ぐりとぐら
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/28 06:03 UTC 版)
出版
『母の友』1963年6月号に掲載した幼児向け読み物『たまご』を原型として[4]、同年12月1日[5]に『こどものとも』93号で『ぐりとぐら』の標題で発表した。既に『いやいやえん』で名声を確立していた中川・山脇姉妹による初めての絵本作品は評判になり、たちまちベストセラーとなった[6]。それ以来、世代を越えて世界各国で親しまれている。1967年の英語版が最初の翻訳本である。2001年までに英語、デンマーク語、エスペラント、中国語、朝鮮語、フランス語、タイ語、オランダ語、クメール語、スペイン語の10言語に翻訳された[7][8]。
第一作となる『ぐりとぐら』は、二匹が見つけた大きなたまごから、大きなかすてらを作るというストーリーである。しばしば「ぐり」と「ぐら」の作るカステラが、ホットケーキと誤解される[9]。第1作『ぐりとぐら』の執筆当時、中川李枝子が勤めていた保育園ではホットケーキが登場する『ちびくろ・さんぼ』が子供たちに人気だったことから、ホットケーキより美味しいものということでカステラを登場させた[10]。
シンプルな絵とストーリーが特徴であり、背景も細々したものは省かれている。これにより他に気をとられることなく「ぐり」と「ぐら」の行動に集中することができる。シンプルな作画はシリーズを通じて踏襲されている[11]。
2003年には、19年ぶりの本編第7作として『ぐりとぐらとすみれちゃん』が発表された。本作に登場する「すみれちゃん」は、脳腫瘍により4歳で亡くなった実在の女の子・福士すみれをモデルにしている。『朝日新聞』2000年4月19日付記事に、モデルとなった福士すみれの記事が掲載されている。
キャラクター
ぐり と ぐら
二匹の野ねずみ。青い帽子と服を着用しているのが「ぐりい」、赤い帽子と服を着用しているのが「ぐらあ」で、それ以外は外見上ほとんど見分けがつかない。第1作の『ぐりとぐら』に書かれているとおり、ぐりとぐらの好きなことは「おりょうりすること たべること」である。
「ぐりとぐら」という名前は、中川李枝子が勤めていた保育園で読まれていたピエール・プロブストの絵本シリーズ『カロリーヌ(Caroline)』の1冊である『Pouf et Noiraud campeurs』の登場人物の野ねずみが歌っていた「グリッグルッグラッ」に由来する[10]。なお『ぐりとぐら』の原型となった『たまご』では二匹の名前は「グリ」「グラ」と片仮名表記であった。
体色はオレンジ色であるが、これは国立科学博物館の今泉吉典の研究室にあったオレンジ色のネズミの標本がヒントになっている[12]。作者によれば二匹の年齢は、どちらも人間換算で保育園の年長クラスのつもりとのこと[13]。
その他のキャラクター
- おじいさん
- 『ぐりとぐらのおきゃくさま』に登場。本名不明。クリスマスにぐりとぐらの家を訪れ、ケーキをプレゼントした。作中では明示されないが、容姿から正体はサンタクロースであることが分かる[14]。
- くるりくら
- 『ぐりとぐらとくるりくら』に登場。某年4月1日、ぐりとぐらが偶然出合った、ときどき手が長くなるウサギ[15]。
- うみぼうず
- 『ぐりとぐらのかいすいよく』に登場。作中では伝承の海坊主とは異なり、スイムパンツとタンクトップを着用した人間の少年のような姿で描かれている。発光する真珠を光源とする灯台の灯台守をしている。執筆当時、中川李枝子が通っていたスイミングスクールのコーチがモデル[16]。
- すみれちゃん
- 『ぐりとぐらとすみれちゃん』に登場。「すみれはらっぱ」に住む(人間の)女の子。すみれちゃんのキャラクターは4歳で病死した同名の「すみれ」という少女にまつわる、ある幼稚園の先生とのやりとりを元にイメージを完成させて生まれた[16]。
本シリーズには、しばしば同じ作者の別シリーズの登場キャラクターが出演することがある[17](ただし明確に同一人物なのか、他人の空似なのか不明なものもある)。例えば第1作『ぐりとぐら』には、同じ作者の『いやいやえん』の登場キャラクターである「こぐちゃん(やまの こぐという名前の子熊)」と「おおかみ」が出演している[18]。また、本作の「ぐり」と「ぐら」も『なぞなぞえほん』『そらいろのたね』にゲスト出演している[19]。
唄
読者の間では『ぐりとぐら』に登場する「ぼくらのなまえは…(以下省略)」で始まる自己紹介の唄[20]が有名である。この詩には読者によって無数の曲がつけられており、各家庭や幼稚園・保育園などの間で歌い継がれている。作者自身は単に子供に分かりやすくための表現として詩という形式を選んだだけであり、普通に読んでも節をつけて歌ってもどちらでも構わないとのこと[21]。作者自身は、この詩に曲をつけて歌うことはしないという[21]。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』16頁、197-198頁。
- ^ 「絵本から始まる読書習慣」『読売新聞』2018年3月20日付朝刊。
- ^ a b c d e f g h 『MOE』2015年11月号、12-13頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』58-64頁。
- ^ この時点では、表記は「山脇」ではなく旧姓の「大村」であった。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』68-69頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』124-127頁。
- ^ “Guri Y Gura Aprenden a Nadar", Ediciones Ekare; 1 edition (June 2001)
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』20頁。
- ^ a b 『MOE』2013年4月号、8頁、14頁。
- ^ 石井 2004, pp. 177–178.
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』18-19頁、203-204頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』199-200頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』51頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』83頁。大本の出典は『こどものとも』373号(1987年4月号)折込付録「絵本のたのしみ」。
- ^ a b 『MOE』2013年4月号、17頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』50-53頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』233-236頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』50頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』では「ぐりとぐらの歌」というタイトルがつけられている。
- ^ a b 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』11頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』89頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』88頁。
- ^ 『ぼくらのなまえはぐりとぐら-絵本「ぐりとぐら」のすべて。』91頁。
- ^ 幻の『ぐりとぐら』映画版 監督は宮崎駿?、週刊朝日、2014年2月28日号。
- ^ 中川李枝子 × 宮崎駿、『ぐりとぐら』を語る。、Casa BRUTUS、2014年5月16日。
- ^ “特殊切手「季節のおもいでシリーズ 第4集」の発行”. 日本郵便株式会社. 2019年12月4日閲覧。
- ^ “絵本の世界シリーズ 第3集”. 日本郵便株式会社. 2019年12月4日閲覧。
- ^ “東海オンエア「ぐりとぐら」パロディー動画の削除騒動 版元が著作権侵害を申告...UUUMが謝罪していた”. J-CASTニュース (2022年6月28日). 2022年6月29日閲覧。
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