αMインテグリンとは? わかりやすく解説

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αMインテグリン

(ITGAM から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/05 07:13 UTC 版)

ITGAM
PDBに登録されている構造
PDB オルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
PDBのIDコード一覧

1BHO, 1BHQ, 1IDN, 1IDO, 1JLM, 1M1U, 1MF7, 1N9Z, 1NA5, 2LKE, 2LKJ, 3Q3G, 3QA3, 4M76, 4XW2

識別子
記号 ITGAM, CD11B, CR3A, MAC-1, MAC1A, MO1A, SLEB6, integrin subunit alpha M
外部ID OMIM: 120980 MGI: 96607 HomoloGene: 526 GeneCards: ITGAM
遺伝子の位置 (ヒト)
染色体 16番染色体 (ヒト)[1]
バンド データ無し 開始点 31,259,967 bp[1]
終点 31,332,892 bp[1]
遺伝子の位置 (マウス)
染色体 7番染色体 (マウス)[2]
バンド データ無し 開始点 127,661,812 bp[2]
終点 127,717,663 bp[2]
RNA発現パターン
さらなる参照発現データ
遺伝子オントロジー
分子機能 • 金属イオン結合
• 血漿タンパク結合
• protein heterodimerization activity
• 熱ショックタンパク質結合
• アミロイドβ結合
• complement component C3b binding
• cargo receptor activity
細胞の構成要素 • エキソソーム
• 細胞膜
• cell surface
• 膜
• integral component of membrane
• integrin complex
• 細胞外空間
• specific granule membrane
• tertiary granule membrane
• external side of plasma membrane
• integrin alphaM-beta2 complex
• plasma membrane raft
• 脂質ラフト
生物学的プロセス • ectodermal cell differentiation
• toll-like receptor 4 signaling pathway
• integrin-mediated signaling pathway
• leukocyte migration
• extracellular matrix organization
• 細胞接着
• 好中球脱顆粒
• microglial cell activation
• 免疫系プロセス
• 受容体介在性エンドサイトーシス
• phagocytosis, engulfment
• サイトカイン媒介シグナル伝達経路
• positive regulation of superoxide anion generation
• positive regulation of neutrophil degranulation
• 自然免疫
• negative regulation of dopamine metabolic process
• positive regulation of protein targeting to membrane
• amyloid-beta clearance
• cell-cell adhesion via plasma-membrane adhesion molecules
• complement-mediated synapse pruning
• vertebrate eye-specific patterning
• positive regulation of neuron death
• positive regulation of microglial cell activation
• positive regulation of microglial cell mediated cytotoxicity
• cell surface receptor signaling pathway involved in cell-cell signaling
• positive regulation of prostaglandin-E synthase activity
• 前脳発生
• apoptotic signaling pathway
• positive regulation of hippocampal neuron apoptotic process
出典:Amigo / QuickGO
オルソログ
種 ヒト マウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_000632
NM_001145808

NM_001082960
NM_008401

RefSeq
(タンパク質)

NP_000623
NP_001139280

n/a

場所
(UCSC)
Chr 16: 31.26 – 31.33 Mb Chr 16: 127.66 – 127.72 Mb
PubMed検索 [3] [4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト 閲覧/編集 マウス

αMインテグリン(英: integrin alpha-M)は、β2インテグリンとともに、αMβ2インテグリン、またはMac-1(英語版)、CR3と呼ばれるヘテロ二量体型インテグリン分子を形成するタンパク質である[5]。αMインテグリンはCR3A、CD11bといった名称でも知られており、ヒトではITGAM遺伝子によってコードされている。ヘテロ二量体化パートナーであるβ2インテグリンはCD18としても知られ、αMβ2インテグリンはβ2インテグリンサブファミリーに属する[6]。

αMβ2は、単球、顆粒球、マクロファージ、NK細胞など自然免疫系に関与する多くの白血球の表面に発現しており[5]、またT細胞やB細胞の一部でも発現している[7]。αMβ2は白血球の接着と遊走を調節することで炎症を媒介し、食作用、細胞媒介性細胞傷害活性、走化性、細胞の活性化などいくつかの免疫過程への関与が示唆されている[5]。また不活化されたC3b(英語版)(iC3b)に結合する能力のため、補体系にも関与している[8]。αMサブユニットは細胞の接着や拡散に直接関与しているが、β2サブユニットが存在しなければ遊走を媒介することはできない[5]。

ゲノムワイド関連解析により、ITGAMの一塩基多型は全身性エリテマトーデスと最も強く関連していることが示されており、rs9888739のTアレルのオッズ比は1.65である[9][10]。

機能

αMインテグリン(CD11b)は白血球の表面に位置するインテグリン分子として、細胞遊走、接着、血管外遊出(英語版)に重要な役割を果たしている。CD11bは細胞外マトリックスの構成要素や内皮の表面に位置する細胞間接着分子(英語版)(ICAM)に結合する。この過程は炎症部位への白血球のリクルートに重要である[7]。CD11bは、白血球の他の機能(呼吸バースト(英語版)、アポトーシス、フィブリノゲンへの結合など)も調節している[11]。

さらに、CD11b、より正確にはMac-1が関与する他の重要な過程も存在する。その1つが、iC3bによってオプソニン化された粒子に対する食作用である。こうしたオプソニン化粒子は、細菌、アポトーシスを起こした細胞、さらに免疫複合体である場合もある。CD11bのiC3bへの結合は抗炎症性サイトカイン(IL-10やTGF-βなど)の産生をもたらす。この過程は炎症環境の調節に重要である[7][12]。

CD11bは骨のリモデリングを行う破骨細胞の分化にも関与している。Mac-1は破骨細胞前駆細胞に発現しており、破骨細胞形成のネガティブフィードバック機構の一部となっているようである[12]。

循環白血球では、CD11bは閉じたコンフォメーションで発現している。活性型コンフォメーションへの切り替えは、白血球のTLRの刺激後に迅速に引き起こされる[7]。CD11bは活性化されると、リガンド(内皮上のICAM-1やICAM-2など)への高親和性結合、そしてその後の接着が可能となる。また、CD11bシグナルは細胞内のTLRシグナルに干渉することも知られている。TLRの刺激は、シグナル伝達因子に対する一連のリン酸化を介して炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1βなど)の産生を引き起こす。こうしたリン酸化標的の1つがNF-κBである[13]。このシグナルはCD11bシグナルによる負の影響を受け、NF-κBの活性化は低下し、上述した炎症性サイトカインの産生が低下する。このようにCD11bはTLR刺激後の白血球の活性化を負に調節している[7][11]。TLRシグナル以外にも、CD11bはB細胞受容体シグナルを負に調節し、またT細胞の活性化や樹状細胞の成熟と機能を抑制する[7]。

臨床的意義

αMインテグリンの機能が免疫細胞の調節に重要な役割を果たしていることは明らかである。この調節が破綻すると、炎症性疾患や自己免疫疾患の感受性が高まる可能性がある。その例としては、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎(英語版)、特定種のがんが挙げられる。

全身性エリテマトーデス

ゲノムワイド関連解析により、ITGAMの3つの一塩基多型(SNP)がSLE、心血管疾患、ループス腎炎(通常はSLEに合併して生じる)発症のリスクと関連していることが明らかにされている。これらのSNPはrs1143679(R77H)、rs1143678(P1146S)、rs1143683(A858V)であり、ICAM-1やiC3bへ正しく結合する能力の低下、その結果として細胞接着や食作用の低下が引き起こされる。これらのSNPでは、TLR刺激後の炎症性サイトカインIL-6、IL-1β、そしてTNF-αの産生を負に調節する能力の低下も観察される[11]。

CD11bの抗炎症作用は、SLEやループス腎炎において保護的役割を果たしている。ループス腎炎は腎臓への免疫複合体の蓄積によって特徴づけられ、それによって腎損傷が引き起こされる。この身体の消耗をもたらすSLE合併症は、上述したSNPと関連している。これらのSNPを有する患者では血清中のI型インターフェロン濃度が高く、SLEとループス腎炎発症のリスク因子の1つとなっている。さらに、TLR刺激後の高濃度の他の炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1β、TNF-α)も、さらなる組織損傷と免疫複合体の形成を引き起こすことで、この疾患における炎症をさらに駆動することとなる[7][11]。

こうした理由によりCD11bはSLEの治療標的となる可能性があり、CD11bを標的化する試みは数多く行われている。まず、抗体を基盤とした治療法はCD11bの場合には有効ではないことが示された[14]。一方、CD11bに対する低分子アロステリックアゴニストを用いた治療法は有望であるようであり、これらによるCD11bの活性化によってTLR依存的炎症促進経路の調節や腎損傷からの保護がもたらされる[11]。

腫瘍

現在ではがん治療には多くのツールが存在するものの、この疾患の複数の要素についてはいまだ困難が残されている。骨髄由来免疫抑制細胞(英語版)(MDSC)や腫瘍関連マクロファージ(TAM)もその例であり、これらは腫瘍微小環境(英語版)に存在する免疫抑制作用を有する骨髄系細胞として腫瘍の成長に有利に働く。しかしながら、TAMは腫瘍促進作用を持つだけでなく、刺激によっては腫瘍抑制作用も示す場合がある。腫瘍抑制作用としては、炎症性サイトカインの産生や抗原提示能力が挙げられる[15]。CD11bを活性型コンフォメーションに安定化するアゴニストはCD11bの内皮リガンドへの接着を強め、したがって炎症部位への血管外遊出の能力が損なわれる。こうしたアゴニストによる治療法の開発が進行しており、有望な候補薬の1つであるGB1275は臨床試験が行われている。CD11bアゴニストによって抑制性TAMの腫瘍部位への血管外遊出は損なわれ、また抗原提示能力や炎症性サイトカイン産生能力が高い、炎症促進性表現型へのシフトが行われる。そのため、腫瘍抑制効果が期待される[15]。

出典

  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000169896 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000030786 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ a b c d “Distinct roles for the alpha and beta subunits in the functions of integrin alphaMbeta2”. The Journal of Biological Chemistry 280 (2): 1336–1345. (January 2005). doi:10.1074/jbc.M406968200. PMID 15485828. 
  6. ^ “Structure and function of leukocyte integrins”. Immunological Reviews 114: 181–217. (April 1990). doi:10.1111/j.1600-065X.1990.tb00565.x. PMID 2196220. 
  7. ^ a b c d e f g “CD11b Activity Modulates Pathogenesis of Lupus Nephritis”. Frontiers in Medicine 5: 52. (2018-03-15). doi:10.3389/fmed.2018.00052. PMC 5862812. PMID 29600248. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5862812/. 
  8. ^ “Inhibition of phagocytosis of complement C3- or immunoglobulin G-coated particles and of C3bi binding by monoclonal antibodies to a monocyte-granulocyte membrane glycoprotein (Mol)”. The Journal of Clinical Investigation 72 (1): 171–179. (July 1983). doi:10.1172/JCI110955. PMC 1129172. PMID 6874946. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1129172/. 
  9. ^ “Collaboration, genetic associations, and lupus erythematosus”. The New England Journal of Medicine 358 (9): 956–961. (February 2008). doi:10.1056/NEJMe0800096. PMID 18204099. 
  10. ^ “Association of systemic lupus erythematosus with C8orf13-BLK and ITGAM-ITGAX”. The New England Journal of Medicine 358 (9): 900–909. (February 2008). doi:10.1056/NEJMoa0707865. PMID 18204098. 
  11. ^ a b c d e “CD11b agonists offer a novel approach for treating lupus nephritis” (English). Translational Research 245: 41–54. (July 2022). doi:10.1016/j.trsl.2022.03.001. PMC 9167730. PMID 35288363. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9167730/. 
  12. ^ a b “β2 Integrins-Multi-Functional Leukocyte Receptors in Health and Disease”. International Journal of Molecular Sciences 21 (4): 1402. (February 2020). doi:10.3390/ijms21041402. PMC 7073085. PMID 32092981. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7073085/. 
  13. ^ “Toll-like Receptors and the Control of Immunity” (English). Cell 180 (6): 1044–1066. (March 2020). doi:10.1016/j.cell.2020.02.041. PMC 9358771. PMID 32164908. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9358771/. 
  14. ^ “Monoclonal Antibody to CD14, TLR4, or CD11b: Impact of Epitope and Isotype Specificity on ROS Generation by Human Granulocytes and Monocytes”. Oxidative Medicine and Cellular Longevity 2020: 5708692. (2020-11-21). doi:10.1155/2020/5708692. PMC 7700042. PMID 33294123. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7700042/. 
  15. ^ a b “GB1275, a first-in-class CD11b modulator: rationale for immunotherapeutic combinations in solid tumors”. Journal for Immunotherapy of Cancer 9 (8): e003005. (August 2021). doi:10.1136/jitc-2021-003005. PMC 8404448. PMID 34452928. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8404448/. 

関連文献

関連項目

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