電荷移動遷移
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/09 08:13 UTC 版)
電荷移動遷移(でんかいどうせんい、英: Charge Transfer (CT) transition)は、原子間での電子の移動を伴う遷移過程である。錯体化学などで用いられることの多い概念である。
d金属錯体
d金属錯体は外部から光などのエネルギーを吸収し電子遷移を起こすが、これは大きくd-d遷移とCT遷移の2つに分類することができる。d-d遷移は錯体の中心金属のd軌道電子準位が配位子場によって分裂し、この準位間で遷移する過程であるのに対し、CT遷移は配位子から中心金属へ、あるいは中心金属から配位子へなど、異なる原子間での電子移動を伴う遷移過程をさす。
配位子から中心金属への電子移動をLMCT (Ligand to Metal Charge Transfer) 遷移、逆のことをMLCT (Metal to Ligand Charge Transfer) 遷移という。また、複数の金属原子を持つ多核錯体などでは、原子価間電荷移動 (Intervalence Charge Transfer, IVCT) 遷移が観測されることがある。
d-d遷移はd軌道内遷移であるため、ラポルテ禁制となり吸光度は低い。一方、CT遷移はラポルテ許容遷移のため、かなり吸光度は大きくなる。LMCT遷移は配位子が電子豊富なもの、すなわちベンゼン環など不飽和結合を有する化合物を含む場合に起きやすい。
LMCT
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/27 02:14 UTC 版)
LMCT錯体は配位子性の強い分子軌道から金属性の強い分子軌道への電荷の移動によって生じる錯体である。このタイプの遷移は錯体が比較的エネルギーの高い孤立電子対を持っていたり(SやSeなど)、金属に低位の空軌道があったりする場合に起きやすい。このような錯体の多くは金属の酸化数が高い(d0の場合も存在する)。これらの配位化合物は受容体が低エネルギーでも電子を受け入れられることを意味している。 IrBr63−(ロシア語版)などのようにd6電子を持つ正八面体型錯体はt2g軌道が埋まっている。結果として、吸収の極大は配位子のσ軌道から空のeg軌道に遷移するエネルギーに対応する250 nm付近の紫外線領域に生まれる。しかしd5電子を持つIrBr62−錯体は2つの吸収帯をもつ。一つは600 nmでもう一つは270 nmである。これは一つがt2g軌道(電子をもう一個入れることができる)でもう一つがeg軌道への吸収に対応している。600 nmの吸収帯はt2g軌道に、270 nmの吸収帯はeg軌道に対応する。 電荷移動吸収帯は非結合性軌道から配位子のeg軌道への吸収によって発生する場合もある。
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