果穂をつくる[17][23][18]

果期は10月[13]。果穂は長さ2 - 4 cmで垂れ下がる[15]。果苞は長さ約4ミリメートル (mm) [15]自家不和合性が強く、別の個体同士で受粉し種子を付ける。種子は3 mm程度の大きさで、風を利用して散布するのに適した薄い翼を持った形状。100グラム当たり34万個と大量に散布されるが、成木まで成長するのはごく一部である[24]

冬芽は互生し、雄花序以外は芽鱗に覆われて長楕円形[18]。芽鱗は、濃褐色で4 - 6枚つき、しばしば樹脂をかぶる[18]。雄花序の冬芽は円筒形の裸芽で、枝の先に数個つく[18]。冬芽のわきにある葉痕は半円形や三日月形で、維管束痕が3個ある[18]

他の樹木が育ちにくい火山灰地や砂地でも育つことができる[19]。明るい初期の林地に生えるいわゆるパイオニア的な樹種で[19][13]山火事の跡地や崩壊地などに一斉に芽生えて生長し、純林を作る[19][25]。不適地に散布された場合には地中で待機できる休眠性があり、山火事の熱を感知する事で休眠を解除して発芽する場合や、湿原が乾燥し陸地化した後に発芽する場合など、先駆種としての能力を持つ[24]。やがてシラカンバのまわりのミズナラやトドマツなどの陰樹が大きくなって、次第に日当たりが悪くなってくると、シラカバは次々に立ち枯れする[19][13]。シラカンバが立ち枯れしたあと、幹には木材腐朽菌の一種ツリガネタケなどのキノコがたくさん出てくる[13]。塩害や煙害には弱い性質があり、台風の影響を被って一斉に枯れてしまうこともある[22]


  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev シラカンバ(広義)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula pendula Roth var. japonica (Miq.) Rehder シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula mandshurica auct. non (Regel) Nakai シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula mandshurica (Regel) Nakai var. japonica (Miq.) Rehder シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  5. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula japonica (Miq.) Siebold ex H.J.P.Winkl. シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula tauschii (Regel) Koidz. シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  7. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. cuneifolia (Nakai) H.Hara シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  8. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. pluricostata (H.J.P.Winkl.) Tatew. シラカンバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  9. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. platyphylla コウアンシラカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  10. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. japonica (Miq.) H.Hara f. laciniata (Miyabe et Tatew.) H.Hara キレハシラカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  11. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. kamtschatica (Regel) H.Hara エゾノシラカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  12. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Betula platyphylla Sukaczev var. mandshurica (Regel) H.Hara カラフトシラカンバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年3月27日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m n 田中潔 2011, p. 129.
  14. ^ a b c d e f g h i 辻井達一 1995, p. 85.
  15. ^ a b c d e f g h 西田尚道監修 志村隆・平野勝男編 2009, p. 159.
  16. ^ a b c d 亀田龍吉 2014, p. 96.
  17. ^ a b c d e f g h 平野隆久監修 1997, p. 162.
  18. ^ a b c d e f g h i j k 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 130.
  19. ^ a b c d e f 辻井達一 1995, p. 87.
  20. ^ a b 長谷川哲雄 2014, p. 20.
  21. ^ a b c d e 辻井達一 1995, p. 86.
  22. ^ a b c d 辻井達一 1995, p. 88.
  23. ^ 長谷川哲雄 2014, pp. 20, 138.
  24. ^ a b 渡辺一夫 『イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか:樹木の個性と生き残り戦略』 築地書館 2009 ISBN 9784806713937 pp.174-179.
  25. ^ 長谷川哲雄 2014, p. 139.
  26. ^ アレルゲンを識る(間口四郎.石狩湾耳鼻科院長)
  27. ^ “体調不良は給食のリンゴ原因 美幌の小中学生、アレルギー反応”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年7月12日). http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/550707.html 
  28. ^ a b 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 131.
  29. ^ a b 角田陽一 2018, p. 116.
  30. ^ a b 更科源蔵 1977, p. 28-29.
  31. ^ フィンランドの概略(フィンランド大使館)






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