腹大動脈
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/23 09:34 UTC 版)
| 動脈: 腹大動脈 | |
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腹大動脈とその枝。
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| 英語 | Abdominal aorta |
| ラテン語 | aorta abdominalis, pars abdominalis aortae |
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起始
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胸大動脈
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分岐
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静脈
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腹大動脈(ふくだいどうみゃく、英語: abdominal aorta)[1]または腹部大動脈(ふくぶだいどうみゃく)[2]は腹腔で最も大きい動脈である。下行大動脈の一部であり、胸部の胸大動脈の続きである[3][4]。
構造
腹大動脈は横隔膜の高さ(脊椎の高さでいう胸椎T12)から、横隔膜の背側に空いている大動脈裂孔という隙間を通って始まる[3][4]。そのまま腹部の脊柱の前にあたる後腹壁を下行していく[5]。腰椎は前弯という弯曲した構造であるため、腹大動脈も前に凸となっている[5]。この突出した構造がピークとなるのはL3の辺りである[5]。腹大動脈の右隣には下大静脈が並んで走行している[6]。腹大動脈は分枝するにしたがって直径が小さくなっていくが、これは主な分枝する動脈の直径も比較的大きいためと考えられる[5]。ヒトの腹大動脈の直径は腎臓より下の領域において平均で約2.0 cmで、3.0 cmが正常上限であるとされる[7]。
分枝
腹大動脈は腹腔の大動脈に血管を分布し、栄養する。腹大動脈がT12から始まって総腸骨動脈分岐部のL4あたりで終わるまでに以下のような枝を主に分枝する[3]。
| 動脈 | 領域[8] | 対[8] | 方向[8] | 説明 |
|---|---|---|---|---|
| 下横隔動脈 | 壁側 | 有対 | 後側 | 腹腔動脈より上で横隔膜より上の部分で分枝する[注釈 1][9]。副腎の上内側を上外側へ向かって走行し、横隔膜の左脚・右脚を越える[9]。横隔膜に分布するほか、上副腎動脈を分枝して副腎にも分布する[9]。 |
| 腹腔動脈 | 臓側 | 無対 | 前 | 腹腔上部に分枝する動脈の根元である[6]。数多くの枝が分枝するため、詳細は当該項目を参照。 |
| 上腸間膜動脈 | 臓側 | 無対 | 前 | 小腸や口側の結腸に分枝する大きい動脈である[10]。数多くの枝が分枝するため、詳細は当該項目を参照。 |
| 中副腎動脈 | 臓側 | 有対 | 側 | 横隔膜の左脚・右脚を越えて副腎に到達し、副腎を栄養する[11]。 |
| 腎動脈 | 臓側 | 有対 | 側 | 上腸間膜動脈のすぐ下で起こる[11]。右腎動脈は下大静脈の背側を走行し、左腎動脈は左腎静脈の背側を走行する[11]。左右とも腎門で4-5程度の枝に分かれる[11]。腎動脈からは副腎へ行く下副腎動脈や尿管へ行く腎動脈尿管枝などが分枝する[11]。 |
| 精巣動脈・卵巣動脈 | 臓側 | 有対 | 側 | 腎動脈よりも下で分枝してから下行し、男性では精巣、女性では卵巣に到達する[12]。 |
| 腰動脈 | 壁側 | 有対 | 後側 | 左右それぞれに4対あり、腹壁や脊髄を栄養する[9]。5対目の枝が存在することがあり、この場合は正中仙骨動脈から分枝する[9]。腰動脈は椎体の側面で横隔膜左脚・右脚の深層を通過してから大腰筋・腰方形筋の深層を走行して内腹斜筋と腹横筋の間の隙間へ入り込む[9]。各腰動脈は小さい背側枝を分枝し、脊柱管への脊髄枝を分枝しながら背筋の栄養も担う[9]。 |
| 下腸間膜動脈 | 臓側 | 無対 | 前 | 肛門側の結腸に分枝する大きい動脈である[13]。数多くの枝が分枝するため、詳細は当該項目を参照。 |
| 正中仙骨動脈 | 壁側 | 無対 | 後側 | 大動脈が総腸骨動脈に分岐する部分で正中から起こる[14]。発生学的には背側大動脈の続きの部分であり、尾を持つ動物では大きいもののヒトにおいては小さくなっている[15]。 |
| 総腸骨動脈 | 終枝 | 有対 | 側 | 下肢と骨盤を栄養する動脈であり、腹大動脈が終わって分岐した先である[16]。L4下縁あたりで腹大動脈から左右に分岐する[1]。 |
以下に腹大動脈の分枝をまとめた[17]。()の中は一般的な枝の数である。
- 下横隔動脈
- 腹腔動脈
- 上腸間膜動脈
- 下膵十二指腸動脈
- 空腸動脈
- 回腸動脈(空腸動脈と合わせて12-15ほど)
- 中結腸動脈
- 右結腸動脈
- 回結腸動脈
- 前盲腸動脈
- 後盲腸動脈
- 虫垂動脈
- 回腸枝
- 結腸枝
- 中副腎動脈
- 腎動脈
- 精巣動脈または卵巣動脈
- 腰動脈(4)
- 下腸間膜動脈
- 左結腸動脈
- S状結腸動脈(2-3)
- 上直腸動脈
- 正中仙骨動脈
- 総腸骨動脈
- 外腸骨動脈
- 内腸骨動脈
他の構造との関係
腹大動脈は身体の正中からわずかに左にずれている[1]。前側は小網や胃が存在しており、その後ろに腹腔動脈や腹腔神経叢の枝がある[6]。この部位より下で腹大動脈の前を通るものとしては脾静脈、膵臓、左腎静脈、十二指腸水平部、腸間膜、腹大動脈神経叢などがある[6]。
右側は上部では奇静脈や乳ビ槽、胸管、横隔膜右脚、下大静脈、右腹腔神経節などが存在する[6]。下大静脈は下部でも右に存在する[6]。
左側は横隔膜の左脚、左腹腔神経節、十二指腸上行部などが存在する[6]。
下大静脈との関係
腹大動脈の対応する静脈は下大静脈であり、右隣に並んで下行する[18]。下大静脈が二分するのはL5の高さ程度であり、総腸骨動脈分岐部よりも下である[19]。
側副血行路
腹大動脈は胸部から下肢へと栄養を送るための中間的な位置であるが、血栓や外科的な結紮により腹大動脈の一部が通れなくなると側副血行路を経由して胸部から下肢へと血流が届きうる。側副血行路の例として内胸動脈を通ってその終枝が吻合している下腹壁動脈へ行くルートがある[6]。上腸間膜動脈と下腸間膜動脈はその各枝が吻合を形成しうるため、上・下腸間膜動脈の分岐部の間で詰まった場合はその吻合からも届きうる[6]。下腸間膜動脈よりも下で詰まった場合は下腸間膜動脈と内陰部動脈の吻合が側副血行路となりうる[6]。他に腰動脈と内腸骨動脈の枝でも側副血行路が形成されうる[6]。
臨床的重要性
動脈瘤
ギャラリー
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腹大動脈の造影 MRA画像。
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腹腔動脈およびその枝。胃は上に翻転し、腹膜や腸間膜、大網を取り除いた図である。
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L1の中ほどの高さにおける横断面。膵臓(PANCREAS)と腹大動脈(Abdominal aorta)の関係が分かる。
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肝臓と腎臓を表したCT画像。
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4.8cm×3.8cmにまで膨れ上がった腹部大動脈瘤の造影CT横断像。
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腹大動脈腎下部の解剖像。
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腹大動脈の長軸方向が明瞭な腹部エコー像。
脚注
注釈
出典
この記事にはパブリックドメインであるグレイ解剖学第20版(1918年)602ページ本文が含まれています。
- ^ a b c 坂井 2017, p. 146.
- ^ “ふ (ページ5 / 14)”. 循環器学用語集 -第4版-. 日本循環器学会. 2026年1月31日閲覧。
- ^ a b c “Abdominal aortic emergencies”. Emergency Medicine Clinics of North America 35 (4): 847–867. (November 2017). doi:10.1016/j.emc.2017.07.003. PMID 28987432.
- ^ a b 坂井 2017, p. 93.
- ^ a b c d Gray 1918, p. 602.
- ^ a b c d e f g h i j k l m Gray 1918, p. 603.
- ^ “Clinical features and diagnosis of abdominal aortic aneurysm”. UpToDate (2024年7月19日). 2026年1月30日閲覧。
- ^ a b c 坂井 2017, p. 146-148.
- ^ a b c d e f g Gray 1918, p. 612.
- ^ Gray 1918, pp. 606–607.
- ^ a b c d e Gray 1918, p. 610.
- ^ Gray 1918, p. 611.
- ^ Gray 1918, p. 609.
- ^ 坂井 2017, p. 195.
- ^ “Cardiovascular System Median Sacral Artery”. Complete Anatomy. ELSEVIER. 2026年1月31日閲覧。
- ^ Gray 1918, p. 613.
- ^ Gray 1918, p. 603-614.
- ^ Gray 1918, p. 678.
- ^ Gray 1918, p. 677.
- ^ Bedside ultrasonography evaluation of abdominal aortic aneurysm—technique. (28 August 2017).
参考文献
- 坂井建雄『標準解剖学』(第1版)医学書院、2017年3月。 ISBN 978-4-260-02473-0。
- Henry Gray (1918), Warrens H. Lewis, ed., Anatomy of the Human Body (twentieth edition ed.)
関連項目
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