エヴェンキ語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/07 03:09 UTC 版)
エヴェンキ語 | |
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Эвэды̄ Evenki | |
話される国 |
中華人民共和国 ロシア モンゴル |
地域 | 中国内モンゴル自治区、黒龍江省、モンゴルセレンゲ県、ロシア クラスノヤルスク地方 |
民族 | エヴェンキ |
話者数 | 約29,000人 |
言語系統 | |
表記体系 | キリル文字、ラテン文字、(IPA)、モンゴル文字 |
少数言語として 承認 | サハ共和国 |
言語コード | |
ISO 639-1 |
-- |
ISO 639-2 |
-- |
ISO 639-3 |
evn |
消滅危険度評価 | |
Definitely endangered (Moseley 2010) |
1930年代以前は現在のエヴェン語と併せてツングース語と呼ばれていた。エヴェンキ(əwəŋkə)とは動詞「降る」əwə-の後に名詞から動詞を派生する接尾辞ŋkəがついたもので、「降りた者」を意味する。これは「高い山の森林から降りてきた人たち」「山林から平原へと降りてきた人たち」という意味である[2]。
エニセイ川以東でバイカル湖以北に居住する人々はエヴェンキ(Эвэнки)と自称する。バイカル湖以西の高地に住む人々はオロチョン(Эвэнки、意味は“オルホン川の人々”或いは“馴鹿の飼育を生業とする人々”)と自称する。ブリヤート共和国一帯に住む遊牧民は“ムルチェン”(Морчэн、意味は“馬上の人々”)と自称する。ビュリュイ川流域に住む人々は“ビラルチェン”(Бирарчэн、意味は“川の人”)と自称する。中国、ロシア国内のオロチョンの言語とエヴェンキ語の東部方言について類似がみられる。北京当局はオロチョン族はエヴェンキ族から独立した民族で、オロチョン語はエヴェンキ諸語の一つとし、ロシア当局は二つは同一民族、同一言語、オロチョン語はエヴェンキ語のオロチョン方言(Орочонский диалект)としている。
話者は中国内モンゴル自治区エヴェンキ族自治旗、フルンボイル市、黒龍江省訥河市、モンゴルセレンゲ県、ロシアクラスノヤルスク地方等に分布する。中国、モンゴル国内のエヴェンキ語は中国語、モンゴル語、満洲語よりの借用語が多い。清朝時代には清朝はソロン人(他にダウール族、ホジェン族も含む)の満州族化を企図したことがあった。現在のエヴェンキ族の言語においての漢族化の程度は他のいくつかの少数民族(ダウール族、満洲族、満洲のシベ族)と比べて相対的に低く、2000年時点では約3万人[注釈 1]のエヴェンキ族中で61.5%に当たる18,500人の人々がエヴェンキ語を使用している[3]。一方ロシア国内のエベンキ族の言語においてのロシア化は進んでおり、1992年の調査時では29,901人のエヴェンキ族中で約30%の人々のみがエヴェンキ語を使用し、多くの人々はロシア語しか話せない、或いはロシア語、ヤクート語の併用、ロシア語、ブリヤート語との併用で民族におけるエヴェンキ語の地位が低下している。ロシアのエヴェンキ語の主な借用語はロシア語、ヤクート語、ブリヤート語、エヴェン語で、僅かだがユカギール語、コリャーク語、チュクチ語からの借用語もある。
中国、モンゴルのエヴェンキ語はハイラル、旧バルガ、オルグの三方言に分ける分類[要出典]と、ホイ河方言(ソロン語、ソロンエウェンキ語)、メルゲル河方言(ツングースエウェンキ語)、オルグヤ河方言(ヤクートエウェンキ語)の三方言に分ける分類[4]があり、またエスノローグではホイ、ハイラル、オルグヤ、旧バルガ、メルゲルの五方言に分類している。このうちホイ方言の使用者数は2000年時点で中国エヴェンキ族全体の90%以上に当たる16,690人に上り[4]、中国におけるエヴェンキ語の標準とみなされている。
ロシアのエヴェンキ語は南部方言、東部方言、北部方言の三大方言に分かれ、約50種類の土語がある。その中でも南北の方言は似通っているが、東部方言と南北方言との差異は比較的大きい。ロシアにおけるエヴェンキ語の標準発音及び綴りは話者が多い南部方言が採用された。1930年から1952年にかけて南部方言のニエフスキー土語を標準発音に採用したが、1940年代にニエフスキーのエヴェンキ人の人口が急速に減少、エヴェンキ族の文化と言語の中心的地位を失った。1952年にサハリン州や沿海州の経済が急速に発展したのに伴い、東部のエヴェンキ人とその他のエヴェンキ人とが隔絶される状況となり、東部方言は南北の二方言との乖離が始まり、サハリン州北西土語が東部の標準的なエヴェンキ語となり、地区の小中学校での教育が展開された。
- ^ 津曲 2009, p. 2.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, p. 4.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, p. 10.
- ^ a b 朝克 & 中嶋 2005, p. 12.
- ^ Indiana University Department of Central Eurasian Studies
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, pp. 105–110.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, pp. 121–122.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, pp. 111–114.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, pp. 116–119.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, pp. 115–116.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, pp. 122–126.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, pp. 126–127.
- ^ 朝克 & 中嶋 2005, p. 131.
- 1 エヴェンキ語とは
- 2 エヴェンキ語の概要
- 3 音韻表
- 4 参考資料
- 5 外部リンク
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