データディスクマンとは? わかりやすく解説

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データディスクマン

(DATA_Discman から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/13 18:03 UTC 版)

データディスクマンDATA Discman)は、ソニーから発売されていた電子ブックプレーヤー[1][注釈 1]

8センチCD-ROMで提供される電子ブックを読み込んで、キーボードで文字を入力して検索機能を使い液晶画面に文字や画像を表示することができ、主に電子辞書として使用された[1][3][4]。音声も再生可能で語学学習などの用途にも利用された[3]

最初の機種「DD-1」は1990年7月に発売され、世界初の電子書籍専用端末ともいわれる[5]。なお「DD-1」は日本のみの販売で、アメリカではその後継機の「DD-1EX」が1991年12月に発売された[6]。ドイツでも発売され、1991年にベルテルスマンが電子ブックを製作し、ランゲンシャイト英語版が辞書を提供したが、1993年に生産を中止した[7]

日本ではその後多くの機種が発売されたが、2000年に発売された「DD-S35」を最後に生産を完了し、CD-ROMを使用しないICタイプの「DD-ICシリーズ」に移行したが、ICタイプも2006年までに生産を終了した[3]

電子ブックプレーヤーは松下電器産業三洋電機からも発売されていたが、ソニーよりも先に撤退した[1][8][9]

DD-1

DATA Discman DD-1
開発元 SONY
発売日 1990年7月 (1990-07)
標準価格 5万8000円
対応メディア 電子ブック
ディスプレイ 2.8インチモノクロ液晶
グラフィック モノクロ2階調
外部接続 イヤフォンジャック、ビデオ出力
電源 充電式バッテリーまたは乾電池(単3×6本)またはACアダプタ
サイズ 105.2(幅)×133(奥行き)×40.8(高さ)ミリ
重量 約550グラム(充電式バッテリーパック含まず)

DD-1は1990年7月にソニーが発売した電子ブックプレーヤー「DATA Discman」シリーズの第1号機である[5]。世界初の電子書籍専用端末とされるが、実質的には電子辞書として扱われることが多かった[5]

クラムシェル型[注釈 2]のボディを採用し、開いた状態では上部にモノクロ2階調の2.8インチ液晶画面、下部にはQWERTY配列のキーボードの操作パネル部を備える[5]。また正面手前には音楽再生関連のボタン、正面右側面にはビデオ出力端子、左側面には電源ジャック、画面のコントラスト調節用のダイヤル、イヤフォンジャックを備える[5]

電子ブックは操作パネル部を持ち上げて挿入し、専用のキャディを用いることで音楽用の8cmシングルCDも聴くことができた[注釈 3][5]。電子ブックのフォーマットはEBのみに対応[5]。付属の電子ブックには三省堂の『現代国語辞典』『ニューセンチュリー英和辞典』『新クラウン英和辞典』『コンサイス外来語辞典』『ワープロ漢字辞典』を収録している[5]

電源は充電式バッテリー、乾電池、ACアダプタ(DC9V)に対応。カーバッテリーコードもオプションで用意されていた[5]

DD-1以降の機種

1991年10月には「DD-1EX」、11月には「DD-10」が発売された[11]

1992年6月には電子手帳機能とゲームを追加したビジネスモデル「DD-10BZ」、9月には「DD-10EX」が発売された[11]

1993年2月には「DD-8」、10月には「DD-30DBZ」が発売された[11]

1994年2月には「DD-20」、電子ブックに「JTB海外旅行英会話PelaPela」を同梱した「DD-22 PelaPela」、9月には『広辞苑・逆引き広辞苑&研究社新英和・和英中辞典』を付属した「DD-25」が発売された[11]

1995年4月には「DD-55」、7月には「DD-66 ペラペラ・ザ・ワールド」が発売された[11]

1996年2月には「広辞苑+逆引き広辞苑+新英和・和英中辞典」に加え「平凡社マイペディア+学研漢字源」をセットにした「DD-25P」、3月には「DD-75」が発売された[11]

1996年3月に発売された「DD-2001」には小学館の『日本大百科全書』全26巻の本文文字情報、挿絵、音声を収録した電子ブックがバンドルされた[12]。10月に発売された「"リーダーズ、リーダーズ・プラス英和辞典&研究社新和英中辞典" DD-95」には研究社の『リーダーズ英和辞典』『リーダーズ・プラス』および『新和英中辞典第4版』を収録した電子ブックがバンドルされた[13]

1997年2月には「DD-300」が発売[14]。3月に発売された「“DATA&NEWS”DD-MR10」はFM文字放送ラジオを内蔵した[15]。4月に発売された「DD-CH10」は中国語文字(北京語)を表示できる仕様(EBXA-C)を新規作成し、小学館の「中日辞典」と「日中辞典」を統合した電子ブックをバンドルした[16]。10月に発売された「"ペラペラ・ザ・ワールド" DD-216」は4枚の電子ブックを同梱し、17カ国語に対応した日常会話の例文や単語の音声データが収録された[17]

1998年3月には「"学研辞書倶楽部" DD-250」が発売された[18]。6月には"広辞苑&英和・和英研究社中辞典"モデルの「DD-350」と"リーダーズ/リーダーズ・プラス英和&和英"モデルの「DD-RE10」が発売された[19]。1998年10月には「DD-150」が発売[20]

1999年3月に発売された「DD-S30」ではモノクロ16階調液晶を採用した[21]

2000年2月には初のカラー液晶採用機種「DD-S1000」が発売された[22][23][注釈 4]。カラー写真なども収録できる電子ブックの拡張仕様「S-EBXA」に対応し、小学館『日本大百科全書』をバンドルした[23]

2000年6月には「DD-S35」が発売された[25]

機種一覧

型番 発売年月 標準価格
DD-1 1990年7月 58000円
DD-1EX 1991年10月 58000円
DD-10 1991年11月 65000円
DD-10S
DD-10BZ 1992年6月 69000円
DD-10EX 1992年9月 60000円
DD-8 1993年2月 43800円
DD-30DBZ 1993年10月 69000円
DD-20 1994年2月 39800円
DD-22 1994年2月 39800円
DD-25 1994年9月 43800円
DD-55 1995年4月 35000円
DD-66 1995年7月 39800円
DD-25P 1996年2月 オープン
DD-75 1996年3月 42000円
DD-55P 1996年5月 オープン
DD-2001 1996年3月 80000円
DD-85 1996年6月 33000円
DD-95 1996年9月 42000円
DD-300 1997年2月 43800円
DD-75SP 1997年3月 39800円
DD-MR10 1997年3月 39800円
DD-CH10 1997年4月 42000円
DD-202 1997年6月 29800円
DD-216 1997年10月 36000円
DD-250 1998年3月 33000円
DD-350 1998年6月 43800円
DD-350SP
DD-RE10 1998年9月 43800円
DD-150 1998年10月 36000円
DD-S30 1999年3月 43800円
DD-S30SP
DD-170 1999年7月 オープン
DD-S1000 2000年2月 80000円
DD-S35 2000年6月 43800円
DD-S15 2000年10月 オープン
DD-S25 2000年10月 オープン

発売年月、価格の出典[3][11]。他に、電子ブックをPCやワープロで利用するための電子ブックドライブ「DD-DR1」も発売されていた(1991年12月発売、標準価格4万8000円)[3]

評価

世界初の電子書籍リーダーとして、「DD-1EX」がロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館のコレクションに収蔵されている[26]

脚注

注釈

  1. ^ 「ディスクマン (Discman」はソニー製のポータブルCDプレーヤーの名称であったが、1997年から「CDウォークマン」に変更された[2]
  2. ^ クラムシェルとは二枚貝の貝殻のことで、キーボードとディスプレイを開閉できる構造のものをいう[10]
  3. ^ 後年のモデルではスピーカーを備えるがこのモデルではイヤフォンジャックを使用。
  4. ^ 電子辞書としては2002年のシャープ「PW-C5000」が初のカラー液晶搭載機種とされる[24]

出典

  1. ^ a b c 電子ブック」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館https://kotobank.jp/word/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AFコトバンクより2025年4月10日閲覧 
  2. ^ 君国泰将 (2022年8月29日). “光からの使者「コンパクトディスク」の登場は音楽市場を大きく変えた”. ASCII.jp. 2025年4月14日閲覧。
  3. ^ a b c d e 山口真弘 (2012年2月25日). “DATA Discman――ソニー:電子書籍端末ショーケース”. ITmedia eBook USER. 2025年4月10日閲覧。
  4. ^ 長谷川秀記, 「日本の電子出版30年の軌跡:電子辞書・電子書籍の黎明期から現在まで」『情報管理』 2016年 59巻 9号 p.587-598, 公doi:10.1241/johokanri.59.587, NAID 110002828684
  5. ^ a b c d e f g h i 山口真弘 (2012年7月19日). “DD-1――ソニー:電子書籍端末ショーケース”. ITmedia eBook USER. 2025年4月10日閲覧。
  6. ^ Sony Data Discman : la première liseuse” (フランス語). Liseuses.net (2021年2月23日). 2025年4月10日閲覧。
  7. ^ Vom Data Discman zum multimedialen Digitalbuch – eine Geschichte des E-Books” (ドイツ語). buchreport (2017年5月24日). 2025年4月10日閲覧。
  8. ^ 山口真弘 (2012年3月28日). “DATAPRESS――パナソニック:電子書籍端末ショーケース”. ITmedia eBook USER. 2025年4月10日閲覧。
  9. ^ 長谷川秀記. “電子ブックと電子ブックコミティーの思い出”. 日本電子出版協会. 2025年4月10日閲覧。
  10. ^ clam-shellの意味・使い方”. 英辞郎 on the WEB. 2025年4月10日閲覧。
  11. ^ a b c d e f g 電子ブック全情報”. Digital ASSIST. 2025年4月10日閲覧。
  12. ^ 百科事典が手のひらに載った! 電子ブックプレーヤー"日本大百科全書"発売”. ソニー (1996年1月29日). 2025年4月10日閲覧。
  13. ^ リーダーズ英和辞典、リーダーズ・プラス、 研究社新和英中辞典の計52万語の英和/和英語彙を8cmCD-ROMに収録した電子ブックプレーヤー『DD-95』発売”. ソニー (1996年9月6日). 2025年4月10日閲覧。
  14. ^ 明るく、見やすい4.4型バックライト付き液晶ディスプレイ搭載、"広辞苑&英和・和英"電子ブックプレーヤー 『DD-300』 発売”. ソニー (1997年1月13日). 2025年4月10日閲覧。
  15. ^ FM文字放送ラジオ内蔵電子ブックプレーヤー『DD-MR10』 発売”. ソニー (1997年2月12日). 2025年4月10日閲覧。
  16. ^ 中日・日中辞典に1万5千語の発音データを加え、8cm CD-ROMに収録した電子ブックプレーヤー『DD-CH10』発売”. ソニー (1997年3月11日). 2025年4月10日閲覧。
  17. ^ 携帯性・娯楽性を向上 欧・米・アジア17カ国語に対応した電子ブックプレーヤー"ペラペラ・ザ・ワールド"発売”. ソニー (1997年8月25日). 2025年4月10日閲覧。
  18. ^ 英和・和英・国語・漢和・古語辞典の全5巻の辞書を収録 幅広い用途で活用できる電子ブックプレーヤー"学研辞書倶楽部"『DD-250』発売”. ソニー (1998年1月22日). 2025年4月10日閲覧。
  19. ^ 携帯型電子辞書として最大の120×60mmワイドディスプレイ採用 従来機に比べ約1.5倍の250文字を表示できる電子ブックプレーヤー2機種 発売”. ソニー (1998年5月12日). 2024年10月12日閲覧。
  20. ^ 厚さ28.5mm、質量約300g※1の薄型・軽量を実現した電子ブックプレーヤー"ジーニアス英和・和英"『DD-150』 発売”. ソニー (1998年9月4日). 2024年10月12日閲覧。
  21. ^ 最新版の広辞苑第五版、研究社新英和・新和英中辞典を収録 16階調液晶画面を採用し、写真などの画像データも見やすくなった電子ブックプレーヤー『DD-S30』 発売”. ソニー (1999年2月4日). 2025年4月10日閲覧。
  22. ^ 湯野康隆 (1999年12月21日). “ソニー、カラー液晶搭載のデータディスクマン”. モバイルセントラル. 2025年4月10日閲覧。
  23. ^ a b 初のワイドカラー液晶ディスプレイ搭載 小学館「日本大百科全書」全26巻を1枚の電子ブックに収録した“データディスクマン”『DD-S1000』 発売”. ソニー (1999年12月21日). 2025年4月10日閲覧。
  24. ^ 工藤ひろえ (2002年6月4日). “シャープ、電子辞書で初めてカラー液晶を搭載した「PW-C5000」”. ケータイWatch. 2025年4月10日閲覧。
  25. ^ 広辞苑・リーダーズなどの多彩なコンテンツを収録した“データディスクマン”及び英和・和英・国語・漢字辞書を収録した名刺ケースサイズの“IC電子辞書”など小型ボディで大容量のデータ検索が簡単にできる 電子辞書3モデル 発売”. ソニー (2000年4月19日). 2025年4月10日閲覧。
  26. ^ Sony DD-1EX Electronic Book Player” (英語). Victoria and Albert Museum (2015年11月26日). 2025年4月10日閲覧。

関連文献

  • 電子ブック倶楽部 編『電子ブックで遊ぶ本』メディアパル、1991年、ISBN 4896100050
  • 電子ブック倶楽部 編『電子ブック活用術 新世代のパーソナル情報ツール』メディアパル、1992年、ISBN 4896100123
  • 電子ブック倶楽部 編『使える!電子ブック 100%活用ガイド』メディアパル、1998年、ISBN 4896100433

関連項目

外部リンク




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