行列式とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 人文 > 高等数学 > 数学用語 > 行列式の意味・解説 

ぎょうれつ‐しき〔ギヤウレツ‐〕【行列式】

読み方:ぎょうれつしき

行列の要素が一定の規則で展開され、決まった値をもつもの。例えば、1行目の要素がa、bで、2行目の要素がc、dである2行2列の行列ではad-bcの値となる。


行列式

2次の正方行列[行列]において、[行列式]とおくとき、[行列式]を行列[A]の行列式という。

行列式[行列式]のとき、行列[A]は逆行列[A]をもつ。

参考

行列式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/10/03 01:29 UTC 版)

数学における行列式(ぎょうれつしき、英: determinant)とは、正方行列に対して定義される量で、歴史的には、連立一次方程式の解の存在や一意性を判定する指標として、また方程式からの変数消去(終結式)の計算の中で、行列そのものの導入に先立って現れたものである。成分が可換環の元である正方行列に対して定義され、幾何的には、有限次元の線型空間、またはより一般の有限生成自由加群上の自己準同型(線型変換)が、向きを込めた体積を何倍に拡大するかを表す量として解釈できる。行列式は、行列の可逆性(正則性)の判定に用いられるほか、固有多項式、ヤコビアン、クラメルの公式など、線型代数学や解析学の基本的な概念の多くと関わっている。正方行列 A の行列式は、det(A) あるいは |A| と表記される。

概要

X を実2次正方行列

この平行六面体の体積はベクトル r1, r2, r3 の成す 3 次正方行列の行列式の絶対値に一致する。

同様にして一般の次数の n 次正方行列 X に対し、X の定める線型変換が超立体(n 次図形)の超体積を何倍にしているかという符号付き拡大率を X の行列式として定義することができる。これは行列の成分を変数とする多項式の形で書け、二次の場合と同様にこれは正則性など正方行列の重要な性質に対する指標を与えている。一次方程式系が与えられるとき、方程式の係数行列に対してその行列式の値を調べることにより、方程式系の解の存在や一意性についての情報が得られる。特に、係数行列が正方行列で行列式が 0 でないとき、線型方程式系はただ一つの解を持ち、その解はクラメルの公式により行列式の比として表示される。

定義

行列式の定義には、いくつかの流儀がある。歴史的には、連立一次方程式の解の公式(クラメルの公式)の一部として現れた(後述)が、現代的には、置換を用いた明示的な定義(ライプニッツの公式)、または n-重線型交代形式による公理的な定義が一般的である。

複線型交代形式による特徴づけ

K を体(より一般には可換環)とし、

ベルヌーイ数や二項係数について書かれた関孝和による「括要算法」(1712年)

高階の行列式に相当する式は、17世紀後半に、ドイツのライプニッツと、日本の和算家の関孝和、田中由真らによって、互いに独立に与えられた。

関孝和ら和算家による発見

関孝和は『解伏題之法』(1683年)で行列式について述べている。本手稿のテーマは多変数の高次方程式から変数を消去して一変数の方程式に帰着することで、変数消去の一般的方法、つまり終結式の理論を提示している。本手稿では3次と4次に関しては終結式として正しい行列式の表示を与えている。5次については関の(「交式」と呼ばれる)算法を適用すると常に 0 になる表示が得られるが、これが単純な誤りなのか、あるいは終結式の計算手法上の意図的な結果なのかについては、数学史家の間でも見解が分かれている。また、次節で述べるように、関西で活躍していた田中由真や井関知辰らの研究も同様の問題を考えており、類似の結果にたどり着いている。

これらの研究では、いずれも行列式は終結式を表すための手段にすぎず、行列式そのものを意味のある対象として捉えていたかについては異論がある。実際、それをあらわす用語すら提案されていない。また、日本が鎖国によって外界から遮断されていたこともあり、西洋数学に影響を与えることはなかった。

ライプニッツによる行列式の発見

同じ時期にライプニッツは数多くの線型方程式系を研究していたが、その頃は行列記法がまだなかったので、彼は未知数の係数を、現在のような ai,j のかわりに ij のように添字の対によって表現していた。1678年に彼は3つの未知数に関する3つの方程式に興味を抱き、列に関する行列式の展開式を与えている。同じ年に彼は4次の行列式についても(符号の間違いを別にすれば)正しい式を与えている。ライプニッツはこの成果を生前に公刊しなかったため、後にマクローリンやクラメルらによって再発見されるまで、広く知られることはなかった。

一般的な行列式

『大成算経』は、関孝和の指導のもとで建部賢明、建部賢弘、建部賢雄の兄弟らが編纂した数学書(執筆は1683年〈天和3年〉 - 1710年〈宝永7年〉頃)であり、その中に、第一列についての余因子展開を一般の場合について正しく与えた記述がある。また、田中由真は『算学紛解』(1690年(元禄3年)ごろ)で 5次までの行列式を、井関知辰は『算法発揮』(1690年(元禄3年)刊)で第一行についての余因子展開を一般の場合で与えている。ちなみに関や田中の著作は写本のみであるが、井関の著作は出版がなされている。

ヨーロッパでは、連立一次方程式の解法と、代数方程式の変数消去の双方の研究の中で、行列式の理論が発展した。1748年にマクローリンの(死後に刊行された)代数学の著作において4つの未知数に関する4つの方程式の系の解が正しい形で述べられ、行列式の研究が再開されることになった。1750年にクラメルは(証明抜きで)n 個の変数に関する n 個の方程式からなる方程式の解を求める規則を定式化した。この規則では、行列式の各項の符号が順列の符号によって定まる。

ベズー(1764年)やファンデルモント(1771年、ヴァンデルモンドの行列式の計算)などがそれに続き、1772年にはラプラスによって余因子展開の公式が確立された。さらに翌年にはラグランジュによって行列式と体積との関係が発見されている。

今日の determinant(決定するもの)に当たる言葉が初めて現れたのはガウスによる1801年の Disquisitiones Arithmeticae である。そこで彼は二次形式の判別式(今日的な意味での行列式の特別な例と見なせる)を用いている。ガウスはさらに、行列式に相当するものと積の関係についても、ほぼ結論に近い結果を得ていた。

現代的な行列式の概念の確立

現代的な意味での行列式という用語はコーシーによって初めて導入された[1]。彼はそれまでに得られていた知識を統合し、1812年には積と行列式の関係を発表している(同じ年にビネも独立に証明をあたえていた)。コーシーは平行して準同型の簡約化についての基礎付けの研究も行っている。

1841年に「クレレ誌」で発表されたヤコビの3本の著作によって行列式の概念の重要性が確立された。ヤコビによって初めて行列式の計算の系統的なアルゴリズムが与えられ、またヤコビアンの概念によって写像の行列式も同様に考察できるようになった。行列の枠組みはケイリーとシルベスターによって導入された。ちなみにケイリーは逆行列の公式を確立させており、行列式の記号として縦棒を導入したのも彼である[1]。

行列式の理論は様々な対称性を持つような行列についての行列式の研究や、線型微分方程式系のロンスキー行列式など数学の様々な分野に新たに行列式を持ち込むことが追究されている。

行列式の計算例

2次対称群

サラスの方法

2 次あるいは 3 次の正方行列については、左上から右下へ向かう方向に「+」、右上から左下へ向かう方向に「−」の符号を付けて積を取りそれらの和を取ると行列式が求められる。これを「サラスの方法」または「サラス展開」、「たすきがけの法」と言う。n 次正方行列に対して、サラスの方法で取り出せる項の数は高々 2n であり、4次以上では行列式の総項数 n! に比べて少ないため、4次以上の正方行列に対してこの方法をそのまま適用しても行列式は得られない。

三角行列の行列式は、主対角成分の総乗をとることで求まる。三角行列の主対角成分には固有値が並ぶから、行列式の値は固有値の総乗である。このことは、基底の取替えによる行列の三角化可能性と行列式の乗法性によって、一般の正方行列に対しても正しい。つまり、与えられた行列の行列式の値は、その行列の固有値の総乗に等しい。

n が大きい場合、ライプニッツの公式や余因子展開を直接用いると、演算量が n! に比例して増加し実用的でない。実際の計算では、行に関する基本変形(掃き出し法)により行列を三角行列に変形し、主対角成分の積をとる方法が用いられる。行の入れ替えでは符号が反転し、ある行の定数倍を他の行に加えても値は変わらないことに注意すると、この方法の演算量は O(n3) である。

発展的な話題

小行列式

正方行列とは限らない一般の行列 A ≔ (aij) に対して、その行と列からそれぞれ k 個選び、それらに属する成分からなる正方行列の行列式を考えることができる:

脚注

  1. 1 2 黒木哲徳『なっとくする数学記号』講談社〈ブルーバックス〉、2021年、151-154頁。ISBN 9784065225509。
  2. ↑ 西田吾郎 2009, p. 65.
  3. ↑ 西田吾郎 2009, p. 66.
  4. ↑ 西田吾郎 2009, pp. 66–67.
  5. 1 2 西田吾郎 2009, p. 67.
  6. ↑ 西田吾郎 2009, pp. 64–65.
  7. ↑ 西田吾郎 2009, p. 63.

参考文献

関連文献

外部リンク


行列式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:54 UTC 版)

「日本の発明・発見の一覧」の記事における「行列式」の解説

日本では、高次代数方程式系における変数の消去を研究するために行列式が導入された。それらは終結式の係数の表現に利用された。独立関数としての行列式は 1683年に関孝和によって最初に研究された。

※この「行列式」の解説は、「日本の発明・発見の一覧」の解説の一部です。
「行列式」を含む「日本の発明・発見の一覧」の記事については、「日本の発明・発見の一覧」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「行列式」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ。

行列式

出典:『Wiktionary』 (2021/08/22 00:48 UTC 版)

名詞

  1. n-次正方行列に対して、 ∑ k = 1 n ! ( sgn ( σ k ) ∏ i = 1 n a i , σ k ( i ) ) {/displaystyle /sum _{k=1}^{n!}/left({/mbox{sgn}}(/sigma _{k})/prod _{i=1}^{n}a_{i,/sigma _{k}(i)}/right)} で計算されるスカラー。ここで、σk は n-次対称群の k 個目の元、sgn(σk) は σk の転倒数によって決まる符号、σk(i) は σk による i の像。 a i , σ k ( i ) {/displaystyle a_{i,/sigma _{k}(i)}} は対象の正方行列の i 行 σk(i) 列成分である。2つの縦ベクトルから成る正方行列の行列式は、それらの列ベクトルが成す平行四辺形の面積に相当する。

用法

  • 行列 A の行列式を |A| や det A と表す。

翻訳


「行列式」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



行列式と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳

英語⇒日本語日本語⇒英語

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「行列式」の関連用語

行列式のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



行列式のページの著作権

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
数理検定協会数理検定協会
Copyright©2026 数理検定協会 All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの行列式 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの日本の発明・発見の一覧 (改訂履歴)、Maple (改訂履歴)、行列 (改訂履歴)、行列の基本変形 (改訂履歴)、LU分解 (改訂履歴)、多重線型代数 (改訂履歴)、ペンローズのグラフ記法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Text is available under Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA) and/or GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblioに掲載されている「Wiktionary日本語版(日本語カテゴリ)」の記事は、Wiktionaryの行列式 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、Creative Commons Attribution-ShareAlike (CC-BY-SA)もしくはGNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2026 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2026 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2026 GRAS Group, Inc.RSS