Ron Carterとは? わかりやすく解説

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ロン・カーター

(Ron Carter から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/10 08:10 UTC 版)

ロン・カーター
Ron Carter
ヨーロピアン・ジャズ・エキスポ(2007年)で演奏するロン・カーター
基本情報
出生名 Ronald Levin Carter
生誕 (1937-05-04) 1937年5月4日(88歳)
出身地 アメリカ合衆国 ミシガン州ファーンデール
ジャンル ジャズ
職業 ジャズ・ミュージシャン教育者
担当楽器 ダブルベースチェロ、ピッコロ・ベース、エレクトリックベース
活動期間 1960年 -
レーベル ブルーノートCTI、エンブリヨ、プレスティッジマイルストーン、サニーサイド
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ロン・カーターRon Carter1937年5月4日 - )は、アメリカ合衆国出身の黒人ジャズベース奏者、作曲家、元ニューヨーク市立大学シティカレッジ教授である。

長身であり、身長は193cm(6フィート3インチ)。

略歴

マイルス・デイヴィスは1964年7月に初来日した[1][2]。写真はカーターとデイヴィス。
左からハービー・ハンコックマイルス・デイヴィス、ロン・カーター、ウェイン・ショータートニー・ウィリアムス。1967年7月2日、ニューポート・ジャズ・フェスティバルにて。
ロン・カーター(2008年)

1937年アメリカ合衆国ミシガン州生まれ。1959年イーストマン音楽学校卒。1961年マンハッタン音楽学校修士課程修了。2004年バークリー音楽大学より名誉博士号を授与される。ニューヨーク市マンハッタン区ハーレムにあるニューヨーク市立大学シティカレッジ音楽学部にて、20年以上教壇に立つ。

バッハなどに傾倒し、初めはチェロを習い、後にコントラバスへと転向した。ロン・カーターは、弓を使用したベース演奏もできたため、クラシックのコントラバス奏者を目指して1日8時間に及ぶ猛練習をするも、人種差別の壁があり白人オーケストラへの入団は拒否された[3]。一方でジャズ・ベーシストとしての活動を開始し、1959年チコ・ハミルトンのグループでプロ・デビュー。また、ポール・チェンバースレイ・ブラウンサム・ジョーンズなどの名ベーシストとの交流の中で自己を確立し、キャノンボール・アダレイ[4]ボビー・ティモンズなどのグループに参加。その柔軟で奔放なプレー・スタイルが、モード・ジャズの表現を模索していたマイルス・デイヴィスの目にとまり、ポール・チェンバースに代わるベーシストとして抜擢される。他のメンバーが繰り出すサウンドに、絶妙な相性を見せたカーターは、1960年代のマイルス・ミュージックの屋台骨を支える役割を果たした。

ジャズ界の趨勢がモード・ジャズから、エレクトリック・ジャズ/ジャズ・ロックに移行しつつあった1960年代末、マイルスのグループを離れ[5]、以降、主に著名ミュージシャンのセッションのサイドマンとして無数のレコーディングに参加。1970年代には、1976年からのハービー・ハンコックフレディ・ハバードトニー・ウィリアムスらによるV.S.O.P.クインテット[6]や、ハンク・ジョーンズによるグレイト・ジャズ・トリオなどのバンドにも名を連ねている。

一方で、ピッコロ・ベースという新楽器を開発[7]し、ソロ楽器としてのベースの可能性を追求した。ピッコロ・ベースはコントラバスより小さくチェロより大きい楽器で、コントラバスの4本の弦のうちE弦(最低音の弦)を廃して、最高音であるG弦の上にさらに4度上のC弦を配したもの[8]であり、チェロ同様に椅子に座って演奏する[9]

以降、ベース、ピッコロ・ベースを持ち替えて多くのセッションをこなす。ピッコロ・ベースにおいては自己の9人編成コンボであるロン・カーター・ノネットの結成、そしてベースでもグレイト・ジャズ・トリオをはじめとするレギュラー・グループや、トミー・フラナガンローランド・ハナシダー・ウォルトンゴンサロ・ルバルカバハンク・ジョーンズジム・ホールハービー・ハンコックヒューバート・ロウズといった名手と競演を重ねる。また、アントニオ・カルロス・ジョビンのセッションにも参加したことから、ボサノヴァ音楽への傾倒と理解も厚い。

ロン・カーターのベースは、個性的な音色と音の運びに特徴がある。ややチューニングの不安定さがあるが、ロンの技巧ぶりがそれをカバーしている。音色については、時には彼だと判別可能な場合もあるが、これは、ラベラ社製のブラックナイロン弦[10]とバーカス・ベリー社のピックアップを使っている時代に印象づけられたものである。

マイルス・コンボ参加前の1960年代初期には、ジャッキー・バイアードのバックを勤めていた。日本でも人気のあるジャズ・ベーシストであり、来日回数も極めて多い。日本人ジャズメンとの競演も多く[11]、また、アメリカ人のみによるセッションでも、日本のレコード会社の企画で製作されることも多い。こういった、日本人による彼の芸術への理解度の高さもあってか、本人も親日家である。

2021年秋の叙勲にて、音楽文化発展の功により日本国政府より旭日小綬章が授けられることが決定した[12]

ディスコグラフィ

リーダー・アルバム

  • 『ホエア?』 - Where? (1961年、New Jazz)
  • 『アップタウン・カンヴァセイション』 - Uptown Conversation (1969年、Embryo)
  • 『アローン・トゥゲザー』 - Alone Together (1972年、Milestone) ※with ジム・ホール
  • 『ブルース・ファーム』 - Blues Farm (1973年、CTI)
  • 『オール・ブルース』 - All Blues (1973年、CTI)
  • 『スパニッシュ・ブルー』 - Spanish Blue (1974年、CTI)
  • 『エニシング・ゴーズ』 - Anything Goes (1975年、Kudu)
  • 『イエロー&グリーン』 - Yellow & Green (1976年、CTI)
  • 『パステルズ』 - Pastels (1976年、Milestone)
  • 『ピッコロ』 - Piccolo (1977年、Milestone)
  • 『サード・プレイン』 - Third Plane (1977年、Milestone)
  • 『ペッグ・レッグ』 - Peg Leg (1978年、Milestone)
  • 『ア・ソング・フォー・ユー』 - A Song for You (1978年、Milestone)
  • 『1+3』 - 1 + 3 (1978年、JVC)
  • 『パレード』 - Parade (1979年、Milestone)
  • 『ニューヨーク・スリック』 - New York Slick (1979年、Milestone)
  • 『ピック・エム』 - Pick 'Em (1980年、Milestone) ※1978年録音
  • 『パトロン』 - Patrão (1980年、Milestone)
  • 『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』 - Empire Jazz (1980年、RSO)
  • 『スーパー・ストリングス』 - Super Strings (1981年、Milestone)
  • 『ハート・アンド・ソウル』 - Heart & Soul (1981年、Timeless) ※with シダー・ウォルトン
  • 『パルフェ』 - Parfait (1982年、Milestone) ※1980年録音
  • 『エチューズ』 - Etudes (1982年、Elektra/Musician)
  • 『カルナヴァル』 - Carnaval (1983年、Galaxy) ※1978年録音 with ハンク・ジョーンズ渡辺貞夫トニー・ウィリアムス
  • 『ライヴ・アット・ヴィレッジ・ウエスト』 - Live at Village West (1984年、Concord Jazz) ※1982年録音 with ジム・ホール
  • 『テレフォン』 - Telephone (1984年、Concord Jazz) ※with ジム・ホール
  • 『ザ・マン・ウィズ・ザ・ベース』 - The Man With The Bass (1985年、Milestone)
  • 『パズル』 - The Puzzle (1986年、SMS)
  • 『ロン・カーター・プレイズ・バッハ』 - Plays Bach (1987年、Philips)
  • 『ヴェリー・ウェル』 - Very Well (1987年、Polydor)
  • 『プレゼンツ・ダド・モロニ』 - Ron Carter Presents Dado Moroni (1987年、EmArcy)
  • 『オール・アローン』 - All Alone (1988年、EmArcy)
  • 『アイム・ウォーキン』 - I'm Walkin' (1988年、EmArcy) ※with 金子晴美
  • 『マンハッタン・アフター・アワーズ』 - Duets (1989年、EmArcy) ※with ヘレン・メリル
  • Something in Common (1990年、Muse) ※with ヒューストン・パーソン
  • Now's the Time (1990年、Muse) ※with ヒューストン・パーソン
  • 『バードロジー』 - Birdology - Live At The TBB Jazz Festival (1989年、Verve)
  • 『エイト・プラス』 - Eight Plus (1990年、Victor)
  • Panamanhattan (1991年、Dreyfus Jazz) ※with リシャール・ガリアーノ
  • 『G線上のアリア〜ロン・カーター・ミーツ・バッハ』 - Ron Carter Meets Bach (1992年、Blue Note)
  • 『フレンズ〜永遠(とわ)の愛』 - Friends (1993年、Blue Note)
  • 『ジャズ、マイ・ロマンス』 - Jazz, My Romance (1994年、Blue Note)
  • 『ミスター・ボウタイ』 - Mr. Bow-tie (1995年、Blue Note)
  • 『ブランデンブルグ協奏曲』 - Brandenburg Concerto (1996年、Blue Note)
  • 『ベース・アンド・アイ』 - The Bass and I (1997年、Somethin' Else)
  • 『ソー・ホワット?』 - So What? (1998年、Somethin' Else)
  • 『ロマンティック〜ロン・カーター・ミーツ・クラシック』 - Romantic - Ron Carter Meets Classic (1998年、Somethin' Else)
  • 『オルフェ』 - Orfeu (1999年、Somethin' Else)
  • 『ホエン・スカイズ・アー・グレイ』 - When Skies Are Grey... (2000年、Somethin' Else)
  • Dialogues (2000年、HighNote) ※with ヒューストン・パーソン
  • 『ホリデイ・イン・リオ』 - Holiday In Rio (2001年、Somethin' Else)
  • 『スターダスト』 - Stardust (2001年、Somethin' Else)
  • 『4 ジェネレーション・オブ・マイルス』 - 4 Generations Of Miles (2002年、Chesky) ※with ジョージ・コールマンマイク・スターンジミー・コブ
  • 『ゴールデン・ストライカー』 - The Golden Striker (2002年、Somethin' Else)
  • 『イン・ニューヨーク』 - In New York (2004年、JXP) ※with ジョエール・シャヴィエール
  • 『トゥー・フォー・ザ・ミューズ』 - Two For The Muse (2006年、M&I) ※with 笹島明夫
  • 『ディア・マイルス』 - Dear Miles (2006年、Somethin' Else)
  • 『イッツ・ザ・タイム』 - It's The Time (2007年、Somethin' Else)
  • Just Between Friends (2008年、HighNote) ※2005年録音 with ヒューストン・パーソン
  • 『ジャズ&ボッサ』 - Jazz & Bossa (2008年、Blue Note)
  • 『ロン・カーターの世界』 - The World Of Ron Carter (2009年、Somethin' Else)
  • 『ロン・カーター・グレイト・ビッグ・バンド』 - Ron Carter's Great Big Band (2011年、Sunnyside)
  • 『コットンクラブでカクテルを』 - Cocktails At The Cotton Club (2013年、Somethin' Else)
  • 『ジム・ホールの想い出』 - In Memory Of Jim (2014年、Somethin' Else)
  • Chemistry (2016年、HighNote) ※1982年録音 with ヒューストン・パーソン
  • Brasil L.I.K.E. (2016年、Summit) ※with ヴィトーリア・マルドナード
  • An Evening with Ron Carter and Richard Galliano (2017年、In+Out) ※with リシャール・ガリアーノ
  • Remember Love (2018年、HighNote) ※with ヒューストン・パーソン

フィルモグラフィ

テレビ出演

脚注

  1. ^ 池上信次 (2021年8月10日). “「TOKYO1964」のジャズ・フェスティヴァル”. サライ. 2024年5月16日閲覧。
  2. ^ スイングジャーナル』1964年9月号、スイング・ジャーナル社、26-38頁。
  3. ^ http://www.musicianguide.com/biographies/ ロン・カーター・バイオ
  4. ^ 「マーシーマーシーマーシー」などのソウル・ジャズの曲も発表した
  5. ^ マイルスからエレクトリックベースを弾くことを要求されたからと言われているが、実際は家族と離れている時間が長くなり疲れを感じたことから自ら脱退を申し出たと本人は語っている。実際、ロンがエレクトリックベースを演奏している音源や映像も存在する。
  6. ^ [ https://www.allmusic.com/album/vsop-the-quintet-mw0000031137 V.S.O.P The Quintet] Allmusic 2023年6月30日閲覧
  7. ^ 最初のピッコロ・ベースはロンの注文により製作された新作楽器であったが、のちに小ぶりなフランス製のオールド楽器(コントラバス)を入手し、それ以降はそれをピッコロ・ベースとして使用している。
  8. ^ クラシックで言うところの、ハイソロ・チューニング。
  9. ^ これはロンがチェロを演奏した経験を持つ事と無関係ではないであろう。ロンは弓弾きの際も、コントラバス独特のジャーマン式ではなく、チェロと同様のフレンチ式で演奏する。フレンチ式では弓を順手で持つが、ジャーマン式では弓を逆手で持つのが大きな違い。
  10. ^ ラベラ社のブラックナイロン弦はロン・カーター自身開発にも関わっており、現在も使用している。
  11. ^ 阿川泰子のアルバムへの参加や、青梅市の宗建寺本堂で山口武、ルイス・ナッシュとのライブ、新潟市りゅーとぴあ史佳Fumiyoshiとのライブなど。
  12. ^ “秋の叙勲受章者”. デジタル毎日. 毎日新聞社. 3 November 2021. 2021年11月3日閲覧.
  13. ^ Herbie Hancock DVD | Herbie Hancock Concert Video”. View.com. 2016年6月4日閲覧。
  14. ^ Ron Carter DVD | Art Farmer DVD | Cedar Walton DVD | Billy Higgins DVD”. View.com. 2016年6月4日閲覧。
  15. ^ Ron Carter: Finding the Right Notes”. PBS.org. 2022年10月21日閲覧。

関連項目

外部リンク


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