窒化鉄とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 窒化鉄の意味・解説 

ちっか‐てつ〔チツクワ‐〕【窒化鉄】

読み方:ちっかてつ

窒化物Fe4Nは室温強磁性を示す。また、Fe3Nは高硬度優れた耐摩耗性耐食性をもつため、フェライト鋼などの表面硬化用いられる


窒化鉄


窒化鉄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/13 03:00 UTC 版)

窒化鉄(ちっかてつ、: Iron nitride)は、窒化物。化学式はFe2N、Fe3N1+x、Fe4N、Fe7N3、Fe16N2などで表される。

天然には、ヴェスヴィオ山から発見され、2021年に再定義された窒鉄鉱ドイツ語版(Fe3N1.33)が産出する[1]

性質

強磁性窒化鉄は、現在最強の磁石とされるネオジム-鉄-ボロン磁石の性能を凌駕する可能性のある物質で、1972年東北大学の高橋實がその存在を提唱していたが、当時は薄膜としては得られたものの、粉末として抽出することはできなかった[2]。また飽和磁化などの実験データの再現性に乏しく、磁石性能を表わす重要な指標である結晶磁気異方性に関するデータが得られなかった[2]1989年に中谷功の研究グループによって開発された活性液面連続真空蒸着法を用いてナノ粒子が製造され[3]、粉末での一部生成確認がなされてはいるものの、強磁性窒化鉄の含有率(生成率)が低く不純物による影響もあり、再現性も含め期待されるような磁気特性は得られていなかった[2]

Fe16N2は飽和磁化が高く、最大エネルギー積が理論値で約1035kJ/m3(130MGOe)で強力な磁石になる可能性を秘めているが、保磁力に比例する異方性磁界が低く、Fe16N2の保磁力は理論値で796kA/m(10kOe)と低い。そのため、飽和磁化を多少落としてでも、Fe16N2の保磁力を高めるためにFeの一部をレアメタルではない何らかの金属元素で、さらにNの一部をホウ素酸素などの非金属元素で置換する方策が探索されている[4]

また、Fe16N2には、200℃で相分離してしまうという難点を抱えているので、焼結による成型が出来ず、結合材が必要になるため、磁粉の充填率が下がるボンド磁石としてしか使えない可能性がある[4]

磁石 残留磁束密度
Br (T)
保磁力
Hci (kA/m)
最大エネルギー積
(BH)max (kJ/m3)
キュリー温度
Tc (°C)
Nd2Fe14B (焼結) 1.0–1.4 750–2000 200–440 310–400
Nd2Fe14B (結合) 0.6–0.7 600–1200 60–100 310–400
SmCo5 (焼結) 0.8–1.1 600–2000 120–200 720
Sm2(Co,Fe,Cu,Zr)17 (焼結) 0.9–1.15 450–1300 150–240 800
アルニコ (焼結) 0.6–1.4 275 10–88 700–860
ストロンチウム-フェライト (焼結) 0.2–0.4 100–300 10–40 450
Fe16N2 (結合) -796 1000

用途

磁性流体磁気記録材料や電動機等で希土類磁石の代替として使用が期待される。窒化鉄磁性流体の磁化は2400ガウス(0.24テスラ)で現在でも世界最高性能であり、多方面への応用が模索される[3]

脚注

参考文献




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「窒化鉄」の関連用語

窒化鉄のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



窒化鉄のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
独立行政法人科学技術振興機構独立行政法人科学技術振興機構
All Rights Reserved, Copyright © Japan Science and Technology Agency
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの窒化鉄 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS