舞踏・音楽
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トラジャ族の舞踏は、葬儀で披露されるものが特によく知られている。それは、悲しみや死者への尊敬心、そして死せる魂を待ち受けるあの世までの長い旅路を思い鼓舞する目的もあるとされる。舞踏は、初日に「マバドン」(Ma'badong)と呼ばれる儀式から始まる。黒装束の男たちが集団で円陣を形づくり、夜を通して死者を敬う単調なテンポの歌を捧げる。これは、葬儀における最も重要な要素だとされている。二日目は一転して賑やかな舞踏が展開される。「マランディン」(Ma'randing)と呼ばれる戦士が踊り、故人の勇猛さを賞賛する。戦士たちは手に剣を携えた者、水牛の皮で作られた大きな楯をかざした者、水牛の角を生やした兜をかぶった者など様々な武装で身を飾る。彼らは、死者が米倉から第二葬儀会場であるランデまで運ばれる列を先導しながら舞う。葬儀では男以外も舞踏を見せる。年長の女性たちは、長い羽根飾りをつけた衣装を着て詩情あふれる歌を口ずさみながら、「マカティア」(Ma'katia)と呼ばれる踊りで故人の寛大さを偲び、忠誠を思い起こさせる。水牛などを屠殺する儀式の後、少年少女たちは手を叩きながらマドンダン(Ma'dondan)と呼ばれる快活な踊りを披露する。 舞踏は農業生活においても見られ、特に収穫期に歌や踊りが披露される。「マブギ」(Ma'bugi)は感謝祭の踊りであり、「マガンダンギ」(Ma'gandangi)は米を脱穀する時に踊られる。また戦いの舞踏も、男性の踊る「マニンボン」(Manimbong)と女性の踊る「マダンダン」(Ma'dandan)がある。アルクの宗教舞踏もあり、「マブア」(Ma'bua)と呼ばれている。これは12年に1度催されるトラジャ族の主要な式典で舞われ、聖職者が水牛を模した被り物を着け、神木の周りで踊る。 トラジャ族の伝統的な楽器には「パスリン」(Pa'suling)と呼ばれる竹製の笛がある。この六つの穴を持つ笛はトラジャ独自のものではないが、多くの舞踏の場で演奏される。例えば感謝を表現する踊りのひとつ「マボンデンサン」(Ma'bondensan)では、上半身裸で指の爪を伸ばした男たちの舞に伴奏として用いられる。この他にもトラジャ族には先祖伝来の楽器があり、ヤシ科植物の葉から作られる「パペッレ」(Pa'pelle)、トラジャ版口琴とも言える「パカロンビ」(Pa'karombi)などがあり、収穫祭や新築落成式などで演奏される。
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