ガレージキット ガレージキットの位置づけと流通

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ガレージキット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/09 23:21 UTC 版)

ガレージキットの位置づけと流通

手作業の個人レベルで、原型を直接複製して生産されるため、モチーフに対する原型師の解釈や作家性が直接反映される点がガレージキットの魅力である。反面生産性が低く、マスプロ商品と比べると高価で販売数は少なく流通経路も限られている。

ある程度の数が生産・販売されるキットについては大型模型店などの流通ルートが徐々に整備されてきている。日本国外のメーカー製のレーシングカースーパーカーなど希少車のガレージキットが、日本国内でも比較的容易に入手できるようになってきた。

個人製作のキットについてはガレージキット展示即売会などで入手することができる。主な即売会としてはワンダーフェスティバル (主催: 海洋堂) ・キャラホビ C3×HOBBYスワップミートなどがある。

近年ではインターネットを利用した通信販売で、ガレージキットメーカーが直接販売に乗り出しているところもある。また、ガレージキットメーカーが、特定の小売店などに販売委託をし、それらの店を軸として通信販売や小規模卸などが行われている場合もある。

ガレージキットと版権

模型はもともと「何かを模したもの」であり、ガレージキットの原点は、商業上の理由で生産されないマイナーな作品の立体化や、あまりに似ていない玩具的な商品に対する不満などであった。そのため元イメージに近づけることは大前提であった。しかしガレージキットの出来が良ければ良いほど版権 (商品化の権利および販売専有の権利) 所有者の権利を脅かすことは明白で、ガレージキット黎明期からこの問題は付きまとった。1980年代のガンプラブーム以降、ガレージキットと版権 (著作権や著作隣接権) は、アニメーション作品や映画などに基づくキャラクターフィギュアのケースで顕著となった。

アニメのファンジン同人誌では絵が似ていない、ストーリーが違っている、などを理由に版権元は同人活動を半ば黙認、半ば無視していた。しかし方法論として似せることが大前提であるガレージキットでは版権元の許諾なしに販売活動を行なうことは難しかった。そのためボークス海洋堂など初期のガレージキットメーカーは版権の許諾されやすい特撮作品の立体化を行なっていた。東映円谷プロは小規模な企業にも版権を許諾したため、仮面ライダー怪人や円谷の怪獣などが許諾のもとで販売されていた。

しかし元々個人の趣味の範囲からスタートしたため、黎明期には既存のキャラクターをキット化したものであっても、版権元 (著作権、商品化権等の所有者) の許諾を得ないで流通しているキットもあった。1985年から始まったワンダーフェスティバルでは、そうした無版権のガレージキットときちんと契約をして販売されているガレージキットとの差異がますます浮き彫りとなった。 そういった状況の中、ワンダーフェスティバル を主催するゼネラルプロダクツは、「当日版権制度」というシステムを導入した。これはイベント主催者が個々の版権元と事前に交渉することで、そのイベント当日にイベント会場内だけに限定してキットの展示・販売に関する許諾を取りつけるというものであり、危ういバランスを保ちながらも多くの版権元からある種の一定の理解を得て継続されている。

1990年代以降、ワンダーフェスティバルを中心としたガレージキット展示即売会の規模は拡大の一途をたどっていった。また造形素材の進歩、パソコン通信の発達といったガレージキットをめぐる環境の変化から、版権元も版権ビジネスを意識し始めるようになる。1997年頃から始まった塗装済みフィギュアのブームと生産拠点の国外移転によるガレージキットの低価格化もあり、版権の許諾はアマチュアに厳しくなりつつある。また、急速なインターネットの普及にともなってネットオークションで販売される会場限定キットや日本国外で複製され販売される無版権ガレージキットの増加により無版権 (海賊版) キットに対する風当たりは強くなり、版権意識の向上を促すキャンペーンが模型誌上で展開されるようになった。供給側であるディーラーだけではなく、消費側であるユーザーにも海賊版は買わないように呼びかけられている。

なお、建築物自動車船舶鉄道車両航空機などについては、「玩具としての意匠権」などの登録がない限り、模型化は原則として自由である。

主要なガレージキットメーカーとブランド

主なメーカーとブランドを五十音順で記す。

青島文化教材社
日本国外の映画であるターミネーターロボコップ、日本のアニメであるスーパージェッターキャッツ・アイ、東宝特撮映画の怪獣等をレジンキャスト製フルキットの製造・販売を行っている。
安芸製作所
1/72スケールの航空機や戦車、1/700スケールの艦船などの極めて高品質なレジンキャスト製フルキットの製造・販売を行っている。
アトリエ彩
BJPM (ブロックジョイントプラスチックモデル) やデュエルメイドシリーズなどを販売している。ゲームの開発やCG 製作も行う。八王子に直営店を擁していたが2008年11月に閉店した。他の業務は引き続き継続する。
エアロベース
エッチング製組み立てキットの製造・販売を行う。
MYK DESIGN
ミニスケール用のニス部分の剥がせるデカール、「アシタのデカール」を販売している。本業は紙媒体広告やPC 向けコンテンツの製作であって、デカール製造はシルクスクリーン印刷の設備を有しているから進出したとしている。
海洋堂
ガレージキット黎明期から活動している老舗。1/35 スケールのレッド・ミラージュや1m 高のゴジラなどの大型商品を発売したり、ソフトビニールパトレイバーシリーズで『ガレージキット = 高価格』という常識を覆す廉価設定の商品展開を行っていた。近年はチョコエッグに代表される食玩リボルテックシリーズといったアクションフィギュアなどのマスプロ指向の製品が多い。ゼネラルプロダクツからワンダーフェスティバルの主催を引き継いでいる。
KitcheN
真鍮エッチングによるNゲージ鉄道模型の車両キットを、少量多品種にて生産している。鋳造・射出成型製品も扱う。
コトブキヤ (壽屋)
元々は個人経営の模型店であったが、日本におけるガレージキット創成期から各種のガレージキットを手がける。各種美少女キャラのフィギュアとゲームやアニメのロボットのフルキットを発売していた。現在はスーパーロボット大戦シリーズアーマード・コアシリーズゾイドシリーズなどのロボット/SF 兵器のインジェクションキットや、完成品の美少女フィギュアが商品の中心である。
StudioRECKLESS
プロモデラーである小松原博之率いるガレージキットディーラーで、イベントでの販売がメインである。小松原を始めとした造形チームの緻密かつ精度の高い造形で人気が高い。自社での販売はキャラホビなどでの当日版権物がメインではあるが、下記のB-CLUBからも販売されている。
ゼネラルプロダクツ
DAICON3のガレージキットの販売の成功で、日本発のSF専門店を開店させた会社。1992年2月に活動停止。
ダイナベクター
世界最高レベルのバキュームフォーム製航空機キットの製造・販売を行う。当初はイギリスで活動していたが、後に拠点を日本に移した。
ツクダホビー
株式会社ツクダの関連会社で、ゲームやプラモデルの販売を行っていたが、1980年代半ばにジャンボフィギュアと称するPVC製の組み立てキットを数十点発売した。その後もソフトビニールやメタルキャスト製のフィギュアや怪獣、メカなどのキットを出していたが、次第に完成品のフィギュアやドールが主力となり、2000年代初めに活動を停止した。
ディーステージ
通信販売と秋葉原で店舗を運営している、いわゆる同人ショップ。近年、東方Project関連のフィギュアガレージキットの販売を行っている。
D-tech
大阪のガレージキットディーラー。ゴジラなどの怪獣キットを主力とし、映画に忠実な精密造形から愛嬌たっぷりのデフォルメモデルまで、創作範囲は広い。個人やメーカー各社のキット複製なども手がけ、ガレージキットの一般普及について一翼を担う。
B-CLUB
バンダイのガレージキットブランドで、ガンダム関連のレジン製キットと、バリエーション展開を目的とした改造パーツ、美少女キャラクターのフィギュアがメイン商品である。唯一ガンダム関連の商品を販売している (C3での当日版権商品を除く) 。かつてはバンダイ出版課のブランドであったが、後にバンダイホビー事業部の一部となり、同事業部のプラモデルと連携した商品開発が行われている。
ビリケン商会
玩具に多用されていたソフトビニールを、ガレージキットの材質として初めて採用したメーカー。ハマハヤオの原型による怪獣や、日本国外のモンスターなどのキットを多数発売している。
ファインモールド
自社もしくは他社が発売するスケールモデルに対応したエッチングパーツや金属製ピトー管やアンテナなどを製造・販売している。また同社が開発するインジェクションキットは旧日本軍の航空機や戦車などのスケールモデルから、紅の豚スター・ウォーズ・シリーズスカイ・クロラに登場する架空の航空機まで多岐に渡る。
PLATZ
無発泡ウレタン樹脂製Nゲージ鉄道模型用アクセサリ類及び旅客機航空自衛隊が保有する軍用機のエッチングパーツ (一部は他の企業からのOEM ) とデカールを販売。
ボークス
海洋堂と並びガレージキット黎明期からメーカーとして活動を続ける老舗の一つ。モーターヘッドなどのロボットのフルキットや、各種美少女フィギュアを展開している。スーパードルフィーなどのドールにも注力しており、そちらでも有力ブランドになっている。同社製品の原型製作を担当する「造形村」という専属の原型師集団を擁している。
マックスファクトリー
プロモデラーのMAX渡辺率いるメーカー。初期はメカ物や『強殖装甲ガイバー』関連商品が中心だったが、現在は美少女キャラの塗装済み完成品フィギュアのトップメーカーとして活動している。
モデルカステン
大日本絵画が発行する月刊模型誌モデルグラフィックスのガレージキットブランド。プラスチック製連結式可動キャタピラなどの1/35 AFV 用のディテールアップパーツやMa.K の関連商品を扱う。
AIRES (アイリス)
チェコのメーカーで、軍用機とAFV 関連のレジンキャストエッチング製ディテールアップパーツを扱う。企業名を冠したレギュラーブランドと、梱包の簡素化や商品内容を見直した低価格ブランドのquickboost の二系統が有る。
CMK
チェコの模型メーカーMPM の子会社で、軍用車両の1/35 スケールレジン製キットと、軍用機とAFV 関連のレジン製ディテールアップパーツ全般を扱う。
Comet Miniatures
イギリスのガレージキットメーカー。ドクター・フーシリーズや、ジェリーシルヴィア・アンダーソン夫妻の作品を中心としたSF作品に登場するメカを、メタルキャスト、 レジンキャスト、バキュームフォームなどでモデル化している。
エデュアルド (Eduard)
チェコの模型メーカー。第一次、第二次両大戦期の航空機の射出成型キットを開発する一方で、他社のスケールモデルに対応するディテールアップパーツ全般を発売している。独自の商品としては、塗装済みエッチングパーツや必要とされる形状にカット済みのマスキングシートが存在する。軍用機のエッチングパーツやマスキングシートは、他の企業にOEM 供給されているアイテムも存在する。
Horizen
アメリカのガレージキットメーカー。ビリケン商会や海洋堂の製品に似た、モンスターやフィギュア、恐竜などのソフトビニール製キットを販売 していた。
バーリンデンプロダクツ (Verlinden Productions)
ベルギーのミリタリーモデラー、フランソワ=バーリンデンの立ち上げたミリタリーモデル専門ブランド。ミリタリーモデルのディテールアップパーツ全般と軍事物やヒストリカル (歴史物) フィギュアを開発、販売する老舗である。

上述のメーカーの他、フィギュア#メーカー・レーベルの項目に掲載されているメーカーの中にも、ガレージキットを取り扱っているものは多い。また、フィギュアと同様に、アマチュアメーカーや個人事業主のブランド、過去のものまで含めると、非常に数多く存在する。


  1. ^ YouTube - 特撮リボルテック:聖 咲奇氏 コメント その1 ワンダーフェスティバル2010[冬]の特撮リボルテックブースに、「ガレージキットの名付け親」こと聖 咲奇氏にご来場いただきました!
  2. ^ MFLOG創刊号 小田雅弘「ガレージキット誕生物語」
  3. ^ 「永遠なれ!巣鴨サーキット」 - くるま村の少年たち(くるま村工房)、2023年11月21日閲覧。
  4. ^ THE ORIGINAL MODELS PART2 modeling by hirofumi makino - くるま村の少年たち(くるま村工房)、2023年11月21日閲覧。
  5. ^ 『日本プラモデル50年史』 P254
  6. ^ オリジナルエッチングパーツ製作法『F式』
  7. ^ エッチングの基礎
  8. ^ 3D出力サービス


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