Wntシグナリングと分解の調節
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 09:41 UTC 版)
「β-カテニン」の記事における「Wntシグナリングと分解の調節」の解説
休止状態にある細胞では、2つの結合作用面を持つC末端のDIXドメインによってアキシン分子はオリゴマー化している。アキシンはこのように細胞質の内側で線形のオリゴマー、さらにはポリマーを形成することが可能である。DIXドメインは独特であり、DIXドメインを持つことが知られている他のタンパク質はDishevelledとDIXDC1(英語版)だけである。Dishevelledタンパク質をコードする遺伝子はDrosophilaではDsh遺伝子ただ1つであるが、哺乳類には3つのパラログ遺伝子が存在し、ヒトではDVL1、DVL2、DVL3と呼ばれる。Dshは、PDZドメイン(英語版)とDEPドメイン(英語版)を介してFrizzled受容体の細胞質領域に結合する。Wnt分子がFrizzledに結合すると、あまり解明されていない一連の出来事が起こり、その結果DshのDIXドメインが露出して完全なアキシン結合部位が形成される。そしてアキシンはDshへ結合することでオリゴマー(β-カテニン分解複合体)から解離してゆく。アキシンは受容体と複合体を形成すると、β-カテニン結合やGSK3活性が失われる。重要なことに、Frizzledに結合しているLRP5(英語版)やLRP6(英語版)の細胞質側断片はGSK3の擬基質配列(Pro-Pro-Pro-Ser-Pro-x-Ser)を持っており、GSK3の本当の基質であるかのようにCK1によって適切なプライミングを受けている。これらの偽標的部位の存在によってGSK3の活性は大きく競合的に阻害される。そのため、受容体に結合したアキシンはβ-カテニンのリン酸化を媒介しなくなる。β-カテニンには分解の標識が付けられなくなるが、産生は継続しているためその濃度は増加する。β-カテニンのレベルが細胞質に存在するすべての結合部位に対し飽和するほど高くなると、β-カテニンは核へ移行する。β-カテニンはLEF1、TCF1(英語版)、TCF2(英語版)、TCF3(英語版)といった転写因子と結合し、それまでの結合パートナーであるGrouchoタンパク質からこれらの因子を解離させる。転写リプレッサー(ヒストンメチルトランスフェラーゼ(英語版)など)をリクルートするGrouchoと異なり、β-カテニンは転写アクチベーターと結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。
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